S状結腸がんステージ4、肝・リンパ転移の余命見立てについて教えてください。
50代・女性のご相談
この度は、私たちを信頼してご相談いただき、心から感謝申し上げます。以下に、ご質問いただきました答えとして、統計的な情報とともに最近の遺伝子異常に対する治療の状況を追加し、回答とさせていただきます。
「S状結腸がんステージ4で、多発性の肝臓やリンパへの転移があり、手術が難しいため抗がん剤治療を続けており34回受けました。告知を受けてから約一年半が経過し、幸いにも治療の効果で進行は止まっているとのことです」
上記の診断、ステージについて承知いたしました。抗がん剤治療を34回終了されて、一年半ぐらい経過されているとのことですので、2週ごとの治療を約1年半受けてこられたということかと存じます。
手術不能で他臓器転移のある大腸がんの最初の治療(一次治療)は、フッ化ピリミジンというグループの薬剤(5-FU, カペシタビン、S-1)とオキサリプラチンもしくはイリノテカンという薬剤の2剤を基本として、血管新生阻害薬(抗体薬)もしくは抗EGFR抗体薬との併用が標準治療となります。抗がん剤として治療に使用されている薬剤名の記載が見当たりませんでしたが、おそらくこの一次治療(もしくは二次治療まで)をお受けになっておられると推測いたします。一次治療でオキサリプラチンを使用した場合、二次治療はイリノテカンを使用し、逆に一次治療でイリノテカンを使用した場合、二次治療ではオキサリプラチンを使用することになっています。それぞれFOLFOX療法とFOLFIRI療法と呼ばれており、すでにご存知かもしれません。
「ときどき、日常生活に支障が出るほどの腹痛があり、10段階中6の痛みです」
ご相談者様は、切除不能のS状結腸がんと診断され、病変が残存している状態です。現在お受けになっている薬物治療の効果が乏しくなった場合、同部位の病変が増大し、腸閉塞や穿孔・穿通(腸に穴が開いたり、他の臓器とつながったりする)をきたす可能性が危惧されます。それを除外するためにも腹痛が持続する場合は、ご担当の医師にお早めにご相談されることをおすすめいたします。
「特に知りたいのは、余命の見立てについてです」
上記の二次治療までの治療終了後も遺伝子異常の有無に関わらず、2剤の薬剤が選択肢としてあります。これらの薬剤を適切に使用することによって、最近の大腸がんの薬物療法における生存期間中央値(およそ生存期間の平均値とお考えください)は30ヶ月を越えるまで延長したと言われています。薬物療法を実施しない場合は約 6〜8カ月と報告されていますので、この分野では大きな進歩があったと考えられています(大腸がんガイドライン2024, p36. 5.薬物療法 2) 切除不能進行・再発大腸がん)。国立がん研究センターのがん統計で各がんのステージ別の生存率を閲覧することも可能です。2015年の大腸がんステージ4の5年生存率は17.2%(5年以上生存されている方の割合が17.2%)となっています。
「遺伝子異常についてはわかりません」
遺伝子異常については、一度ご担当の医師にお尋ねされて確認しておかれるとよいかと思います。次のような遺伝子異常がおありの場合はさらに治療薬があります。比較的新しい治療になりますので、具体的なデータの記載はガイドライン等にはございませんが、遺伝子異常検査の結果に応じて適切な治療をお受けになると、上記の余命予測をさらに延長する可能性がございます。
- RAS遺伝子
- BRAF遺伝子
- HER2遺伝子
- MSI(マイクロサテライト不安定性)
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