
熱疲労と熱射病の違いは?救急車を呼ぶべき判断ラインを教えてください。
監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
熱疲労は脱水が進んだ中等症の状態、熱射病は体温調節が追いつかなくなった重症の状態で、意識障害の有無が分かれ目です。
「熱疲労」と「熱射病」はどちらも熱中症の一種ですが、重症度と対処法が大きく異なります。判断を誤ると命に関わることもあるため、違いと対応の分かれ目を知っておくことが大切です。
熱疲労と熱射病の違い|重症度と体の状態
熱疲労(日本の分類ではII度にあたる状態)は、大量の発汗によって水分とミネラルの喪失が進み、頭痛・吐き気・強いだるさ・集中力の低下などが現れる状態です。体温は38〜40℃に上昇することがありますが、意識ははっきりしており、涼しい場所での休息と水分・ミネラルの補給で改善が期待できます。
一方、熱射病(III度〜IV度)は、体の熱を外に逃がすしくみが完全に追いつかなくなり、深部体温が40℃を超える状態です。最大の特徴は意識障害(受け答えがおかしい・ぼんやりする・けいれんなど)で、内臓の働きに深刻な影響が及ぶ可能性があります[N Engl J Med. 2019;380(25):2449-59.]。2024年に改訂された診療ガイドラインでは、従来のIII度が、さらに「III度」と「IV度(最重症)」に分けられました。
救急車を呼ぶべき判断ライン|「意識」と「水分摂取」がカギ
判断の分かれ目は「意識の状態」と「自力で水分が摂れるかどうか」です。
- 現場で対応可能(I度): めまい・立ちくらみ・こむら返り → 涼しい場所で休息+経口補水液
- 医療機関への受診を推奨(II度・熱疲労): 頭痛・吐き気・体のだるさ → 30分休息しても改善しない場合
- すぐに救急車を(III度〜IV度・熱射病): 意識がもうろう・受け答えがおかしい・自力で水が飲めない・体温40℃以上
迷った場合は「呼ぶ」ことが推奨されています。特に高齢者・持病のある方は、II度の段階でも早めに医療機関への受診をご検討ください。
応急処置の違い|熱疲労と熱射病で優先すべきこと
熱疲労の段階では、まず涼しい場所(日陰やエアコンのある室内)に移動し、衣服をゆるめて体を冷やすことが基本です。意識がはっきりしていれば、経口補水液を少量ずつ飲むことが推奨されています。
熱射病が疑われる場合は、救急車を待つ間に「体を冷やすこと」が最優先です。首・脇の下・足の付け根(太い血管が通っている場所)に冷たいタオルや保冷剤を当てることが効果的とされています[Wilderness Environ Med. 2024;35(1_suppl):112S-127S.]。意識が低下している場合に無理に水を飲ませると、誤嚥(ごえん=水分が気管に入ること)のリスクがあるため避けてください。
経口補水液の備えと普段からのミネラル補給|あくまで補助的な手段として
熱疲労の段階では、経口補水液が水分・ミネラルのすみやかな補給に有用とされています。経口補水液はスポーツドリンクよりもナトリウム濃度が高く、脱水が進んだ場面での水分吸収が期待できます。普段の水分補給にはスポーツドリンクやミネラル入り麦茶が手軽です。
ただし、経口補水液はあくまで補助的な手段であり、II度以上の症状が疑われる場合は速やかに医療機関への受診をご検討ください。なお、効果には個人差があります。
熱疲労・熱射病の予防のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点
特に重要とされるのは、「体の異変に早く気づくこと」と「いつでも水分を摂れる状態を保つこと」と考えられています。

ここだけは伝えたいメッセージ
熱疲労は、適切に対処すれば多くの場合、回復が見込める状態です。「少し休めば大丈夫」と思ったら、まず涼しい場所で経口補水液を飲み、30分経っても改善しなければ医療機関への受診をご検討ください。
熱射病は命に関わる緊急事態です。「意識がもうろうとしている」「受け答えがおかしい」「自力で水が飲めない」場合は、ためらわずに119番への通報をご検討ください。救急車を待つ間は、とにかく体を冷やすことが最も大切な処置です。
まとめ:熱疲労と熱射病の違いを知って適切な対応を

編集・監修基準について
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(参考文献)
Epstein Y, Yanovich R. N Engl J Med. 2019;380:2449-59.
Garcia CK, Renteria LI, Leite-Santos G, et al. BMJ Med. 2022;1:e000239.
Eifling KP, Gaudio FG, Dumke C, et al. Wilderness Environ Med. 2024;35:112S-127S.
日本救急医学会.“熱中症診療ガイドライン 2024”..https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf,(参照 2026-05-29).


