夏バテにクエン酸や梅干しがすすめられるのはなぜですか?疲労回復のメカニズムについて教えてください。
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夏バテにクエン酸や梅干しがすすめられるのはなぜですか?疲労回復のメカニズムについて教えてください。

石川 翔理監修者

医療法人財団コンフォート コンフォート豊平クリニック 内科 消化器科

石川 翔理

クエン酸を含む梅干しやレモンなどの食品の酸味によって、食事や水分を摂りやすくなるためと考えられています。

夏バテの仕組み|もたらす症状

夏バテとは、夏に熱くなるに従い、睡眠不足、食欲低下などの症状が出てくる状態を指す言葉です。特定の病名ではなく、これらの症状を指す一般的な用語です。暑さと冷房との温度差なども重なって起こると考えられています。

夏バテの症状としては、食欲不振、だるさ、無気力、不眠などがあります。食事の量が減ることでさらにだるさが増加するなど、悪循環となることがあります。気温が高い中での水分摂取の低下は脱水の危険をより際立てますし、低栄養となれば筋力も低下し、全身の状態にも影響することがあります。

クエン酸と疲労感の軽減|ヒトでの研究結果

日本では伝統的に、夏バテの時には梅干しが良いとされてきました。梅干しにはクエン酸が多く含まれています。また、クエン酸が疲労軽減に良いとする報告があります。健康な成人18名を対象とした二重盲検クロスオーバー試験(参加者も研究者も何を摂取しているか分からない状態で行う試験)では、クエン酸2,700mg/日を8日間摂取した群で、2時間の自転車運動後の主観的な疲労感が、摂取していない群と比べて有意に低かったことが報告されています。また、運動前の唾液中クロモグラニンA(ストレスの指標とされる物質)も低値を示しました[J Clin Biochem Nutr. 2007;41(3):224-30.]。ただし、この研究は小規模であり、効果には個人差があります。クエン酸を摂れば疲れが取れるという単純な関係ではなく、あくまで疲労感の軽減に関与する可能性が示唆された段階です。

梅干しとクエン酸の関係|日本の伝統食品としての梅

梅(Prunus mume)の果実には、クエン酸を主成分とする多種の有機酸が含まれています。梅干しは梅を塩漬けにして作られる日本の伝統食品で、昔から「疲れたときに梅干し」と言われてきました。梅抽出物を与えたラットでは、血中アンモニア濃度の低下と運動持久力の改善が報告されています[Front Pharmacol. 2021;12:679378.]。ただし、これらはラットを対象とした研究であり、ヒトでの効果は十分に確立されていません。

梅干しやお酢など、クエン酸を含む食品の酸味で、食事や水分を摂りやすくなる、という利点もあるでしょう。

また、梅干しには塩分が多く含まれるため、高血圧の方や塩分制限が必要な方は摂取量に注意が必要です。1日1〜2個程度を目安に、食事全体の塩分バランスを考慮しながら取り入れることが一般的に推奨されています。

夏バテ対策としてのクエン酸の上手な摂り方

クエン酸は梅干し以外にも、柑橘類(レモン・グレープフルーツ・みかんなど)、酢、トマトなどに含まれています。夏場は食欲が落ちやすい時期ですが、酸味のある食品は食欲を刺激しやすく、食事量の確保にもつながる可能性があります。クエン酸を含む飲料や食品を日常的に取り入れることは、夏バテ対策の「食」の工夫として検討してもよいかもしれません。なお、クエン酸は健康維持のサポートのひとつであり、それだけで夏バテを予防したり治したりするものではありません。

夏バテの疲労回復のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

夏バテの疲労を回復する日常生活の工夫について、3つのコツと内容、理由をまとめた表です。1つ目は「梅干しを1日1〜2個を目安に取り入れる」で、内容は「おにぎりの具や味噌汁に加えるなど、日常の食事に組み込む」ことです。理由は「クエン酸を含む伝統食品として手軽に摂取でき、塩分補給にもなる可能性がある。ただし塩分過多に注意」するためです。2つ目は「柑橘類・酢の物を食事に加える」で、内容は「レモン水・酢の物・柑橘フルーツなどを活用する」ことです。理由は「梅干し以外にもクエン酸を含む食品は多く、酸味が食欲を刺激する可能性がある」からです。3つ目は「十分な睡眠と休息を確保する」で、内容は「睡眠時間を7〜8時間確保し、疲労の蓄積を防ぐ」ことです。理由は「エネルギー代謝の回復には休息が不可欠であり、食事だけで疲労は解消しないと考えられている」からです。

特に重要とされるのは、クエン酸を含む食品の摂取だけに頼らず、十分な休息や栄養バランスのよい食事と組み合わせることと考えられています。

ここだけは伝えたいメッセージ

梅干しやレモンなどの酸味のある食品は、夏場の食事をおいしくしてくれる心強い味方です。「疲れたかな」と感じたときに、いつもの食事に1品加えてみることから始めてはいかがでしょうか。

ただし、強い倦怠感が何日も続く場合、食欲がまったくない状態が続く場合、体重が急に減ってきた場合は、夏バテ以外の病気が隠れている可能性があります。このような症状がある場合は、医療機関への受診をご検討ください。

まとめ:クエン酸・梅干しと夏バテの関係のポイント

  • クエン酸による疲労感軽減の可能性:ヒトを対象とした小規模RCTで、クエン酸摂取群で運動後の疲労感が軽減した可能性が報告されていますが、効果には個人差があります
  • 梅干しはクエン酸の供給源:梅の果実にはクエン酸が含まれていますが、塩分量にも注意が必要です
  • 食事全体のバランスが大切:クエン酸を含む食品だけで夏バテを予防したり治したりすることはできません。休息・栄養・水分補給を総合的に行うことが推奨されます
  • 受診の目安:強い倦怠感が続く場合や食欲不振が長引く場合は、医療機関への受診をご検討ください

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