肥満症
「肥満症」とは、肥満によって健康に悪影響、または要治療の状態のことをいいます。主な症状には、膝痛、腰痛や、息切れ、いびき、睡眠時の無呼吸などがあり、健康診断で血圧が高いことや、血糖値が高いことを指摘される、主に食べ過ぎと運動不足が原因の生活習慣病です。また肥満症の一つである「メタボリックシンドローム」の場合は、症状がより深刻なため、早めの治療が必要です。
福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長
井林 雄太 監修
病気について
脂肪が一定程度を超えて多すぎる状態のことです。
肥満が健康状態に悪影響を及ぼしている(あるいはそうなると予測される)、要治療の状態が肥満症です。
食べ過ぎと運動不足が主な原因です。
肥満症のうち、特に動脈硬化の危険度が高いのがメタボリックシンドロームです。
加齢による基礎代謝の低下やカロリーの摂りすぎ、運動不足など原因はさまざまです。
BMI 25以上が肥満とされています。
体重と身長から算出されるBMIを使って判定できます。
膝(ひざ)や腰を痛めたり、心臓や脳の病気になったりするほか、妊娠に支障が出ることもあります。
高度肥満とは、体重(㎏)を身長(m)で二回割った数であるBMIが35以上である状態です。
肥満は腰痛のリスクを悪化させます。
肥満によって、高血圧のリスクは上昇します。
軽度で2〜4年、中等度で5〜8年、高度で8〜10年以上短くなる可能性もあります。ただし、年齢や生活習慣で異なり、改善で寿命を延ばすことは可能です。
BMIが25.0〜29.9kg/m2の範囲にある状態を指します。日本肥満学会では肥満(1度)に分類され、高血圧や糖尿病などのリスクが徐々に高まります。
BMIが25kg/m2以上で、腹部に脂肪が集中する「リンゴ型体型」の内臓脂肪型肥満を指します。高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスクが高まります。
BMIが25以上で脂肪が多い状態。皮下脂肪型(洋ナシ型)と内臓脂肪型(リンゴ型)があり、女性は皮下脂肪型が多いですが、内臓脂肪型は生活習慣病リスクが高いです。
高カロリー食、運動不足に加え、男性ホルモン低下、ストレス、睡眠不足、遺伝、アルコール摂取などが複合的に関与します。生活習慣の見直しが重要です。
BMI18.5kg/m2未満:低体重、18.5-24.9kg/m2:普通体重、25-29.9kg/m2:肥満1度、30-34.9kg/m2:肥満2度、35-39.9kg/m2:肥満3度、40kg/m2以上:肥満4度。数値が高いほど生活習慣病リスクが高まります。
医師や管理栄養士の指導のもと、カロリー制限、栄養バランスの最適化、食行動の改善などを組み合わせた、健康回復・維持を目的とする食事療法です。
BMIが25.0〜29.9kg/m2の状態を指し、正常体重よりも脂肪が過剰に蓄積されており、高血圧や糖尿病などの健康リスクが高まる状態です。
2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪性肝疾患、一部のがんなど、多くの生活習慣病のリスクを高めます。
肥満は動脈硬化を促進し、高血圧や糖尿病のリスクを高めるため、冠動脈が狭くなり狭心症を引き起こす可能性があります。
はい、関係します。肥満症は気道の炎症を悪化させ、呼吸機能を低下させるため、喘息の症状が悪化し、薬が効きにくくなることがあります。
いいえ、それだけではありません。遺伝的体質やホルモンの影響、ストレス、特定の薬の副作用など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。
必要な栄養素をバランスよく配合した粉末や液体状の食品です。肥満症治療では、1食をこれに置き換えて摂取カロリーを正確に管理します。
1日の生活(食事・通勤・入浴・睡眠など)を時間軸に沿って記録し、グラフとして“見える化”する日記のことです。
はい、高めます。肥満症は慢性的な炎症やホルモンバランスの乱れを引き起こし、大腸がんや乳がん、肝がんなど、さまざまながんの発症リスクを上げます。
「太っているのは本人の自己管理不足や怠慢が原因だ」という社会的な決めつけや否定的なレッテル貼りのことです。差別やいじめにつながります。
はい、重症化しやすいです。肥満症は呼吸機能や免疫力を低下させ、体内の慢性的な炎症がサイトカインストームを助長するためです。
はい、なります。肥満症は心臓に負担をかけ、心臓の構造変化や慢性的な炎症を引き起こし、心房細動などの不整脈の強力な原因となります。
はい、本当です。社会的な偏見・差別は肥満症の治療を困難にします。
肥満パラドックスという現象は見られますが、真実かどうかについてはエビデンスが不足しています。
肥満症の女性が妊娠中にどれくらい体重を増やして良いかは肥満度により異なりますが、合併症の状態により個別に決められます。
肥満症では、尿酸の産生増加と排泄低下に関連する代謝異常が起こり尿酸値が高くなり、痛風を起こしやすくなります。
はい、あります。肥満症は男性ホルモンの低下や精子の質の悪化、睾丸の温度上昇などを引き起こし、男性不妊の大きな原因となります。
短時間に大量の食べ物をむさぼるように食べ、食べた後に強い罪悪感や苦痛を感じることが特徴の摂食障害です。
はい、睡眠時無呼吸症候群以外に、肥満症に関連する呼吸の病気に気管支喘息があります。
自分の行動と体重の変化を結びつけ、食生活や運動習慣を見直すきっかけになるからです。治療のモチベーション維持にもつながります。
はい、深く関連します。うつ病による活動低下や過食が肥満症を招く一方、肥満症への偏見や身体的不調がうつ病を引き起こすこともあります。
