
同じ職場なのに熱中症になる人とならない人がいるのはなぜ?個人差を生む要因を教えてください。
監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
暑熱順化の度合い・体の水分量・前日の飲酒や睡眠不足・持病や服薬・年齢などが重なり、熱中症リスクに個人差が生まれます。
同じ職場で同じ作業をしていても、熱中症になる人とならない人がいます。「体質だから仕方ない」と思われがちですが、実は複数のリスク要因が重なることで発症しやすくなることが報告されています[Exp Physiol. 2021;106(1):191-9.]。自分にどの要因が当てはまるかを知ることが、予防の第一歩です。
熱中症の個人差を生む5つの要因|体質だけでは説明できない
① 暑熱順化(しょねつじゅんか)の度合い
暑さに体が慣れているかどうかは、熱中症リスクに大きく影響します。順化ができている人は汗を効率よくかけるため体温を下げやすく、できていない人は同じ環境でも体に熱がこもりやすくなります。梅雨明け直後や長期休暇明けに熱中症が増えるのは、体が暑さに慣れていないことが一因です。
② 体の水分量(筋肉量との関係)
筋肉には水分を多く蓄える性質があります。筋肉量が多い人ほど体内の水分量に余裕があり、脱水に強い傾向があります。逆に筋肉量が少ない人や高齢者は、少量の水分損失でも影響が出やすくなあります。
③ 前日の飲酒・睡眠不足
アルコールには利尿作用があり、飲酒の翌日は体が脱水傾向にあります。また、睡眠不足は自律神経(体温や発汗を自動的に調節する神経)のバランスを乱し、体温調節の機能を低下させることが報告されています。
④ 持病や服用中の薬
高血圧で利尿薬を服用している場合、薬の作用で脱水が進みやすくなります。また、一部の降圧薬・抗うつ薬・抗ヒスタミン薬は、発汗や皮膚の血流に影響を与え、体温調節を妨げる可能性があると報告されています[J Clin Pharm Ther. 2015;40(4):363-7.]。
⑤ 年齢と体力
加齢とともに体温調節の機能は低下します。また、肥満や日常的な運動不足は暑さへの耐性を下げることが報告されています[N Engl J Med. 2019;380(25):2449-59.]。
「自分は大丈夫」が一番のリスク|セルフチェックリスト
複数の要因が重なると、それまで熱中症になったことがない人でも発症する可能性があります。以下に当てはまる項目が多いほど注意が必要です。
- 今シーズンまだ暑さに体が慣れていない(エアコン中心の生活)
- 普段あまり運動をしていない
- 前日に飲酒をした、または睡眠不足
- 降圧薬・利尿薬・抗うつ薬などを服用中
- 50歳以上で、以前より暑さに弱くなったと感じる
職場で活用できるミネラル補給の工夫|あくまで補助的な手段として
作業現場での水分・ミネラル補給として、15〜20分ごとにコップ1杯程度の水分を摂ることが推奨されています。汗を多くかく環境では、スポーツドリンクや経口補水液の活用が有用です。塩分チャージタブレットは、飲料と併用することで手軽にミネラルを補えます。
ただし、これらはあくまで補助的な手段であり、「飲んでいれば大丈夫」というものではありません。なお、効果には個人差があります。
熱中症の個人差を減らすうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点
特に重要とされるのは、「自分のリスク要因を把握して事前に備えること」と考えられています。

ここだけは伝えたいメッセージ
熱中症は「体質」ではなく「複数のリスク要因の重なり」で起こる障害です。暑熱順化を意識した生活習慣、こまめな水分・ミネラル補給、そして職場での声かけ合いが、個人差を超えた予防につながると期待されます。
服薬中の方や持病のある方は、夏を迎える前に主治医へ「暑い時期の注意点」を相談しておくことをおすすめします。体調に異変を感じた場合は無理をせず、速やかに医療機関への受診をご検討ください。
まとめ:職場の熱中症リスクは「個人差」を理解して防ぐ

編集・監修基準について
本記事は情報の正確性を担保するため、以下のフローを経て作成・公開されています。
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- 医師監修
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- 公開
(参考文献)
Epstein Y, Yanovich R. N Engl J Med. 2019;380:2449-59.
日本救急医学会.“熱中症診療ガイドライン 2024”..https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf,(参照 2026-05-29).
Westwood CS, Fallowfield JL, Delves SK, et al. Exp Physiol. 2021;106:191-9.
Westaway K, Frank O, Husband A, et al. J Clin Pharm Ther. 2015;40:363-7.


