

監修者Ubie株式会社 産婦人科
症状が軽い方は睡眠・食事・運動などの生活習慣を整えるセルフケアが中心となり、精神的なつらさが強い方は自己判断せず婦人科への相談をご検討ください。
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PMSがひどい人とそうでない人で対処法はどう違う?
PMS(月経前症候群)への対処は、症状の重さによって考え方が変わります。症状が軽い場合は、症状を記録して自分のパターンを知ることや、睡眠・食事・運動などの生活習慣を整えることが中心になります。
一方で、気分の落ち込みやいらだちが強く、仕事や家事、学校生活に支障が出るほどつらい場合は、低用量ピルや気持ちの症状に効く飲み薬など、効果が確かめられた治療という選択肢があります。我慢せず、婦人科などへの相談をご検討ください。
漢方薬やサプリメントを使いたい場合も、自己判断せず医師や薬剤師にご相談ください。なお、症状が出た時期と内容を月経2回分(2周期分)記録しておくと、自分の備えになるうえ、受診したときの診断にも役立ちます。
生活習慣の見直しがPMS対策の土台
PMS(月経前症候群)は、月経前の3〜10日ごろに続く心や体の不調で、月経が始まると軽くなったり消えたりするものです。軽い症状も含めると80〜90%の女性がなんらかの症状を経験し、PMSと診断されるのは20〜30%とされています。
まず土台となるのが、次の2つです。
1. 症状を記録する
いつ、どんな症状が出たかを記録すると、
- 自分の不調のパターンがわかり、前もって備えられる
- 「原因のわからない不調ではない」とわかり、安心につながる
という効果が期待できます。専用の用紙でなくてもよく、月経管理アプリや簡単なメモ書きでもかまいません。
2. 生活習慣を整える
- 規則正しい睡眠
- バランスのよい食事
- 適度な運動
- ストレスをためない工夫、リラックスする習慣
- お酒を控える
- たばこを吸わない
これらの生活習慣の指導については、必ずしもすべてがはっきりした医学的根拠・効果が示されているわけではありませんが、体への負担が少なく取り入れやすいため、まず試したい工夫といえます。
運動や栄養素の研究でわかっていること
運動
ウォーキングなどの軽い運動、筋力トレーニング、ヨガ、ピラティスなどでPMSの症状が改善したという研究があります。ただし研究の質には限りがあり、どの運動をどれくらいやればよいかは、はっきりしていません。
複数の研究をまとめて分析した報告でも、PMS全体の症状がやわらいだとされていますが、対象となった研究の87%は「結果がかたよりやすい(信頼性が低い)」と判定されていました。
目安として、大人にすすめられている運動量は次のとおりです。
- 歩行、またはそれ以上の強さの活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)
- 息が弾んで汗をかく程度の運動を週60分以上、または筋トレを週2〜3日(合計週60分以上)
いきなり目指す必要はありません。無理なく続けられるものから始めましょう。
食事
次のような工夫が提案されています。
- 1回の量を少なくして、こまめに食べる
- 果物・野菜・全粒穀物など(複合炭水化物)を取り入れる
- カルシウムが豊富な食品を取り入れる
- 砂糖・塩分・脂肪の多い食べ物を控える
- コーヒーなどのカフェインを控えめにする
しかし、これらの多くは、きちんと調べられた研究が少ないのが現状です。
一方で、次の2つは報告があります。
- カルシウムやビタミンDを多く含む食事をとる人は、PMSになりにくい可能性がある
- 黄体期(月経前の時期)に複合炭水化物を増やすと、脳内のセロトニンという物質が増えて、気持ちの症状と食欲の症状が改善した
栄養素(サプリメントなど)
31件の研究をまとめた報告で、次の3つがPMSの心のつらさ(イライラや気分の落ち込みなど)をやわらげたとされ、指針でも使用が挙げられています。

ただし注意点があります。
- 31件のうち、信頼性が高いと判定されたのは1件だけでした
- ビタミンB6と亜鉛の量は、普段の食事でとる量より多めです
サプリメントを使う場合は、自己判断で量を増やさず、医師や薬剤師にご相談ください。
漢方やサプリを取り入れるときに知っておきたいこと
漢方薬
PMSの治療で最初に漢方薬が選ばれることがあります。
