

監修者医療法人財団コンフォート コンフォート豊平クリニック 内科 消化器科
γ-GTP・AST・ALTはそれぞれ由来する臓器や上昇の意味が異なり、組み合わせて見ることで肝臓の状態をより的確に把握することができます。
肝機能マーカーγ-GTP・AST・ALTとは?それぞれの役割の違い
健康診断の血液検査で目にするγ-GTP(ガンマジーティーピー)・AST・ALTは、いずれも肝臓の状態を調べるための指標です。ただし、それぞれが体の中で作られる場所や、数値が上がる原因は異なります。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は肝臓のほか、心臓や筋肉のような他の臓器にも存在する酵素です。一方、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は主に肝臓に多く存在しており、肝臓に対する特異度(その臓器の異常をどれだけ正確に反映するかの度合い)はALTのほうが高いとされています[Giannini EG, Testa R, Savarino V. CMAJ. 2005;172(3):367-79.]。そのため、ASTだけが上がっている場合には肝臓以外の可能性も考慮する必要があります。また、ALTだけが高い場合は肝臓になんらかの負担がかかっている可能性が高いと考えられます。
γ-GTPは、主に胆管(たんかん=胆汁の通り道)の周辺に多く分布する酵素で、飲酒量の指標としても広く用いられています[Whitfield JB. Crit Rev Clin Lab Sci. 2001;38(4):263-355.]。お酒を飲む習慣がある方でγ-GTPが高い場合は、飲酒による肝臓への負担が反映されている可能性があります。また、石や腫瘍などで胆汁の流れが悪くなった時にも上昇します。
AST/ALT比から読み取れる肝臓の状態
AST・ALTは単体の数値だけでなく、両者の比率(AST/ALT比)も参考になる場合があります。非アルコール性脂肪肝炎(NASH=飲酒が原因でない脂肪肝の進行した状態)の患者さんではAST/ALT比が平均0.9と1未満であるのに対し、アルコール性肝疾患の患者さんでは平均2.6であったとする報告があります[Sorbi D, Boynton J, Lindor KD. Am J Gastroenterol. 1999;94(4):1018-22.]。この知見は、AST/ALT比が脂肪肝の原因(飲酒によるものか、それ以外か)を考える手がかりの一つになり得ることを示しています。つまり、AST、ALTがともに上がっているとき、ASTのほうが高い場合、アルコール性の可能性が上昇するということです。
ただし、AST/ALT比だけで原因を特定することはできません。実際には患者さんから聞いた病歴や、エコー、CTなど、複数の情報を加味して総合的に判断します。健康診断で気になる数値が出た場合は、医療機関への相談をご検討ください。
健康診断で肝機能の数値を確認するポイント
健康診断では、AST・ALT・γ-GTPに加えて血小板数なども肝臓の状態を評価するうえで参考になる項目とされています[岡上武, 水野雅之. 総合健診. 2015;42(2):307-312.]。肝臓の機能が低下すると血小板の数値も低下するためです。また、基準値は検査を行う施設によって多少の差があるため、検査結果に添付される基準範囲と照らし合わせて確認することが大切です。
肝機能の数値が高い場合、その原因は飲酒、肥満、食生活の偏りなど多岐にわたります。特に飲酒習慣がないにもかかわらずALTやγ-GTPが高い場合は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD=飲酒が原因でない脂肪肝)の可能性も考えられます。NAFLDは食事や運動などの生活習慣の改善によって肝臓の状態が改善したという報告もあります[Promrat K, Kleiner DE, Niemeier HM, et al. Hepatology. 2010;51(1):121-9.]。この報告では、生活習慣の改善によって平均9.3%の減量を達成した方で肝臓の組織に改善が見られました。
肝機能の数値が気になるときの生活習慣の見直し
国内のガイドラインでも、食事療法や運動療法による減量がNAFLD/NASHの改善に有用であるとされています[日本消化器病学会・日本肝臓学会 編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020.]。この知見は、肝機能の数値が気になる方にとって、日常的な食事や運動の見直しが肝臓の健康を守るうえで重要な取り組みとなり得ることを裏付けるものと考えられます。
具体的には、バランスの取れた食事を心がけること、定期的に体を動かす習慣を持つことなどが推奨されています。こうした運動、食事の習慣は肝臓の健康にとっても大切です。ただし、数値の改善度合いには個人差があるため、自己判断のみに頼らず、定期的な健康診断の受診を続けることも大切です。
肝機能の数値を改善するうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

ここだけは伝えたいメッセージ
γ-GTP・AST・ALTの数値は、肝臓が今どのような状態にあるかを知るための手がかりです。肝臓の異常は身体の症状としては出づらく、血液検査の数値で状態を知ることが重要です。数値が少し高い段階から食事や運動などの生活習慣を見直すことで、肝臓への負担を減らせる可能性があります。
一方で、数値が大幅に高い場合や、改善が見られない場合は、早めに医療機関への相談をご検討ください。定期的な健康診断で数値の変化を把握し、必要に応じて専門家の意見を取り入れることが、肝臓の健康を守るうえでの大切な一歩になると考えられます。
まとめ:肝機能マーカーγ-GTP・AST・ALTの違いと数値の見方
- AST: 肝臓・心臓・筋肉に存在する酵素で、ALTと比べると肝臓に対する特異度はやや低い
- ALT: 主に肝臓に存在し、肝臓に対する特異度が高いとされている
- γ-GTP: 胆管周辺に多く分布し、飲酒量の指標としても用いられている
- AST/ALT比: 脂肪肝の原因(飲酒によるものかそれ以外か)を考える手がかりのひとつとなり得る
- 基準値: 検査施設によって多少の差があるため、検査結果の基準範囲と照らし合わせて確認する
- 生活習慣の見直し: 食事や運動の改善が、肝臓の状態の改善につながる可能性が報告されている
- 受診の目安: 数値が大幅に高い場合や改善が見られない場合は、医療機関への相談をご検討ください
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(参考文献)
Giannini EG, Testa R, Savarino V. Liver enzyme alteration: a guide for clinicians. CMAJ. 2005;172(3):367-79.
Whitfield JB. Gamma glutamyl transferase. Crit Rev Clin Lab Sci. 2001;38(4):263-355.
Sorbi D, Boynton J, Lindor KD. The ratio of aspartate aminotransferase to alanine aminotransferase: potential value in differentiating nonalcoholic steatohepatitis from alcoholic liver disease. Am J Gastroenterol. 1999;94(4):1018-22.
Promrat K, Kleiner DE, Niemeier HM, et al. Randomized controlled trial testing the effects of weight loss on nonalcoholic steatohepatitis. Hepatology. 2010;51(1):121-9.
日本消化器病学会・日本肝臓学会 編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020.
岡上武, 水野雅之. 肝機能検査、肝障害について─健診における問題点. 総合健診. 2015;42(2):307-312.
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