乳がん
「乳がん」とは、乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発症します。進行すると、がん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れに乗って転移します。乳がんは男性にも発生することがあり、女性同様に乳管より発症します。治療は基本的に女性同様の治療となり、予後も同様です。女性の場合は、婦人科受診、男性は乳腺外来に受診しましょう。
成育医療研究センター 産婦人科 共同研究員
藤井 達也 監修
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乳房の組織にできるがんです。
乳がん患者さんの約100~150人に1人が男性とされています。
乳がんの家族歴がある方は特に注意が必要です。その他にも、飲酒や喫煙をしている方や、出産歴が無い方も乳がんになりやすい傾向があります。
初産が早く授乳歴や妊娠出産歴が多いほど、乳がんにはなりにくいと考えられます。
ステージ(病期)ごとに異なります。ステージが早期であるほど生存率は高い傾向にあります。
乳がんは、乳腺にできる悪性のしこりで、にきびは皮膚の慢性炎症性疾患です。
一般的にホルモン療法や抗HER2(ハーツー)療法の効果が期待できず、進行スピードが速い場合があります。
トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン療法やHER2(ハーツー)に対する治療が効果を示しにくい特徴があります。完治の可能性は個々のケースによりますが、適切な治療を行うことで予後が良好となる可能性もあります。
乳腺炎は感染などにより起こる乳房の炎症です。一方、乳がんは主に乳腺にできるがん(悪性腫瘍)です。
思春期以降の方でも、乳がんになる可能性はあります。
豆乳の飲みすぎやイソフラボンの過剰摂取で、乳がんの発症リスクが高くなることは確認されていません。
親、子、姉妹に乳がん患者さんがいる女性は、いない女性に比べて2倍以上乳がんになりやすいとされてます。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群の生存率について、現時点では明確なデータはありません。
HER2(ハーツー)たんぱく質が過剰なタイプの乳がんで進行は早いものの、薬の開発で予後が大幅に改善されています。
患者さんが受けている治療等によりますので、主治医にまずはご相談ください。
乳がんの方が避けるべき食物は特にありませんが、治療に関連した制限もあるため主治医にご相談ください。
アルコールの摂取により乳がん発症リスクが高くなると考えられています。肥満、糖尿病にも注意が必要です。
現時点では、乳製品を摂ることで乳がんになりやすいことは確認されていません。
花咲乳がんは医学用語ではなく明確な定義はありませんが、局所進行乳がんを意味する場合が多いです。
「乳腺線維腺腫」は代表的な良性腫瘍であり、乳がんの発症と関係がありません。
喫煙・飲酒を控え、閉経後の肥満を避けるため体重管理を行い、適度な運動をすると良いと考えられています。
乳がんのステージごとの完治率や余命は、ステージや転移の有無によって大きく異なります。以下にステージごとの5年生存率を示します。
「トリプルネガティブ乳がん」と呼ばれるサブタイプが該当すると考えられます。
非浸潤がん、微小浸潤がん、浸潤がん、Paget病です。悪性度は細胞の異常度で判断されます。
繊維腺腫、乳腺症、葉状腫瘍などが考えられます。
ホルモン受容体陽性、HER2陽性、トリプルネガティブが主要なもので、一般的に1週間~1ヶ月程度です。
10年後再発率は、乳房温存術では10%, 腋窩リンパ節郭清を伴う乳房切除術では3.1%です(術後放射線治療あり)。
浸潤性乳管がんはがん細胞が広がり非浸潤性乳管がんは乳管内にとどまります。進行速度とは関係ありません。
エストロゲンを栄養として増殖する種類の乳がんがあり、ホルモン療法の効果が期待できます。
良性の葉状腫瘍の一部は悪性であったり、良性だが再発時に悪性となる場合があります。
乳房内の再発では完治を目指した治療を行います。遠隔転移では進行を抑え、がんと共存する治療を行います
日頃から自分の乳房を意識する生活習慣「ブレスト・アウェアネス」を身につけることが大切です。
自身の乳房の状態に関心を持ち、意識して生活することです。乳がんの早期発見に繋がる重要な生活習慣です。
気になる症状があれば主治医に相談してください。ただし、神経質になりすぎないようすることも大切です。
生活習慣としては、肥満を避けて運動を行う方が再発リスクが低いとされています。
あせらずに落ち着いて、まず医師の説明をよく聞きましょう。今後の検査や治療方針を話し合うことが大切です
右より左の乳房で乳がんの発生割合が高いことが報告されていますが、理由は不明です
