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腸内環境と睡眠にはどんな関係がありますか?腸脳相関と乳酸菌の役割を教えてください。
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腸内環境と睡眠にはどんな関係がありますか?腸脳相関と乳酸菌の役割を教えてください。

石川 翔理監修者

医療法人財団コンフォート コンフォート豊平クリニック 内科 消化器科

石川 翔理

腸内環境と睡眠は、腸と脳が影響し合う「腸脳相関」を通じて双方向に関係すると指摘されています。特定の菌株では、睡眠の質を支えたとする報告があります。ただし、まだわかっていない点も多いです。

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腸内環境と睡眠をつなぐ「腸脳相関」とは

腸と脳は、神経やホルモン、免疫を通して情報をやりとりしています。このつながりは腸脳相関(ちょうのうそうかん=腸と脳が影響し合う関係)と呼ばれ、腸内環境と睡眠はこれを通じて双方向に関係すると指摘されています。腸内細菌がつくる物質(セロトニンやGABA、短鎖脂肪酸など眠りや気分にかかわる成分)が、睡眠に影響する仕組みも研究されています[Open Life Sci. 2024;19(1):20220910.]。ただし、多くは動物実験などで調べられている段階で、わかっていないことも多いです。

睡眠の乱れは腸内環境にも影響する?

腸内細菌にも、約1日の周期でリズムを刻む性質があります。時差ぼけや、睡眠時間が短い状態が続くとこのリズムが乱れ、腸内細菌のバランスが変わると報告されています[腸内細菌学雑誌. 2017;31(3):143-150.]。人でも、長時間の飛行機移動をした人や、睡眠を4時間に減らした9人の試験で、菌の構成の変化が確認されています。ただし、いずれも短時間、少人数の研究で、健康への影響まで確かめられたものではありません。一方、腸のバリア機能の低下まで確かめられているのは、いまのところ主に動物実験です。同じ総説では規則正しい食事がリズムを取り戻す助けになる可能性も示されていますが、根拠は動物実験が中心で、菌をとることは「今後、人での検討が必要」とされています。

乳酸菌やビフィズス菌は睡眠の質を助ける?

睡眠に悩む大人や睡眠が十分でない大人を対象とした11件のランダム化比較試験を統合した分析では、乳酸菌などの摂取が睡眠の質の改善につながったと報告されています[Front Neurol. 2024;15:1477533.]。ただし差は小さく、菌の種類・とった期間・対象者の状態によって結果が変わるため、著者らもさらなる試験が必要としています。

乳酸菌の役割:ストレス時の睡眠を守る研究

日本発の研究もあります。試験を控えた医学部生94人の二重盲検試験では、乳酸菌の一種(ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株)をとった人たちは、強いストレスがかかる時期でも寝つきの悪化がおさえられ、深い眠りが保たれやすかったと報告されています[Benef Microbes. 2017;8(2):153-162.]。ただしこの試験は菌株を製造する企業の研究者が中心となって行ったもので、確かめられたのはこの菌株についてです。乳酸菌全般に同じことがいえるわけではありません。

ビフィズス菌の研究でわかっていること

睡眠の質の評価で「質が低下している」とされた大人89人の試験では、ビフィズス菌の一種(ビフィドバクテリウム・ロンガム1714株)をとった人で、4週間の時点で睡眠の質の改善が早くみられ、日中の眠気による困りごとも減ったと報告されています[Sci Rep. 2024;14(1):3725.]。一方で8週間の時点では、睡眠の総合的な指標はとらなかった人と同じくらいで、機器で測った客観的な睡眠には差がみられませんでした。この試験も菌株を扱う企業の研究者が参加しています。効果は穏やかで一部の指標に限られ、補助的なものと考えるのがよいでしょう。

腸内環境と睡眠を整えるうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

腸内環境と睡眠を整えるうえで日常生活の工夫として検討したい3つのコツと理由をまとめた表です。 1つ目は「規則正しい食事を心がける」で、毎日なるべく決まった時間に食事をとることです。理由は、体内時計が整い、睡眠と目覚めのリズムが整いやすいためです。 2つ目は「乳酸菌・ビフィズス菌は選んで試す」で、試すなら菌株名を確かめ、数週間様子を見ることです。理由は、睡眠について調べられているのは特定の菌株で、製品によって菌の種類は異なるためです。 3つ目は「睡眠のリズムを大切にする」で、十分な睡眠時間と、規則的な就寝を意識することです。理由は、睡眠の乱れが健康に悪影響を及ぼすためです。

ここだけは伝えたいメッセージ

腸内環境と睡眠は、影響しあう可能性が研究されている段階です。まずは無理のない範囲で、食事と睡眠のリズムを整えることから始めてみましょう。

なお、乳酸菌飲料やサプリメントは医薬品ではなく、睡眠の不調に対する治療の代わりになるものではありません。眠れない状態が長く続く場合や、生活に支障が出る場合は、医療機関への相談をご検討ください。

まとめ:腸内環境と睡眠は双方向につながっている

  • 双方向の関係: 腸内環境と睡眠は腸脳相関を通じて影響し合い、睡眠の乱れは腸内細菌のリズムやバランスの変化につながるという報告があります
  • 乳酸菌・ビフィズス菌: 睡眠の質の改善につながったとする研究がありますが、差は小さく、確かめられているのは特定の菌株です
  • セルフケア: 規則正しい食事・腸活・十分な睡眠など、生活のリズムを整えることが基本です
  • 注意点: 効果には個人差があり、治療の代わりにはなりません

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(参考文献)

Lin Z, Jiang T, Chen M, Ji X, Wang Y. Gut microbiota and sleep: Interaction mechanisms and therapeutic prospects. Open Life Sci. 2024;19(1):20220910.
入江潤一郎, 伊藤裕. 睡眠と腸内細菌叢. 腸内細菌学雑誌. 2017;31(3):143-150.
Yu B, Wang KY, Wang NR, Zhang L, Zhang JP. Effect of probiotics and paraprobiotics on patients with sleep disorders and sub-healthy sleep conditions: a meta-analysis of randomized controlled trials. Front Neurol. 2024;15:1477533.
Takada M, Nishida K, Gondo Y, et al. Beneficial effects of Lactobacillus casei strain Shirota on academic stress-induced sleep disturbance in healthy adults: a double-blind, randomised, placebo-controlled trial. Benef Microbes. 2017;8(2):153-162.
Patterson E, Tan HTT, Groeger D, Andrews M, Buckley M, Murphy EF, Groeger JA. Bifidobacterium longum 1714 improves sleep quality and aspects of well-being in healthy adults: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. Sci Rep. 2024;14(1):3725.

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