筋肉が減り脂肪が増える「サルコペニア肥満」が特徴です。過度な減量は転倒リスクを高めるため、筋肉維持を意識した治療が必要です。
はい、なりやすいです。肥満症は血液の流れを悪くし、血液が固まりやすい状態を作るため、血栓症のリスクを数倍に高めます。
肥満症、特に内臓脂肪の蓄積は、交感神経やホルモンを介して血管を収縮させ、血圧を上げる強力な原因のひとつです。
はい、薬が原因で肥満症になる可能性があります。
はい、座っている時間が長いと肥満症に悪影響があります。
はい、深く関連します。肥満、特に内臓脂肪が増えると胃が圧迫され、胃酸が食道へ逆流しやすくなり、胸やけの主な原因となります。
治療について
食事習慣を改善し、有酸素運動や筋力トレーニングなどの運動を行うことで、体重を減らしましょう。
早食いせずよく噛んで食べ、アルコールは控えましょう。脂質を減らしてたんぱく質を多くとることも大切です。
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。
肥満および肥満とかかわる病気の診療を行う外来のことです。
肥満の度合いにもよりますが、3〜6ヶ月のうちに、現在の体重から3%以上の減量を目指しましょう。
高度肥満患者に行う体重減少手術で、胃の切除やバイパスにより食事量を制限し、肥満関連の健康問題を改善・予防します。適応にはBMIなどの基準があります。
合併症の重症化、集中的な減量治療の必要性、肥満手術を受ける場合などに入院となることがあります。
まずは現在の体重の5〜10%の減量を、3〜6ヶ月かけて目指すのが一般的です。無理のない目標設定が成功の鍵となります。
はい、治療が必要です。脂肪肝は肥満症の代表的な合併症であり、放置すると肝硬変や肝がんに進行する危険があるため、減量が必須です。
はい、大丈夫です。ただし、筋肉が減りすぎないよう、たんぱく質をしっかりとりながら、医師や管理栄養士の指導のもとで慎重に行う必要があります。
さまざまな専門家から多角的なサポートを受けられる点です。医学的管理に加え、食事、運動、心理面の問題にも個別に対応でき、治療効果が高まります。
はい、運動には減量以外にいろいろな健康効果があるため、仕事で体を動かしている場合でも定期的な運動を行った方が良いです。
いいえ、肥満症の食事療法として、糖質制限は推奨されていません。
いいえ、人工甘味料が肥満症の治療に効果的であるというエビデンスはありません。
ゆっくりよく噛んで食べ、肥満症を改善させる日本の行動療法です。
短期的な減量ではなく、健康的な食生活と運動習慣を生涯続けることが基本です。無理のない目標設定と、日々の体重測定も重要です。
内臓脂肪は生活習慣病を引き起こす悪玉の生理活性物質を分泌し、動脈硬化を進行させます。将来の心筋梗塞や脳卒中を防ぐために治療が必要です。
食事内容や状況、感情を記録し「自分の食べ方の癖」を知ることから始めます。具体的な目標設定や環境整備で食習慣を改善する心理療法です。
日本人の食事摂取基準では1日あたり25 g以上の食物繊維を摂ることが推奨されています。
食事療法と組み合わせ、減量効果を高めます。特に内臓脂肪を減らし、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を改善・予防する重要な役割があります。
受診について
症状について
心不全、呼吸不全、重症糖尿病合併症(腎不全、失明、壊疽)、肝硬変・肝がん、関節障害による寝たきり、精神的・社会的な機能喪失などがあります。
はい、深く関係します。肥満症は腎臓に過剰な負担をかけ、糖尿病や高血圧を介して、また直接的に腎臓の機能を悪化させる原因となります。
はい、深く関係があります。肥満、特に首周りの脂肪は、睡眠中に空気の通り道(気道)を狭くし、息が止まる原因になります。
はい、本当です。皮膚がこすれる部分の炎症や感染症、インスリン抵抗性による皮膚の黒ずみなど、さまざまなトラブルが起きやすくなります。
はい、あります。肥満症はホルモンバランスを乱し、排卵障害を引き起こすため、月経不順や無月経、そして不妊の大きな原因となります。
診断について
検査について
薬について
個人差があります。また、肥満の改善には服薬よりも、食事や運動などの生活習慣を見直すことをおすすめします。
BMI 35以上の方のみを対象に保険適用となる治療薬があります。
防風通聖散という漢方が肥満症に効果のある漢方薬として挙げられます。
肥満症に対する主な薬物療法は、食欲を低減させる作用のある薬です。
肥満に対する薬には、食欲を低減させる薬や脂肪を分解する漢方薬などがあります。
セマグルチド(ウゴービⓇ)等のGLP-1受容体作動薬(食欲抑制)、オルリスタット(ゼニカルⓇ/未承認,脂肪吸収阻害)等が処方されます。医師の判断に基づき処方されます。
はい、戻ってしまう可能性が高いです。薬で抑えられていた食欲がもとに戻るため、中止後の生活習慣の維持が非常に重要になります。
絶対にいけません。医師の診断と処方箋なしでの使用は、深刻な副作用のリスクがあり非常に危険です。必ず医療機関に相談してください。
はい、公的な保険を使わない自費診療であれば、肥満症の治療薬を美容目的で使うことができます。ただし、推奨はされません。
「肥満症」の治療薬は、誰にでもすぐに処方されるわけではありません。薬物療法は、あくまで治療の補助的な手段という位置づけです。
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(参考文献)
ユビー病気のQ&Aとは?
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