遠隔転移で最も多い場所は骨で、2番目が肺、3番目が肝臓とされています。
乳頭から腋の下にかけての部位(外側の上部)が乳がんの好発部位です。
近年の食生活の変化や生活習慣の変化が原因だと考えられています。
デンスブレストの患者さんでは、マンモグラフィでがん病変が見つかりにくくなる場合があります。
乳がんは進行が遅く10年後や20年後に再発することもあるため、長期的に経過観察が行われます。
乳管外で増殖している充実腺管がんは、転移や再発の可能性もありますが、予後は患者さんにより異なります。
ホルモン陽性HER2陰性の乳がんがおとなしいタイプと言われますが、治療法は患者さんの状態により異なります。
初経年齢が早かったり、閉経年齢が遅かったりすると、乳がんの発症リスクは高くなると言われています。
妊娠や出産に伴うエストロゲンの変化が乳がんの発症リスクに関連していると考えられています。
浸潤性小葉がんの予後は良いことが多いですが、通常と異なる場所に転移を起こすこともあります。
症状について
乳がんの原因としては、遺伝的な素因に加えて生活習慣の影響も指摘されています。
乳がんの主な症状として、乳房のしこりの触れたり、乳房の腫れ、皮膚の凹み、ひきつれ、乳頭からの分泌液の流出などがあります。
乳がんは一般的に初期症状が乏しいです。丁寧に触れてみることで、しこりなどに気が付くことがあります。
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
乳がんで解説に記したような症状が現れる可能性がありますが、必ず起こるわけではありません。
一般的には、乳頭(乳首)の乾燥だけでは、乳がんの初期症状とは考えません。
再発・転移の場所により異なります。手術した乳房や周辺の場合、皮膚の赤みやしこりがみられることがあります。
脈管侵襲がある状態とは、がんの周りにあるリンパ管などにがん細胞が入り込んでいることを言います。
しこりがみられない「炎症性乳がん」では、皮膚が赤くなることが特徴です。
ステージはしこりの大きさと広がり、リンパ節転移、遠隔転移で決まり、しこりの有無ではわかりません。
個人差があるため一概には言えませんが、末期には乳房以外の全身の臓器に転移して症状を引き起こします。
解説のイラストをご覧ください。
弾力があり、痛みを伴わないことが多く、皮膚の陥凹などがみられることもあります。
悪性の胸のしこりは周囲に浸潤し、転移の可能性があります。形状や細胞の特徴で区別されます。
他の病気の可能性が高いですが、乳がんの症状の場合もありえますので医療機関を受診してください。
乳がんのひとつであるPaget病(パジェット病)の可能性があります。
左右差や皮膚の引きつれ、乳頭からのびらんなどの症状が現れる可能性があります。
早期の乳がんでは、自覚症状がないこともあります
乳がんの自覚症状のひとつで、乳房の表面の皮膚がえくぼのようにくぼんだり、ひきつる症状です。
マンモグラフィで石灰化が見つかった場合は、精密検査(二次検査)を受けてください
乳がん特有の症状として「疲れやすい」は一般的に言われませんが、がん全般の症状としては起こりえます
一人で抱え込まず、医療スタッフやご家族に気持ちを話してみましょう。患者会等への参加も検討しましょう。
一般的に、乳がんの初期症状としてチクチクするなどの痛みを感じることは少ないとされています。
乳房の形が左右非対称になることで、乳がんと気づく場合もあります
肝臓への転移では自覚症状が現れにくく、肺では咳が続くことがありますが、人によってかなり異なります
一般的に、乳がんの初期症状として痛みを感じることは少ないとされています。
局所再発では、しこり、湿疹、虫刺されのような症状が出ることがあります。
転移した部位の骨の痛みが主な症状ですが、脱水症状や手足のしびれなどが起きた場合はすぐに治療が必要です。
首や脇の下が腫れたり、赤くなったり、しこりが見られたりしますが、症状がないこともあります。
治療について
乳がんに対する治療は手術療法を基本に、放射線治療や薬物治療を組み合わせることで行います。
治療状況などによっても異なるため、医師の指示に従うことが重要です。
エストロゲンなどの女性ホルモンの作用を抑えることで、がん細胞の増殖を抑制します。
ホルモンバランスの関係で、生理直後に受けると比較的痛みが少ないと言われています。
診療の段階等によって、日常生活で気をつける点は異なりますので、まずは主治医にご相談ください。
肩の周りの筋肉を動かす体操が推奨されます。強い痛みがある場合は無理なリハビリは避けてください。
乳房全切除術(全摘術)を行った後の、周辺の組織での再発率は10%未満とされています。
手術の成功という言葉は、通常医学的には使用せず、人によっては意味合いが異なるため回答が困難です。
一般的なマッサージは勧められませんが、専門の看護師等が行うリンパドレナージという治療法があります。