よく使われるのは次のようなものです。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 抑肝散(よくかんさん)/抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
など。
ただし、これらが実際にどれくらい効くのかを調べる研究は十分に行われていません。
また、日本では「PMS」「PMDD(月経前不快気分障害)」という病名に直接使える漢方薬はなく、「血の道症(ちのみちしょう:月経や出産などに伴う心と体の不調)」や「神経症」といった別の病名での処方になります。
副作用にも注意が必要です。
- 多くの漢方薬に含まれる甘草(かんぞう)により、偽アルドステロン症(むくみ、血圧の上昇、血液中のカリウムが減る)が起こることがあります
- 加味逍遙散に含まれる山梔子(さんしし)は、高齢の方が長く飲み続けると腸の血管が硬くなる病気との関連が指摘されており、腹痛や下痢に注意が必要です
自己判断で飲み続けず、医師や薬剤師にご相談ください。
チェストベリー
西洋ハーブの一種で、ハーブのなかでは最も効果が確かめられているものです。
ただし、使用が強く推奨されるほど質の高い研究はまだないため、使用にあたっては医師や薬剤師にご相談ください。
サプリメントを使うときの注意
- サフラン、クルクミン、ローヤルゼリーなども報告はありますが、いずれも少人数の研究にとどまります
- セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、抗うつ薬や低用量ピルなど多くの薬の効き目に影響します。薬を飲んでいる方は必ず医師・薬剤師にご相談ください
そのほか
鍼(はり)やツボ押しも、ある程度効く可能性が報告されています。
副作用がほとんどないため、選択肢のひとつとして考えられます。
つらさが強いときは、対処法そのものが変わります
生活に支障が出るほどつらい場合、セルフケアだけで乗り切ろうとせず、医療機関での治療を考えましょう。
効果が確かめられている方法があります。
- 低用量ピル(OC・LEP):排卵を抑えてホルモンの変動をおさえます。PMS全体の症状をやわらげる効果が期待できます
- SSRI(気持ちの症状に効く飲み薬):欧米では中等症〜重症のPMS・PMDDの第一選択です。うつ病の治療と違い飲んだその日から効き始めるため、月経前の時期だけ飲む方法も選べます
- 考え方や行動のくせを整理する心理療法(認知行動療法):不安や気分の落ち込みに効果があり、副作用がほとんどありません。薬と同じくらいの効果があり、やめたあとも効果が続きやすいと報告されています
- 精神科・心療内科との連携:気分の落ち込みが重い場合や、もともとある心の病気が月経前に悪化している場合には、専門医への相談を検討します
なお、これらの多くは日本では「PMS」という病名では健康保険が使えない点にご注意ください。詳しくは受診時にご確認ください。
ここだけは伝えたいメッセージ
PMSは多くの女性が経験するもので、症状が軽い場合は、記録をつけたり生活習慣を少し工夫したりするだけで楽になることも期待できます。できることから少しずつ取り入れてみてください。
一方で、仕事や生活に支障が出るほどつらい場合は、セルフケアだけで我慢する必要はありません。
効果が確かめられた治療がありますので、婦人科などへの相談をご検討ください。
まとめ:PMSは症状の重さに合わせて対処法を選ぶ
- 軽い症状はセルフケアが中心:記録をつけることと生活習慣を整えることが土台です(ただし生活習慣の効果は証明されていません)
- 運動でつらさがやわらぐ可能性:どの運動をどれだけ行えばよいかは、はっきりしていません
- 注目される栄養素:カルシウム(食事からでも可)・ビタミンB6・亜鉛。量には注意が必要です
- 漢方は医師に相談を:効果の検証は十分ではなく、PMSという病名に直接使える漢方薬もありません。甘草による副作用にも注意が必要です
- つらさが強いときは受診を:低用量ピル、SSRI、認知行動療法など、効果が確かめられた治療があります
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(参考文献)
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