

監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
脳と腸は神経やホルモンでつながり、ストレスは腸の動きや痛みの感じ方に影響します。心身両面のケアが大切です。
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脳腸相関とは|脳と腸が情報をやりとりする仕組み
「大事な試験の前にお腹が痛くなる」「緊張するとトイレに行きたくなる」。こうした経験には、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関(のうちょうそうかん)」が関わっています。
腸の壁には、食べ物を先へ送る動きや消化液の分泌を調整する独自の神経のネットワークがあります。これが、腸が「第二の脳」と呼ばれる理由です。ただし、腸が脳と同じように考えたり判断したりするわけではありません。
脳と腸の連絡には、内臓の働きを自動調節する「自律神経」が関わります。脳と内臓を結ぶ迷走神経や、脊髄を通る神経などが情報を伝え、さらにホルモンや、体を守る免疫の仕組みも連絡役を担います。このネットワークは、ストレスがあるときだけでなく、健康なときにも働いています。
ストレスでお腹が不調になる理由|動きと感覚が変化する
脳が不安や緊張を感じると、体は負担に対応するために自律神経の働きを変えます。その影響が腸に伝わると、内容物を運ぶ動きや水分の分泌・吸収が変化し、便が進みすぎたり、反対に進みにくくなったりします。これが、下痢や便秘につながる一因です。
同時に、脳の「視床下部」から「下垂体」、さらに腎臓の上にある「副腎」へと指令が伝わり、コルチゾールなどのホルモンが分泌されます。この連絡経路を「HPA軸」と呼びます。ストレスへの対応に必要な仕組みですが、反応が強すぎたり長引いたりすると、腸の働きにも影響します。
ただし、不調の原因をコルチゾールだけで説明することはできません。 指令の出発点に関わるCRHというホルモンや自律神経、免疫細胞などが複雑に関係しています。また、ストレスによって腸や脳が刺激に敏感になると、通常なら気にならない程度のガスや腸の動きでも、強い張りや痛みとして感じることがあります。これを「内臓知覚過敏」といいます。
腸の粘膜には、不要な物質が体内に入り込みにくくするバリアの働きもあります。健康な人を対象にした実験では、心理的ストレスに強く反応した一部の人で、物質が腸の壁を通過しやすくなる変化が確認されています。ただし、ストレスがあれば誰にでもバリアの異常が起こる、という意味ではありません。
腸から脳にも影響する|不安と腹痛の悪循環
情報の流れは「脳から腸へ」だけではありません。腸の張りや痛みなどの情報も脳に届きます。「また電車の中でお腹が痛くなったらどうしよう」という不安が強まると、さらに腸の動きや痛みの感じ方に影響し、症状と不安が互いを強める悪循環につながります。
この仕組みが関わる代表的な病気が「過敏性腸症候群(IBS)」です。腹痛とともに下痢や便秘などの便通の変化を繰り返し、検査では症状を説明する明らかな病変が見つからないことが特徴です。感染性胃腸炎のあとに発症する場合もあり、ストレスだけが原因ではありません。
最近は、腸内細菌と脳の関係も注目されています。細菌が作る物質などが、神経や免疫を介した情報伝達に関わると考えられています。ただし、人でどの細菌がどの程度、気分や症状の原因になるかは研究途上です。「腸内細菌を整えれば不安も治る」とは言い切れません。
日常生活の工夫|腸と心の両方をいたわる
対策の基本は、ストレスを完全になくそうとすることより、負担を減らしながら、自分の症状に合った生活に整えることです。
① 食事と睡眠のリズムを整える
食事はできるだけ決まった時間に取り、慌てずに食べましょう。十分な睡眠時間を確保し、無理のない散歩などを続けることも大切です。IBSの診療ガイドラインでも、食生活の見直しや定期的な運動がすすめられています。
② 「腸によい食品」も体調に合わせる
発酵食品や食物繊維を増やせば、必ずよくなるわけではありません。食品や量によっては、ガスや下痢が増えることもあります。食物繊維では、水に溶けるタイプにIBSの症状を改善する根拠がありますが、急に増やさず少量から試しましょう。ヨーグルトや乳酸菌製品の効果も、菌の種類や人によって異なります。食事と症状を簡単に記録し、合わない食品を見つける方法が役立ちます。自己判断で多くの食品を長期間除くことは避けましょう。
③ 緊張をほぐし、必要なら治療につなげる
ゆっくり呼吸する、短い休憩を取る、周囲に負担を相談するなど、続けやすい方法を選びましょう。IBSでは、症状への不安や行動を整理する「認知行動療法」などの心理療法も治療の選択肢です。これは症状を気のせいと扱うものではなく、脳と腸のやりとりに働きかける治療です。
症状が続くときは|「ストレスのせい」と決めつけない
ストレスによる腹痛や便通の変化は、気持ちの弱さではなく、体の反応として起こります。一方で、似た症状は腸の炎症など別の病気でも生じます。症状が続く、学校や仕事に支障が出る場合は、まず内科・消化器内科に相談してください。
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(参考文献)
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