
監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、CT検査で測定した内臓脂肪面積(VFA)が100cm²以上の場合に「内臓脂肪型肥満」と判定されます。この基準に対応する腹囲(へその高さで測定)は、男性85cm以上、女性90cm以上とされています。
健康診断の結果を見て「内臓脂肪」や「腹囲」の数値が気になったことはありませんか。内臓脂肪の蓄積は外見ではわかりにくく、自分では気づかないうちに健康リスクが高まっている可能性があります。ここでは、内臓脂肪レベルが危険域に入る目安や、健診結果の読み方、受診を検討すべきタイミングについて解説します。
内臓脂肪レベルが「危険」とされる目安
Q. 内臓脂肪レベルはどのくらいから危険なのですか?
回答
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、CT検査で測定した内臓脂肪面積(VFA)が100cm²以上の場合に「内臓脂肪型肥満」と判定されます。この基準に対応する腹囲(へその高さで測定)は、男性85cm以上、女性90cm以上とされています。
解説
内臓脂肪面積は、おなかの断面をCTで撮影して計測する方法がもっとも正確とされています。日本人を対象とした研究では、CT測定による内臓脂肪面積と心血管リスク因子の集積を調べたところ、男性では103.0cm²、女性では69.0cm²が心血管リスクの判別値であったと報告されています[注2]。日本の診断基準で男女ともに100cm²が採用されているのは、この研究を含む複数の知見に基づいています。ただし、個人によってリスクが生じる水準は異なる可能性があり、この数値はあくまで目安のひとつです。
家庭用の体組成計に表示される「内臓脂肪レベル」は、一般的に1〜30程度の数値で示されることが多く、メーカーによって算出方法が異なります。多くの製品では、レベル10以上が「やや高い」、15以上が「高い」とされていますが、CT検査のような直接測定とは異なるため、正確な判断には医療機関での検査が必要です。
健診で注目すべき数値と内臓脂肪との関連
Q. 健診結果のどの項目を見れば内臓脂肪のリスクがわかりますか?
回答
腹囲だけでなく、血圧、空腹時血糖、中性脂肪、HDLコレステロールの4項目をあわせて確認することが重要です。これらの項目のうち2つ以上が基準値を超えていると、メタボリックシンドロームと診断される可能性があります。
解説
内臓脂肪の蓄積は、血圧の上昇、血糖値の上昇、脂質異常といった複数の代謝異常と関連することが知られています。多民族を対象とした大規模前向きコホート研究(MESA)では、内臓脂肪面積が100 cm²/m増加するごとにメタボリックシンドロームの発症リスクが28%上昇し、この関連はBMIとは独立して認められたと報告されています[注1]。つまり、体重やBMIが正常範囲であっても、内臓脂肪が多ければ代謝リスクが高まる可能性があるということです。
健診結果では、以下の基準値を参考にしてください。
- 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
- 血圧:収縮期130mmHg以上 または 拡張期85mmHg以上
- 空腹時血糖:110mg/dL以上
- 中性脂肪:150mg/dL以上
- HDLコレステロール:40mg/dL未満
これらはあくまで日本の特定健診で用いられている判定値であり、個人の背景や他の疾患の有無によって医師の判断が異なる場合があります。
内臓脂肪と皮下脂肪の違いから見るリスクの考え方
Q. 内臓脂肪と皮下脂肪ではリスクが違うのですか?
回答
内臓脂肪は、腸や肝臓などの臓器のまわりにつく脂肪で、代謝に影響を与えやすいと考えられています。一方、皮下脂肪は皮膚の下に蓄積する脂肪で、内臓脂肪と比べると代謝リスクとの関連は弱いと報告されています。
解説
MESA研究では、皮下脂肪と比較して内臓脂肪のほうがメタボリックシンドロームの発症とより強く関連していたことが示されています[注1]。内臓脂肪は、血糖値や脂質代謝に影響を与える物質を分泌しやすく、蓄積が進むと動脈硬化や糖尿病のリスクが高まる可能性があると考えられています。
また、年齢・性別によって健康的な体脂肪率の範囲は大きく異なることも報告されており、同じ体脂肪率でも年齢や性別によって健康上の意味合いが変わる可能性があります[注3]。体脂肪率の数値だけで一律に判断するのではなく、内臓脂肪がどの程度蓄積しているかを医療機関で確認することが大切です。
内臓脂肪を意識するうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点
内臓脂肪の蓄積を防ぐためには、食事と運動の両面からのアプローチが推奨されています。ただし、以下はあくまで健康維持のサポートであり、病気を予防したり治したりするものではありません。個人差がありますので、体調に不安がある場合は医療機関への相談をご検討ください。
- 食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこ類を意識して摂ること。食物繊維は食後血糖値の急上昇をゆるやかにする可能性があると報告されています
- 有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギングなど)を1日30分程度、週に150分以上を目安に取り入れること。有酸素運動は内臓脂肪の減少に寄与する可能性が示唆されています
- 中性脂肪の値が気になる場合、機能性表示食品に含まれるEPA・DHAが中性脂肪を低下させる可能性が報告されています。ただし、効果には個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありません
受診を検討すべきタイミング
以下に当てはまる場合は、医療機関の受診をご検討ください。
- 健診で腹囲が基準値を超え、かつ血圧・血糖・脂質のいずれか2つ以上が基準値を超えている場合
- 家庭用体組成計の内臓脂肪レベルが高めで推移し、改善がみられない場合
- 体重は変わらないのに腹囲が増えている場合
内臓脂肪の蓄積は自覚症状がないまま進行することが多く、放置すると動脈硬化や2型糖尿病などにつながる可能性があります。早めに医療機関で相談し、必要に応じてCT検査や血液検査を受けることが重要です。
まとめ
- 日本の基準では、CT測定による内臓脂肪面積100cm²以上が「内臓脂肪型肥満」とされている
- 腹囲は男性85cm以上、女性90cm以上が注意の目安とされている
- 腹囲だけでなく、血圧・血糖・中性脂肪・HDLコレステロールをあわせて確認することが大切である
- 体重やBMIが正常でも内臓脂肪が多い場合はリスクが高まる可能性がある
- 健診で複数の項目が基準値を超えている場合は、医療機関への相談をご検討ください
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(参考文献)
[注1] Shah RV, Murthy VL, Abbasi SA, et al. Visceral adiposity and the risk of metabolic syndrome across body mass index: the MESA Study. JACC Cardiovasc Imaging. 2014;7[12]:1221-1235. PMID: 25440591
[注2] Kashihara H, Lee JS, Kawakubo K, Tamura M, Akabayashi A. Criteria of waist circumference according to computed tomography-measured visceral fat area and the clustering of cardiovascular risk factors. Circ J. 2009;73[10]:1881-1886. PMID: 19652399
[注3] Gallagher D, Heymsfield SB, Heo M, Jebb SA, Murgatroyd PR, Sakamoto Y. Healthy percentage body fat ranges: an approach for developing guidelines based on body mass index. Am J Clin Nutr. 2000;72[3]:694-701. PMID: 10966886


