

監修者平塚市民病院 皮膚科
どちらか一方が明確にリスクが高いとは言い切れず、頭皮の炎症やフケの有無がより重要な指標と考えられています。
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頭皮の乾燥と脂っぽさの違いとは?皮脂バランスの基本
頭皮の状態は大きく「乾燥タイプ」と「脂っぽいタイプ」に分けられますが、実は皮脂の量だけで抜け毛のリスクが決まるわけではありません。フケのある方とない方を比較した研究では、皮脂の量そのものには差が見られなかったと報告されています[Indian J Dermatol. 2010;55(2):130-134.]。つまり、「脂っぽいから抜け毛が多い」「乾燥しているから安心」とは単純に言えないのです。
頭皮の健康に影響するのは、皮脂の「量」よりも「バランスの乱れ」です。皮脂が分解されてできる物質が毛穴の周囲で炎症を引き起こし、毛を支える組織の環境を悪化させる可能性が示されています[Bioessays. 2021;43(10):e2100005.]。この仕組みは、乾燥タイプ・脂性タイプのどちらにも起こりうるものです。
頭皮の抜け毛リスクを左右するのはフケと炎症
抜け毛リスクにより直接的に関わるのは、フケや頭皮の炎症です。フケの重症度が高いほど、成長を休んでいる毛(休止期毛)の割合が増えるという関係が確認されており、5年間の観察では慢性的にじわじわ進む脱毛が認められています[Clin Exp Dermatol. 2006;31(1):23-26.]。また、フケがある方では1日あたり100〜300本の脱毛が見られたという報告もあります[Indian J Dermatol. 2010;55(2):130-134.]。
こうしたフケや炎症の背景には、頭皮にもともと存在するマラセチアという常在菌が関わっています。この菌が皮脂を分解する際に生じる物質が炎症を引き起こしますが、皮脂の量が多いことだけが原因ではなく、皮脂の組成(成分のバランス)やその人の肌の感受性も重要であることが示されています[J Clin Investig Dermatol. 2015;3(2).]。この知見は、皮脂量だけに注目したケアでは不十分で、頭皮全体の環境を整えることが大切であることを裏付けています。
頭皮の乾燥タイプが注意すべきバリア機能の低下
乾燥タイプの方に特に知っておいていただきたいのが、頭皮のバリア機能の低下です。頭皮に炎症が生じている部位では、肌の水分が外に逃げやすくなる現象(TEWL=経皮水分蒸散量の増加)が確認されています[Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:1537-1548.]。バリア機能が低下すると外部からの刺激を受けやすくなるため、乾燥タイプの方でも炎症が起きやすくなり、間接的に抜け毛につながる可能性が指摘されています。
頭皮タイプ別セルフチェックのポイント
自分の頭皮タイプを知ることは、適切なケアの第一歩です。以下の傾向を参考にしてみてください。
- 乾燥タイプの傾向:洗髪後に頭皮がつっぱる感じがある、フケが細かくパラパラしている、頭皮にかゆみを感じやすい。
- 脂性タイプの傾向:夕方になると髪がベタつく、フケが大きく湿っている、頭皮にべたつきを感じやすい。
ただし、どちらのタイプでもフケやかゆみ、赤みが続く場合は頭皮の炎症が起きている可能性があります。前述のとおり、フケの程度と休止期毛の割合には関連が認められているため[Clin Exp Dermatol. 2006;31(1):23-26.]、フケが気になる場合は早めのケアが大切です。
頭皮の乾燥・脂っぽさに合わせた日常ケアの方法
頭皮の皮脂バランスを整えるためには、日常の生活習慣を見直すことが基本です。
洗髪の頻度と方法を見直すことがポイントです。脂性タイプの方は毎日の洗髪が適していますが、乾燥タイプの方は洗いすぎによって必要な皮脂まで取り除いてしまう場合があります。どちらのタイプでも、爪を立てずに指の腹でやさしく洗うことが頭皮への負担軽減につながります。
また、睡眠不足や偏った食事は皮脂の分泌バランスを乱す要因になりえます。十分な睡眠をとり、脂質に偏らないバランスのよい食事を心がけることが、頭皮環境を整えるうえで重要と考えられています。
頭皮の皮脂バランスを整えるうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、フケや炎症のサインを見逃さないことと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
頭皮が乾燥していても脂っぽくても、大切なのは皮脂の量そのものではなく、頭皮の炎症やフケを放置しないことです。毎日の洗髪方法や生活習慣の見直しといった身近なケアから始めてみてください。フケやかゆみ、赤みが長く続く場合や、抜け毛が目立つようになった場合は、医療機関への相談をご検討ください。
まとめ:頭皮の乾燥・脂っぽさと抜け毛ケアのポイント
- 皮脂量だけでは判断できない:皮脂の量そのものはフケの有無と差がなかったと報告されており、「脂っぽい=抜け毛リスクが高い」とは言い切れません
- フケと炎症が重要な指標:フケの重症度が高いほど休止期毛の割合が増える関連が確認されており、慢性的な脱毛につながる可能性があります
- 皮脂バランスの乱れに注意:皮脂が分解されてできる物質が毛穴周囲の炎症を活性化させる仕組みが示されています
- 乾燥タイプもリスクあり:バリア機能の低下により水分が逃げやすくなり、外部刺激への感受性が高まる可能性が指摘されています
- 日常ケアが基本:自分のタイプに合った洗髪方法の見直しと、睡眠・食事などの生活習慣改善が頭皮環境を整える第一歩です
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(参考文献)
Borda LJ et al. J Clin Investig Dermatol. 2015;3(2).
Dall'Oglio F et al. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:1537-1548.
Pierard-Franchimont C et al. Clin Exp Dermatol. 2006;31(1):23-26.
Ranganathan S et al. Indian J Dermatol. 2010;55(2):130-134.
Limbu SL et al. Bioessays. 2021;43(10):e2100005.







