

監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
衣類や温かい飲み物による体温調節に加え、ヘスペリジンを含む温活食品の活用も選択肢のひとつです。
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オフィスの冷房が寒すぎる問題|女性に多い不快感の実態
「夏なのにオフィスでは寒くて、カーディガンが手放せない」という方は少なくありません。特に女性では、職場の冷房を寒いと感じることが多いことが報告されています。
米国のオフィスビルを対象とした大規模な研究では、約38,000件の回答を分析したところ、女性は男性より室温に不満を感じやすく、不快と感じる場合には「暑すぎる」より「寒すぎる」という回答が多いことが示されました[Parkinson T, et al. Sci Rep. 2021;11:23684.]。
ただし、「女性だから必ず寒がり」というわけではありません。寒さの感じ方には、体格や筋肉量、体脂肪、服装、活動量、年齢などさまざまな要因が関係します。
そのため、オフィス全体を一律の温度にするだけでは、全員が快適に過ごすことは難しいのです。環境省も、冷房時の室温は一律に決めるのではなく、外気温や湿度、建物の状況、一人ひとりの体調などを考慮して調整することが大切としています。
冷えすぎたオフィスが体に与える影響|血圧・睡眠の質への懸念
寒い環境にいると、体は熱を逃がさないように皮膚に近い血管を細くします。その結果、手足への血流が減り、指先や足先が冷たく感じやすくなります。
また、寒さによって血管が収縮すると、血圧が上がることがあります。特に高齢者や高血圧、心臓病などがある方では、強い寒さによる血圧の変化に注意が必要です。
2014~2022年に発表された研究20件をまとめたシステマティックレビューでは、18℃未満の寒い室内環境と、血圧上昇などの循環器への影響、呼吸器症状、睡眠、身体機能などとの関連が検討され、20研究中17研究で、なんらかの好ましくない健康影響との関連が報告されています[Janssen H, et al. Public Health. 2023;224:185-194.]。
ただし、この研究の多くは冬の寒い「住宅」を対象としたもので、夏のオフィス冷房について同じ程度の健康リスクがあると証明されたわけではありません。冷房で少し寒いからといって、すぐに健康を害するという意味ではない点には注意が必要です。
オフィスの冷房冷え対策|衣類と行動でできる工夫
冷房の温度を自分だけでは変えられない場合は、「自分の周りの温度を調節する」ことが現実的です。
- カーディガンなど脱ぎ着しやすい上着を用意する
- ひざ掛けやストールを利用する
- 冷風が直接当たる場合は、可能なら席や風向きを調整する
- 足元が冷える場合は靴下などで保温する
- 1時間に一度程度は立ち上がり、歩いたりストレッチしたりする
- 冷たい飲み物ばかりではなく、温かい飲み物も取り入れる
特にデスクワークでは、長時間座ったままになりがちです。筋肉を動かすとエネルギーが使われ、熱も作られます。休憩時に立って歩く、階段を利用する、ふくらはぎを動かすといった小さな運動を取り入れることもおすすめです。
なお、「首・手首・足首を温めれば医学的に特別な効果がある」とまでは証明されていません。首元や足元など、実際に寒いと感じる部分を無理なく保温する、と考えるのがよいでしょう。
冷房冷えと温活食品|食事で「熱をつくる」ための工夫
「これを食べれば冷え症が治る」という特別な食品は、現時点ではありません。そのため医師の立場からは、特定のサプリメントや機能性表示食品に頼るより、まず毎日の食事を整えることをおすすめします。
注目したいのが「食事誘発性熱産生」です。これは、食べたものを消化・吸収するときにエネルギーが使われ、その一部が熱として発生する仕組みです。
特にたんぱく質は、炭水化物や脂質と比べて食事誘発性熱産生が大きい栄養素です。2024年に52研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析でも、たんぱく質の多い食事は少ない食事と比べて、食後の熱産生を高めることが示されています[Guarneiri LL, et al. Adv Nutr. 2024;15:100332.]。
そのため、朝食や昼食を抜いたり、サラダだけで済ませたりするより、魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を含む食事をきちんと摂ることが大切です。例えば「温かいみそ汁+豆腐」「スープ+鶏肉や卵」などは、職場でも取り入れやすいでしょう。
「温活食品」としてよく知られるショウガにも、体を温かく感じさせる可能性があります。冷えを感じやすい女性を対象とした小規模な比較試験では、ショウガエキスを含む飲料を飲んだあと、比較用飲料より手の皮膚温が長く保たれました[Sugimoto K, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2018;2018:3207623.]。
