
監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
暑さによる血管の拡張やホルモンバランスの変化で、体内の水分が血管の外にしみ出しやすくなることが関係していると考えられています。
夏バテとむくみの関係|なぜ暑い時期に足がパンパンになるのか
暑い環境にいると、体は体温を下げようとして皮膚の近くの血管を広げます。これを「末梢血管拡張(まっしょうけっかんかくちょう=手足の血管が広がること)」といいます。血管が広がると、血管の壁にかかる圧力(静水圧)が高まり、血液中の水分が周囲の組織にしみ出しやすくなります。これがむくみの主な原因のひとつとされています。とくに暑さに慣れていない状態では、末梢血管の拡張が一過性に強く起こりやすく、むくみにつながりやすいと報告されています[Saudi Med J. 2019;40(12):1195-1201.]。
むくみを助長するホルモンの変化|アルドステロンと抗利尿ホルモン
暑い環境で汗をかくと、体は水分と塩分を失います。すると、体が「これ以上水分を失わないように」と反応し、アルドステロンというホルモンの分泌を増やします。アルドステロンは腎臓でナトリウム(塩分)の再吸収を促すはたらきがあり、結果として体内に水分をため込みやすくなります。暑熱環境下での運動時に、血漿レニン活性とアルドステロン濃度が有意に上昇し、脱水状態ではさらにその変化が大きくなることが報告されています[Med Sci Sports Exerc. 1997;29(5):661-668.]。また、抗利尿ホルモン(バソプレシン)の活性も亢進し、尿量が減って体内の水分が保持されやすくなることが臨床研究で示されています[Postgrad Med J. 1979;55(648):728-729.]。
「水分を摂っているのにむくむ」理由
水分を摂ること自体は大切ですが、暑い時期には水分だけを大量に摂ると、体液の塩分濃度が薄まってしまうことがあります。すると体は塩分のバランスを保とうとして、余分な水分を組織に押し出す方向にはたらきます。また、長時間座ったまま・立ったままの姿勢が続くと、重力の影響で下半身に水分がたまりやすくなり、足のむくみが目立つようになります。暑さで体温調節のために皮膚血流が増加すると、内臓や筋肉への血流が相対的に減少し、下半身からの血液の戻り(静脈還流)が弱まることもむくみの一因と考えられています[Eur J Appl Physiol. 2020;120(12):2813-2834.]。
夏バテのむくみ対策|水分と塩分のバランスが大切
むくみの予防・改善には、水分だけでなく適度な塩分(ナトリウム)やカリウムなどのミネラルを一緒に摂ることが推奨されています。経口補水液やスポーツドリンクを活用することで、汗で失われた電解質(ナトリウムやカリウムなどのミネラル)を補う方法が一般的です。また、適度に体を動かして下半身の筋肉を使い、足を高くする時間をつくることで静脈還流を助け、むくみの軽減につながる可能性があります。なお、冷たい飲み物を大量に摂ると胃腸の動きに影響することが報告されており、常温〜やや冷たい程度の飲み物を少しずつ摂ることが望ましいとされています。
夏バテのむくみ対策のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、水分と塩分のバランスを意識しながらこまめに摂ることと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
夏のむくみは多くの場合一過性で、涼しい環境で休息をとれば数日で改善することがほとんどです。毎日の水分・ミネラル補給と適度な運動を続けることが、むくみを和らげる第一歩です。
ただし、むくみが何日も引かない場合、片足だけが急に腫れた場合、息苦しさや胸の痛みを伴う場合は、心臓・腎臓・血管の病気が隠れている可能性があります。このような症状がある場合は、医療機関への受診をご検討ください。
まとめ:夏のむくみの原因と対策のポイント
- 暑さと血管拡張:暑い環境では体温を下げるために末梢血管が広がり、血管から水分がしみ出しやすくなることがむくみの主な原因と考えられています
- ホルモンの変化:アルドステロンや抗利尿ホルモンの分泌が増え、体内に水分をため込みやすくなることが報告されています
- 水分だけの補給に注意:水分だけを大量に摂ると体液バランスが崩れ、かえってむくみが悪化する可能性があります。ミネラルの同時補給が推奨されます
- 適度に体を動かす:長時間同じ姿勢を避け、ふくらはぎの筋肉を動かすことで静脈還流を促す効果が期待されます
- 受診の目安:むくみが長引く場合や、片足だけの急な腫れ・息苦しさを伴う場合は、医療機関への受診をご検討ください
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