腸内環境が体脂肪に影響する理由を教えてください。いわゆる「痩せ菌」「デブ菌」は本当にあるのですか?
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腸内環境が体脂肪に影響する理由を教えてください。いわゆる「痩せ菌」「デブ菌」は本当にあるのですか?

石川 翔理監修者

医療法人財団コンフォート コンフォート豊平クリニック 内科 消化器科

石川 翔理

腸内細菌が作る短鎖脂肪酸は脂肪の蓄積抑制や食欲調節に関与する可能性が報告されています。腸内細菌の構成と肥満の関連は研究されていますが、「痩せ菌」「デブ菌」は科学的に確立された用語ではありません。

腸内細菌と体脂肪の関係|短鎖脂肪酸の役割

私たちの腸には約1,000種類、数十兆個の細菌が住んでいます。これらの腸内細菌は、食べ物の中の食物繊維などを分解して「短鎖脂肪酸(SCFA)」と呼ばれる物質を産生します。短鎖脂肪酸には酢酸・プロピオン酸・酪酸などがあり、体のエネルギー代謝や脂肪の蓄積に影響を与えると考えられています。

腸の細胞にあるGPR41という受容体が短鎖脂肪酸で刺激されると、食欲を抑えるホルモン(PYY=ペプチドYY)の分泌が促され、満腹感を感じやすくなると報告されています。また、GPR43という受容体を介してインスリンの感受性が高まり、GLP-1(血糖値を調節するホルモン)の分泌も促される可能性があります。

つまり、腸内細菌は短鎖脂肪酸を介して人の食欲、体重に影響を与えている可能性があります。短鎖脂肪酸を多く産生する腸内細菌が多い人では、食欲の抑制がよく効き、体重が増加しづらい体質となるかもしれません。

肥満患者さんにプロピオン酸を投与した研究では、PYYとGLP-1の分泌が増加し、脂肪量と体重増加の有意な抑制が観察されています[Biosci Microbiota Food Health. 2017;36(4):135-140.]。

「痩せ菌」「デブ菌」とは|バクテロイデスとファーミキューテス

メディアでは「痩せ菌」「デブ菌」という言葉がよく使われますが、これは科学的に確立された用語ではありません。この表現のもとになっているのは、腸内細菌の大きな分類群である「バクテロイデス門」と「ファーミキューテス門」の比率と肥満の関連を調べた研究です。

肥満者では腸内細菌のうちファーミキューテス門の割合が増え、バクテロイデス門の割合が減る傾向があるという報告があります。しかし、この「ファーミキューテス/バクテロイデス比」が肥満のマーカーとして適切かどうかについては結果が一致しておらず、確立された指標とはいえない状況です。つまり、肥満と腸内細菌の関係について、強固に立証された結論はまだ出ていない状況です。

腸内環境を整えることと体脂肪管理

このように、肥満への対処として腸内環境を変化させることについては、まだわかっていない部分が多い状況です。一方で、腸内環境を整えること自体は健康維持にとって意味があると考えられています。発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌・キムチなど)には乳酸菌やビフィズス菌が含まれており、腸内細菌のバランスに関与する可能性が報告されています[Nutrients. 2019;11(8):1806.]。

ただし、腸内環境を整えるだけで体脂肪が大幅に減少するわけではありません。肥満に対しては、あくまで食事改善と運動を基本としたうえで、腸内環境のケアを補助的に位置づけることが推奨されます。

腸内環境と体脂肪管理のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

腸内環境と体脂肪管理のうえで日常生活の工夫について、3つのコツと内容、理由をまとめた表です。1つ目は「食物繊維を毎食摂る」で、内容は「野菜・海藻・きのこ・豆類・全粒穀物を意識的に食べる」ことです。理由は「食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内細菌のバランスを整える」からです。2つ目は「発酵食品を取り入れる」で、内容は「ヨーグルト・納豆・味噌汁などを1日1品以上」摂ることです。理由は「腸内細菌の多様性維持に関与する可能性が報告されている」からです。3つ目は「多様な食材を食べる」で、内容は「同じ食品に偏らず、さまざまな食材を組み合わせる」ことです。理由は「腸内細菌の多様性を高めるには食事の多様性が重要と考えられている」からです。

▶特に重要とされるのは、食物繊維の摂取量を増やすことと考えられています。

ここだけは伝えたいメッセージ

腸内環境と体脂肪の関係は注目されている研究分野ですが、まだ解明されていないことも多くあります。「特定の菌を増やせば痩せる」といった情報には注意が必要です。まずは食事全体のバランスを整え、食物繊維と発酵食品を取り入れることから始めてみましょう。

下痢便秘が長期間続く場合、血便がある場合、急な体重変動がある場合は、消化器系の疾患が隠れている可能性があります。このような場合は、医療機関への受診をご検討ください。

まとめ:腸内環境と体脂肪の関係

  • 短鎖脂肪酸が鍵: 腸内細菌が食物繊維から作る短鎖脂肪酸は、食欲調節や脂肪蓄積の抑制に関与する可能性が報告されています
  • 「痩せ菌」「デブ菌」は確立された用語ではない: 腸内細菌の構成と肥満の関連は研究中ですが、特定の菌だけで体脂肪が決まるわけではありません
  • 食物繊維と発酵食品を意識する: 腸内細菌のバランスを保つため、毎食の食物繊維と毎日の発酵食品が推奨されます
  • 腸内環境だけでは不十分: 食事改善と運動が基本であり、腸内環境のケアはあくまで補助的なものです
  • 受診の目安: 長期の下痢・便秘、血便、急な体重変動がある場合は、医療機関への受診をご検討ください

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(参考文献)

Li X, Shimizu Y, Kimura I. Gut microbial metabolite short-chain fatty acids and obesity. Biosci Microbiota Food Health. 2017;36(4):135-140.

Dimidi E, et al. Fermented foods, health and the gut microbiome. Nutrients. 2019;11(8):1806.

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