ただし、対象者は6人と非常に少なく、「ショウガを食べれば冷え症が改善する」と断定できるほどのエビデンスではありません。ショウガ入りのスープやみそ汁、温かいしょうが湯などを、日常の食事の楽しみとして取り入れる程度がよいでしょう。
冷房冷え対策を続けるうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

大切なのは、特定の「温活食品」だけに頼ることではありません。「冷やしすぎない環境」「衣類による調節」「適度な運動」「バランスのよい食事」を組み合わせることが基本です。
ここだけは伝えたいメッセージ
オフィスの冷房を寒いと感じることは珍しくなく、特に女性では室温への不満が多いことが大規模研究でも示されています。
対策の中心は、カーディガンやひざ掛けなどで体を冷気から守り、ときどき立って体を動かすことです。食事では、特別なサプリメントに頼るより、温かい汁物や飲み物を取り入れ、魚・肉・卵・大豆製品などのたんぱく質を不足させないことをおすすめします。
ショウガなどの食品も、楽しみながら取り入れて構いませんが、「冷えを治療する食品」と考える必要はありません。
一方、周囲の人が寒くない環境でも極端に寒く感じる場合や、冷えが一年中続く場合、強いだるさ、息切れ、動悸、むくみ、体重の大きな変化などを伴う場合には、貧血や甲状腺の病気などが隠れていることもあります。気になる症状が続くときは医療機関に相談しましょう。
まとめ:オフィスの冷房冷え対策のポイント
- 冷房の感じ方には個人差がある: 女性ではオフィスを寒いと感じる割合が高いことが報告されている
- 寒さで血管が収縮する: 手足への血流が減り、冷たさを感じやすくなる。寒い環境では血圧が上がることもある
- まず衣類と環境を工夫する: 上着、ひざ掛けなどを活用し、可能なら冷風が直接当たらないようにする
- 座りっぱなしを避ける: ときどき立って歩いたりストレッチしたりして、筋肉を動かす
- 食事は「温かさ+たんぱく質」を意識する: 温かい汁物などを利用し、魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などを適度に摂る
- ショウガは補助的に: 皮膚温を保つ可能性を示した研究はあるものの、エビデンスはまだ限定的
- 特定の「温活食品」に頼りすぎない: 冷房冷え対策の基本は、環境、衣類、運動、バランスのよい食事を組み合わせること
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(参考文献)
Parkinson T, Schiavon S, de Dear R, Brager G. Overcooling of offices reveals gender inequity in thermal comfort. Sci Rep. 2021;11:23684. doi:10.1038/s41598-021-03121-1.
Janssen H, Ford K, Gascoyne B, et al. Cold indoor temperatures and their association with health and well-being: a systematic literature review. Public Health. 2023;224:185-194. doi:10.1016/j.puhe.2023.09.006.
World Health Organization. WHO Housing and Health Guidelines. Geneva: WHO; 2018.
Guarneiri LL, Adams CG, Garcia-Jackson B, et al. Effects of Varying Protein Amounts and Types on Diet-Induced Thermogenesis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Adv Nutr. 2024;15(12):100332. doi:10.1016/j.advnut.2024.100332.
Sugimoto K, Takeuchi H, Nakagawa K, Matsuoka Y. Hyperthermic Effect of Ginger (Zingiber officinale) Extract-Containing Beverage on Peripheral Skin Surface Temperature in Women. Evid Based Complement Alternat Med. 2018;2018:3207623. doi:10.1155/2018/3207623.
環境省. 令和3年度 クールビズについて. 2021. https://www.env.go.jp/press/109505.html,(参照 2026-08-24).






