

監修者富士在宅診療所 一般内科
3食きちんと食事をとっていれば、日常生活で塩分タブレットを追加する必要はないとされています。大量に汗をかく運動や作業のときに限り、一時的な塩分補給として活用するのが適切です。
塩分タブレットが必要な場面と不要な場面の見分け方
熱中症には大きく分けて2つのタイプがあります。日常生活の中で起こる「非労作性」と、激しい運動や作業中に起こる「労作性」です。日常生活で起こるタイプでは、定期的な水分補給が中心であり、3食きちんと食事をとっている人には特別な塩分の追加は不要とされています[日本高血圧学会 減塩・栄養委員会. 減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条. 2026.]。
一方、激しい運動や長時間の屋外作業など、大量の発汗を伴う場面では、水分だけでなく塩分も一時的に補う必要があります[日本高血圧学会 減塩・栄養委員会. 減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条. 2026.]。つまり、塩分タブレットは「汗をたくさんかく場面」に限って活用するものであり、普段の生活では食事で十分な塩分がまかなえると考えられています。
塩分タブレットの摂りすぎが招くリスク
日本人の平均的な食塩摂取量は、すでに推奨される量を大きく上回っています。国際的な健康指針では、成人のナトリウム(塩分の主成分)摂取量を1日2000mg未満(食塩にして約5g)に抑えることが推奨されていますが、世界の平均摂取量は推奨量の2倍を超えています[World Health Organization. Sodium reduction: Fact sheet. 2026.]。
こうした状況で、必要のない場面で塩分タブレットをさらに追加すると、ナトリウムの過剰摂取につながります。過剰なナトリウム摂取は、血圧の上昇や心血管疾患のリスクを高めることが報告されています[World Health Organization. Sodium reduction: Fact sheet. 2026.]。「暑いから念のため」と習慣的に塩分タブレットを摂ることは、かえって健康上のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
塩分タブレットはいつ食べる?塩分補給の目安
大量に汗をかく場面では、ナトリウム濃度が100mlあたり40~80mgのスポーツドリンクや経口補水液を、20~30分ごとにカップ1~2杯程度摂取することが推奨されています[厚生労働省. 職場における熱中症防止のためのガイドライン. 基発0520第6号(令和7年5月20日改正).]。塩分タブレットを使う場合も、この目安を参考に適量を守ることが大切です。
暑熱下で3時間の運動を行った研究では、ナトリウムを含む飲料を摂取した群は血液中のナトリウム濃度が安定していたのに対し、ナトリウムを含まない飲料だけの群では濃度の低下がみられました[J Athl Train. 2009;44(2):117-23.]。この結果は、大量の発汗時には水分だけでなく、塩分も一緒に補給することの重要性を裏付けています。
水の飲みすぎにも注意が必要
塩分不足だけでなく、「水の飲みすぎ」にも注意が必要です。複数の研究をまとめた報告では、運動時に起こる低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が異常に低くなった状態)の主な原因は、塩分不足よりも水分の過剰摂取であることが示されています[Auton Neurosci. 2022;238:102930.]。予防策として、水分の摂取量と発汗量のバランスを管理すること、そしてナトリウムの補給が有効とされています。塩分タブレットの活用はこの予防策のひとつに位置づけられますが、水分管理とあわせて行うことが重要です。
一方、長距離の持久系スポーツを対象とした研究では、ナトリウムサプリメントを使わなかった参加者でも、のどの渇きに応じて水分を摂っていれば水分バランスが保たれたことが報告されています[J Strength Cond Res. 2016;30(3):615-20.]。この知見は、塩分タブレットが常に必須というわけではなく、状況に応じた判断が大切であることを示しています。
塩分補給を考えるうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、塩分タブレットの必要性を「汗の量」で判断し、日常生活では食事からの塩分で十分であるという点と考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
塩分タブレットは、必要な場面で使えば熱中症予防の心強い味方になります。大切なのは、「いつ、どれくらい必要なのか」を汗の量に応じて判断することです。普段の食事をしっかりとっていれば、日常生活で塩分を余分に追加する必要はありません。
大量の発汗が続く場面や、体調に不安を感じた場合は、医療機関への相談をご検討ください。
まとめ:塩分タブレットを安全に活用するために
- 日常生活での必要性: 3食きちんと食事をとっている場合、日常的な塩分タブレットの追加は不要とされています
- 必要な場面: 激しい運動や長時間の屋外作業など、大量の発汗を伴う場面に限って一時的に活用します
- 摂りすぎリスク: 不要な場面で塩分を追加すると、ナトリウムの過剰摂取により、血圧上昇や心血管疾患のリスクが高まる可能性があります
- 塩分補給の目安: 大量発汗時はナトリウム濃度40~80mg/100mlの飲料を20~30分ごとにカップ1~2杯程度が推奨されています
- 水分管理も重要: 塩分不足だけでなく、水の飲みすぎによる低ナトリウム血症にも注意が必要です
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(参考文献)
日本高血圧学会 減塩・栄養委員会. 減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条:熱中症予防と高血圧管理の観点から. 2026. https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
World Health Organization. Sodium reduction(Fact sheet). 2026. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/sodium-reduction
厚生労働省. 職場における熱中症防止のためのガイドライン. 基発0318第1号(令和8年3月18日). https://www.mhlw.go.jp/content/001676299.pdf
Anastasiou CA, Kavouras SA, Arnaoutis G, et al. Sodium replacement and plasma sodium drop during exercise in the heat when fluid intake matches fluid loss. J Athl Train. 2009;44(2):117-23.
Seal AD, Kavouras SA. A review of risk factors and prevention strategies for exercise associated hyponatremia. Auton Neurosci. 2022;238:102930.
Hoffman MD, Stuempfle KJ. Is Sodium Supplementation Necessary to Avoid Dehydration During Prolonged Exercise in the Heat? J Strength Cond Res. 2016;30(3):615-20.








