前立腺肥大症ではどのような薬を使用しますか?

前立腺による尿道の圧迫を緩める薬や、前立腺を小さくする薬などを使用します。

解説

前立腺肥大症に対しては「前立腺の出口を広げる薬」や「前立腺を小さくする薬」が用いられます。それぞれの薬に副作用のリスクがあるため、服薬については受診先の医師と相談する必要があります。

前立腺の出口を広げる薬

α1遮断薬、PDE5阻害薬といった薬があります。

α1遮断薬

膀胱の出口付近や前立腺にある平滑筋を直接的に緩め、前立腺肥大症による下部尿路症状を軽減させます。効果は内服当日から1週間以内に表れます。
主な副作用としては、逆行性射精という射精障害や、立ち眩みのような起立性低血圧があります。また、眼科手術の際に「術中虹彩緊張低下症候群」という合併症を引き起こしてしまう可能性があるため、手術を行う際は使用中の薬について事前に担当医に伝えるようにしてください。
α1遮断薬には、シロドシン、タムスロシン、ナフトピジルなどの薬剤があります。

PDE5阻害薬

血管の壁から一酸化窒素(NO)を産生させて、前立腺や尿道の平滑筋を間接的に緩め、前立腺肥大症による下部尿路症状を軽減させます。効果は内服当日から1週間以内に表れます。
主な副作用としては、消化器症状、ほてり、低血圧、頭痛が挙げられます。
なお、PDE5阻害薬は用量によっては勃起障害や勃起不全(ED)の治療薬にもなります。ただし、狭心症などに対して使用される硝酸薬を服用している場合、過度な血圧低下を招くことがあるため併用できません。心臓の病気がある方は担当の先生にご相談ください。
PDE5阻害薬のうち、前立腺肥大症に対して処方された際に保険適用となるのはタダラフィルのみです。

前立腺を小さくする薬

5α還元酵素阻害薬

男性ホルモンによる前立腺細胞の増殖を抑制し、徐々に前立腺を縮小させて、前立腺肥大症による下部尿路症状を軽減させます。前立腺体積が30ml以上の方のみ使用可能です。効果は内服開始から1ヶ月〜半年の間に徐々に表れます。
主な副作用としては、ED、射精障害、性欲低下、女性化乳房があります。
注意点としては、男性ホルモンが抑えられることで、前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が見かけ上は半分になってしまうことが挙げられます。そのため、5α還元酵素阻害薬の内服中は、PSAを2倍にして評価する必要があります。
5α還元酵素阻害薬のうち、前立腺肥大症に対して処方された際に保険適用となるのはデュタステリドのみです。

その他の内服薬

強い有効性を示す論文は少ないものの、前立腺肥大症に対して処方された時に保険適用となる薬剤がいくつかあります。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などの漢方
  • セルニルトンなどの生薬

また、前立腺肥大症のある方は、過活動膀胱などの突然尿意を催してしまう病気を生じることがあります。その場合は、上記以外の内服薬として、β3刺激薬や抗コリン薬といった膀胱の過剰な収縮を抑える薬を使用することもあります。

公開日

最終更新日

東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科

秋元 隆宏 監修

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