

監修者福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長
飲酒量が少なくても、食事の偏りや運動不足による代謝の乱れが原因で肝臓に中性脂肪がたまることがあります。
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脂肪肝(MASLD)とは?|お酒を飲まなくても起こる肝臓の脂肪蓄積
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態です。飲酒が原因で起こるイメージが強いかもしれませんが、お酒をほとんど飲まない方にも起こり、世界的に増え続けています。
この状態は長らく「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれてきました。しかし「お酒を飲まないこと」で定義するよりも「代謝の異常があること」で捉えるほうが実態に合うとして、2023年に国際的な合意のもとで「MASLD」という新しい名称に改められました[J Hepatol. 2023;79(6):1542-1556.]。日本語の病名は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」で、2024年8月に日本消化器病学会と日本肝臓学会が正式に決定しています[日本消化器病学会・日本肝臓学会. 脂肪性肝疾患の日本語病名に関して. 2024.]。肥満や糖尿病などの生活習慣病と深く関わる病気である、という位置づけを反映した変更です。
1,100万人以上を対象に44の研究をまとめた分析では、MASLDの有病率は世界全体で約34%と報告されています[Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23(13):2423-2432.e1.]。日本でも、健診受診者を対象とした調査で男性の30.3%、女性の16.1%にMASLDが認められています[Medicina (Kaunas). 2024;60(8):1330.]。さらに岐阜県の健診受診者18万4,463人を20年近く追った研究では、MASLDが増え続けていることが示されました[Liver Int. 2025;45(12):e70454.]。これらのデータは、脂肪肝がお酒を飲まない方にとっても身近な問題であることを示しています。
お酒を飲まない脂肪肝の原因|代謝の乱れとインスリン抵抗性
お酒を飲まないのに脂肪肝になる大きな要因は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積に加え、血糖や血圧、脂質の異常が重なった状態)との関連です。脂肪肝とメタボリックシンドロームは双方向的に影響し合うことが報告されています[Lancet. 2021;397(10290):2212-2224.]。
その背景にあるのが「インスリン抵抗性」です。インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなる状態を指します。インスリンの効きが悪くなると、血液中の遊離脂肪酸が増え、それが肝臓にたまりやすくなると考えられています[Cell Mol Life Sci. 2019;76(1):99-128.]。食事の偏りや運動不足、肥満といった生活習慣がインスリン抵抗性を招きやすいため、お酒を飲まない方でも脂肪肝が起こり得るのです。
さらに、肥満のある成人では80〜90%に脂肪肝が認められるという報告もあり、体重管理が脂肪肝の予防において重要な要素であることがうかがえます[Dig Dis. 2010;28(1):155-161.]。
脂肪肝は検査値が正常でも見つかる?|健診での肝機能の見方
「健康診断のAST・ALTが正常範囲だから安心」とは限りません。脂肪肝の方のうち約79%はALT・ASTが正常範囲内であったと報告されています[Dig Dis. 2010;28(1):155-161.]。この知見は、肝機能の数値だけでは脂肪肝を見逃す可能性があることを示唆しています。
健康診断で腹部エコー(超音波検査)を受けた際に、脂肪肝を指摘されるケースも少なくありません。検査値が正常であっても、肥満やメタボリックシンドロームの傾向がある方は、医療機関への相談をご検討ください。
脂肪肝を改善する食事と運動|生活習慣の見直しがポイント
脂肪肝(MASLD)の改善では、生活習慣の見直しが基本になります。体重を7〜10%減らすことで脂肪肝の炎症や線維化(肝臓が硬くなる変化)の改善が期待できると報告されています[Gastroenterology. 2015;149(2):367-78.e5.]。
具体的には、1日あたり500kcal程度の食事量の見直しと、週3〜5日の運動を組み合わせる方法が有効とされています[BMJ Open Gastroenterol. 2017;4(1):e000139.]。この知見は、食事と運動を併用することが脂肪肝の改善につながる可能性を裏付けるものと考えられます。
食事面では、オリーブオイル・魚・ナッツ類・全粒穀物・果物・野菜を中心とした食事パターンが脂肪肝によい影響を与える一方、砂糖入り飲料、果糖を多く添加した加工食品、過剰な間食、飽和脂肪酸や加工肉の摂りすぎは控えることが望まれます。[Liver Int. 2017;37(7):936-949.]。なお、効果には個人差があります。
脂肪肝を改善するうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、食事と運動の両方を組み合わせて無理なく続けることと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
お酒を飲まない方の脂肪肝は珍しくなく、食事や運動といった日々の生活習慣を少しずつ見直すことで改善が期待できます。一方で、検査値が正常範囲内でも脂肪肝が進行している場合があるため、健康診断で脂肪肝を指摘された方や、メタボリックシンドロームの傾向がある方は、医療機関への相談をご検討ください。
まとめ:お酒を飲まない人の脂肪肝を理解し、生活習慣で改善を目指す
- 脂肪肝(MASLD)とは: 飲酒量が少ない方にも起こる脂肪肝で、世界全体の有病率は約34%、日本では男性30.3%・女性16.1%と報告されている。以前はNAFLDと呼ばれ、2023年の国際合意でMASLDに改称された
- 主な原因: メタボリックシンドロームやインスリン抵抗性が関与し、食事の偏りや運動不足がリスクとなる
- 検査値だけでは見逃す可能性: 脂肪肝の方の約79%はALT・ASTが正常範囲内という報告がある
- 改善の基本: 食事の見直しと運動の併用で、体重の7〜10%減量を目指すことが推奨されている
- 受診の検討: 健診で脂肪肝を指摘された方やメタボリックシンドロームの傾向がある方は、医療機関への相談をご検討ください
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(参考文献)
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日本消化器病学会・日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」2024年8月22日. https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/.(参照 2026-09-01).