乳がんの症状はステージごとに区切られません。治療では手術や薬物療法、放射線治療などが行われます。
ステージ1~3では手術、薬物療法、放射線治療の組み合わせで、患者さんによって異なります。
外見の変化については言及されていませんが、副作用で更年期のような症状が起こることがあります。
手術後は、リンパ浮腫や薬物療法の副作用があれば医師に相談し、化学療法中は感染症対策を行いましょう。
腋の下(腋窩)のリンパ節に転移があると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清が必要です。
一般的に、部分切除は傷が小さく再発リスクがやや上がります。全摘出は傷が大きく再発リスクはやや低いです
手術を受けたことでの腋の痛みなどは、多くの場合数ヶ月で和らぎます。神経痛などは数年続く場合があります
肩の周りの筋肉を動かすリハビリテーションを行うことが、リンパ浮腫の予防となります。
ご自身のがんの状態を知り、各手術のメリット・デメリットを理解し、主治医に希望を伝えることが大切です
無理をせずに徐々にからだの調子を戻すようにし、仕事復帰のタイミングは主治医らと相談しましょう
治療法により異なりますが、患者さんの全額自己負担での治療になることもあり、その場合数十万~数百万ほどかかることがあります。
手術前に検査が行われ、場合によってはお薬を使用することもありますが、その他指示が無ければ通常通り過ごすことが可能です。
基本的には性交渉することは可能ですが、一時的に避けた方が良い時期もありますので、医師にご相談ください。
局所再発か遠隔転移かにより異なりますが、手術や放射線療法、薬物療法を行います。
乳がんの治療は外来の通院が基本のため、仕事をしながらでも治療することができます。
軽い運動であれば手術後1~2ヵ月ほどでできるようになりますが、運動の内容や開始時期については医師にご相談ください。
受診について
診断について
検査について
色々な角度から乳房をX線で撮影する検査です。
「胸が小さい」という理由のみでマンモグラフィが受けられないことは、基本的にありません。
マンモグラフィ検診の精度を一定に保った、撮影が可能であると認定された技師です。
なるべく上半身の衣類を脱ぎやすい服装で受診しましょう。
場合によって異なりますが、保険料3割負担では左右両側の撮影で1,500円程度です。
放射線を使用します。ほとんどの撮影において放射線量は2.4mGy以下です。
受けられますが、ホルモンバランスの関係で痛みを強めに感じることがあります。
妊娠中の方、豊胸術後の方、ペースメーカーが入っているなど、受けない方が良い場合があります。
一概には言えませんが、40歳以上の女性は2年に1回、問診とマンモグラフィの受診が推奨されています。
悪いものであるとは限りません。
黒い丸としてうつるものにはさまざまなものがあり、一概には言えません。
実際に乳がんと診断される人は要精密検査となった人の5%、乳がん検診を受診した人全体の0.4%です。
厚生労働省の指針では、40歳以上の女性は2年に1回乳がん検診を受けることが推奨されています。
一般的に、乳がんのなどの原因となるBRCA(ブラカ)1/2遺伝子の変異があるかどうかを血液検査で調べます。
乳がんの主な腫瘍マーカーとして、CA15-3、CEA、NCC-ST-439などがあります。
通常、細胞診は局所麻酔なしで行われるため、痛みを感じる場合もありますが、数分で終了します。
骨シンチグラフィーは、放射性医薬品を用いて骨転移を調べることができる検査です。
手続きや支援について
「高額療養費制度」をはじめ、利用できる制度がないかご確認ください。
病気や治療に関する情報はできる限り共有し、家族それぞれの気持ちや希望を話し合うようにしましょう。
支払った医療費が一定額を超えたり、仕事を休んだことにより、十分な報酬が得られない場合に補助を受けられることがあります。
手術内容により費用は異なりますが、保険適用となっています。高額療養費制度も利用できます。
薬について
乳がんに対する主な薬物療法としては、内分泌療法、分子標的薬などが挙げられます。
乳がんにはさまざまな治療法があります。主治医と相談しながら別の治療法を模索することになります。
手術前後に抗がん剤治療が行われることがあり、治療法はがんのサブタイプに応じて決定されます。
費用は放射線治療の種類や回数、医療機関によって異なりますが、標準治療は公的医療保険の対象です。
がんのステージや悪性度、サブタイプ、再発のリスクなどを考慮して決定されます。
乳がんはお薬の効きやすいがんと言われていますが、効きやすさは乳がんのタイプにより異なります。
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(参考文献)
ユビー病気のQ&Aとは?
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