
監修者富士在宅診療所 一般内科
一般的な成人の場合、タンパク質は体重1kgあたり約0.8〜1.0g/日、ビタミンB1は1.1〜1.2mg/日が目安とされていますが、夏場は消費が増えるため意識的に摂ることが推奨されます。
タンパク質が夏バテ予防に重要な理由|筋肉・免疫・エネルギーの源
タンパク質は筋肉・臓器・免疫細胞など、体のあらゆる組織の材料となる栄養素です。夏場に食欲が落ちて、そうめんやアイスなど炭水化物中心の食事になると、タンパク質の摂取量が不足しやすくなります。タンパク質が不足すると、筋力の低下や免疫機能の低下、そして疲労感の増大につながる可能性があります[Nutrients. 2020;12(2):444.]。
一般的に成人のタンパク質の推奨摂取量は体重1kgあたり約0.8g/日とされています。体重60kgの方であれば約48gが目安です。ただし、活動量が多い方や高齢者では1.0〜1.2g/kg/日が推奨される場合もあります。夏場は食事量が減りやすいため、意識的にタンパク質を含む食品を選ぶことが重要と考えられます。
ビタミンB1(チアミン)の役割|糖質をエネルギーに変える鍵
ビタミンB1(チアミン)は、糖質をエネルギーに変換する過程で不可欠な栄養素です。体内の細胞がブドウ糖(グルコース)からエネルギーを作り出すとき、ビタミンB1は酵素のはたらきを助ける「補酵素」として機能します。つまり、ごはんやパンなどの炭水化物をたくさん食べても、ビタミンB1が足りなければ効率よくエネルギーに変えることが十分にできません。ビタミンB1は糖代謝に関与する酵素の正常な機能に必要であり、欠乏すると適切なエネルギー産生が妨げられることが報告されています[Nutrients. 2025;17(13):2206.]。
ビタミンB1の摂取量の目安と不足のサイン
成人のビタミンB1の推奨摂取量は、一般的に男性で1.2mg/日、女性で1.1mg/日とされています。ビタミンB1の必要量はエネルギー摂取量に比例すると報告されています。臨床的な欠乏症状は0.5mg/日未満の摂取で出現し得るとされています[Food Nutr Res. 2023;67:10.29219/fnr.v67.10290.]。
ビタミンB1が不足すると、初期には食欲不振・疲労感・気分の落ち込み・筋力低下といった症状が現れることがあります。夏場は炭水化物中心の食事(そうめん・冷やし中華など)に偏りやすく、ビタミンB1の消費が増える一方で供給が減りがちです。この「消費増・供給減」のアンバランスが夏バテの一因となっている可能性があります。
タンパク質・ビタミンB1を効率よく摂る食品と工夫
タンパク質を多く含む食品には、肉・魚・卵・大豆製品(豆腐・納豆)・乳製品があります。ビタミンB1を多く含む食品には、豚肉(特にヒレ肉・もも肉)・うなぎ・玄米・大豆・ナッツ類があります。豚肉は両方の栄養素を効率よく摂れる食材です。
夏場の食欲低下時には、冷しゃぶ・豆腐サラダ・枝豆・ゆで卵など、冷たくても食べやすい高タンパク食品を選ぶ工夫が考えられます。ビタミンB1はアリシン(にんにく・たまねぎなどに含まれる成分)と一緒に摂ると吸収率が高まるとされており、豚肉のにんにく炒めなどは合理的な組み合わせといえます。
夏バテ予防の栄養摂取のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、炭水化物中心の食事に偏らず、タンパク質とビタミンB1を意識的に摂ることと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
夏の食事は「食べやすさ」を優先しがちですが、冷しゃぶや豆腐など冷たくても栄養が摂れるメニューを意識するだけで、夏バテ予防につながる可能性があります。完璧な食事を目指す必要はありません。毎食1品タンパク質を加えることから始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、極端な食欲不振が1週間以上続く場合、急に体重が3kg以上減った場合、手足のしびれや歩行のふらつきが出てきた場合は、栄養不足以外の原因が疑われます。このような症状がある場合は、医療機関への受診をご検討ください。
まとめ:夏バテ予防に必要なタンパク質・ビタミンB1のポイント
- タンパク質の目安: 成人は体重1kgあたり約0.8〜1.0g/日。体重60kgなら約48〜60g/日が目安です。不足すると筋力低下や免疫機能の低下につながる可能性があります
- ビタミンB1の目安: 成人男性で1.2mg/日、女性で1.1mg/日が一般的な推奨量です。糖質をエネルギーに変換する過程に不可欠な栄養素です
- 夏場は不足しやすい: 食欲低下で食事量が減り、炭水化物中心の食事に偏ることで、タンパク質・ビタミンB1ともに不足しやすくなります
- 効率的な食品: 豚肉・卵・豆腐・大豆製品・玄米などが両栄養素を補いやすい食品です
- 受診の目安: 極端な食欲不振が続く場合、急な体重減少がある場合、手足のしびれがある場合は、医療機関への受診をご検討ください
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(参考文献)
Azzolino D, Arosio B, Marzetti E, Calvani R, Cesari M. Nutritional Status as a Mediator of Fatigue and Its Underlying Mechanisms in Older People. Nutrients. 2020;12(2):444.
Kaźmierczak-Barańska J, Halczuk K, Karwowski BT. Thiamine (Vitamin B1)—An Essential Health Regulator. Nutrients. 2025;17(13):2206.
Strandler HS, Strand TA. Thiamin (Vitamin B1) – A scoping review for Nordic Nutrition Recommendations 2023. Food Nutr Res. 2023;67:10.29219/fnr.v67.10290.


