乳がんステージ1、HER2陽性、ホルモン陰性です。フェスゴの適応と手術方法について相談させてください。
60代・女性のご相談
このたびは私たちを信頼してご相談いただき、本当にありがとうございます。ご相談者様のご質問や不安について、できるだけわかりやすくお答えしたいと思います。
【フェスゴについてのご質問】
「ホルモン陰性であるため、フェスゴが適応しない、または効果がない可能性があるのか疑問です」との点について
まず、フェスゴという薬についてお話ししますね。これは皮下注射する薬剤で、次の3つの薬から構成されています。
- トラスツズマブ
- ペルツズマブ
- ボルヒアルロニダーゼ アルファ
1、2はHER2という特定のタンパク質を標的とする抗体薬(もともとはそれぞれ静注する薬剤)、3は皮下投与された薬剤の吸収を助ける成分ですので、フェスゴもHER2を標的とした薬です。ホルモン陰性であることと、フェスゴを使用しないこととは関係はありません。
アメリカで「1cm未満のステージ1のHER2陽性乳がんにフェスゴを使わない理由」について
この理由は、病変が小さいため薬の効果があまり期待できないこと、そして、フェスゴを使うと過剰な治療になる(副作用などが懸念されます)おそれがあるからです。
ご相談者様はステージ1の乳がんではございますが、1.9cmという大きさであり、術前治療で病変を縮小させて、乳房部分切除を目指しておられると考えられます。その際、HER2治療としては病変の大きさは2cmに近いため、トラスツズマブにペルツズマブを加えたほうがよいと判断されていると考えられます。さらには(静脈投与より)負担の少ない皮下注射であるフェスゴが承認済みであるので、フェスゴが使用される予定になっていると思われます。
【HER2陽性の不転移確率について】
「HER2陽性の不転移確率が77%程度との情報もあり、不安を感じています」との点について
私たちが確認したところ、欧米の複数の医学論文をまとめると、HER2陽性乳がんの不転移確率(転移しない確率)は約45~74%とされています。ただし、ステージによって異なるため、ご相談者様の状況にそのまま当てはまるわけではありません。ステージ1のHER2陽性乳がんの場合、5年後の無病生存率は95%以上とされていますので、あまり心配しすぎないでくださいね。
【手術の選択について】
部分切除と全摘について悩まれているとのことですが、どちらの手術を選んでも再発や生存率に大きな差はないとされています。そのため最近では、最近は乳房温存療法の選択が約6割まで増えていることが知られております。最終的には、主治医の先生とよく相談して決めるのがよいと思います。
少しでもお役に立てれば幸いです。何かほかにご質問があれば、どうぞ遠慮なくお知らせくださいね。不安が少しでも和らぐことを願っています。
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