鼠径ヘルニア
監修医師吉岡 藍子消化器内科
- 更新日
- 2026/07/10
- 公開日
- 2020/09/03
鼠径ヘルニア(脱腸)とは
足の付け根にある靭帯組織の隙間から腸が出てしまう、いわゆる脱腸という状態です。
鼠径ヘルニア(脱腸)とはどのような病気ですか?
太ももの付け根あたりの腹筋が弱って、そこから脂肪や腸が飛び出てしまう病気です。
太ももの付け根あたりの腹筋が弱って、そこから脂肪や腸が飛び出てしまう病気です。
お腹に力を入れると足の付け根にふくらみができ、下腹に引っ張られたような痛みを感じることがあります。
袋状の腹膜の中には小腸や大腸、場合によっては大網、卵巣、膀胱などが入り込みます。
放置すると徐々に膨隆が大きくなり、時にとび出した腸が戻らなくなり血行障害を起こし(かんとん)、腸の壊死をきたして緊急手術となることがあります。
鼠径ヘルニア(脱腸)の症状
女性の鼠径ヘルニア(脱腸)ではどのような症状が見られますか?
男性と同じく、足の付け根の膨らみが大きくなったり小さくなったりします。不快感や痛み、お腹全体の痛み、吐き気などの症状が出ることもあります。症状は生理周期に合わせて変化することがあります。
鼠径ヘルニアは女性よりも男性に多く発生する病気ですが、女性でも発症することがあります。自覚症状は男性の鼠径ヘルニアと大きくは違いません。足の付け根に膨らみができ、膨らんだ部分の違和感や不快感、痛みを感じることがあります。ひどくなるとお腹全体が痛くなり、お腹が張って吐き気が生じることもあります。
男性よりも女性の鼠径ヘルニアのほうが、緊急での手術が必要になったり腸を切除するほどの重症になったりする割合が高いため、注意が必要です。
鼠径ヘルニア(脱腸)では、どのような症状が見られますか?
最初は立ったりお腹に力をいれたときに足の付け根にふくらみを感じます。放置するとふくらんだままになり、さらに痛みを生じることがあります。
最初は立ったりお腹に力をいれたときに足の付け根にふくらみを感じます。
放置するとふくらんだままになり、さらに痛みや硬さをともなう場合もあります。
このようなケースでは血流障害を起こしている可能性があるため、ただちに受診する必要があります。
鼠径ヘルニア(脱腸)ではどのような初期症状が見られますか? 痛みや症状がない場合もありますか?
立った時などに足の付け根に膨らみができます。初期の段階では痛みはなく、膨らみを押すと元に戻ります。
足の付け根や、男性の場合は陰嚢(いんのう:たまのふくろ)に、膨らみができて大きくなったり小さくなったりします。お腹に力を入れたり長時間にわたって立っていたりすると、膨らみは大きくなります。逆に、朝起きた時や静かに横になっている時は、膨らみが小さくなって目立たなくなります。
症状が軽いうちは痛みはなく、膨らみも押さえれば引っ込みます。症状が進むと、痛みや違和感、不快感が生じてきます。
鼠径ヘルニア(脱腸)の原因
男性が鼠径ヘルニア(脱腸)になりやすい原因は何ですか?
足の付け根にある「鼠径管」という隙間が、女性より男性のほうが太いためです。
足の付け根には、筋膜(筋肉を覆う膜)などに囲まれた「鼠径管」という隙間があります。鼠径管の内側には、男性の場合は精巣に通じる血管と精子が通る管が、女性の場合は子宮を支える靭帯(じんたい)が通っています。この鼠径管が女性より男性のほうが太いため、鼠径管の周囲の筋肉が弱まった時にそこから腸や脂肪が飛び出しやすく、鼠径ヘルニア(脱腸)になりやすいと言えます。
鼠径ヘルニア(脱腸)の検査・診断
鼠径ヘルニア(脱腸)のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックができます。
以下の症状がある場合、鼠径ヘルニアの可能性があります。
- 足の付け根に柔らかい膨らみがある
- 足の付け根に違和感がある
- 立った時やお腹に力を入れた時に、膨らみができたり大きくなったりする
- 起床時や静かに横になっている時は膨らみが小さくなる
- 指で押し戻せた膨らみがまた出てきた
- 膨らみの部分が痛い
- 膨らみの部分にもお腹全体にも痛みがある
- 膨らみの他に、お腹の張りや吐き気・嘔吐の症状がある
また、症状検索エンジン「ユビー」(無料)でも、質問に答えるだけで症状のセルフチェックが可能ですので、ぜひご利用ください。
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療・対処法
鼠径ヘルニアへの対処法は?
症状が軽く手で押して戻る場合もありますが、出てしまった腸が戻らずはまり込んでしまうと腸が腐ってしまうこともあるため、手術が必要な場合もあります。
鼠径ヘルニア(脱腸)はどのようにして治療しますか? 自分で治す方法はありますか?
治療方法は手術のみです。自分で治すことはできません。
現在のところ、鼠径ヘルニアの根本的な治療方法は手術しかありません。腸などの内臓が飛び出てしまっているところを手や指で押し込んだり、脱腸した部分を圧迫する「脱腸帯」というベルトを使用したりすることで、一時的に元に戻せる場合はあります。しかし、内臓が飛び出ている穴自体が塞がるわけではないため、根本的な治療にはなりません。
手術では、腸や脂肪などの飛び出ている臓器をお腹の中に戻した後、穴を縫い合わせたり、人工の網(メッシュ)を使用したりして穴を塞ぎます。
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術後による傷や膨らみは治りますか?
しばらく腫れたりつっぱり感が出たりすることがありますが、通常自然に軽快してきます。
手術後は傷が腫れることがありますが、多くは水腫や血腫であり、半年位までに自然に軽快します。
まれに再発の場合もありますので、注意が必要です。
また、つっぱり感が生じることもありますが、これもメッシュが組織になじんでくると自然に軽快してきます。
多くは半年以内に軽快します。
ただし、
- 腫れや赤みがひかない
- 水や血が出る
- 痛みが続く
といった場合には、受診が必要です。
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術後はすぐに仕事に戻れますか?
運動やお腹に力がかかる仕事は、しばらく控える必要があります。
退院後は座っての仕事は可能です。
軽い運動は術後2週間位で可能です。
術後約1ヶ月で、お腹に力がかかる仕事も可能です。
シャワーは手術翌日から浴びてかまいません。
鼠径ヘルニア(脱腸)治療用のバンドを使ってもいいですか?
鼠径ヘルニア治療用のバンドの使用は勧められません。
不適当な圧迫が腹腔内臓器の損傷につながることもあり、現在ではバンドの使用は勧められていません。
受診の目安・何科を受診するべきか
鼠径ヘルニア(脱腸)が疑われる場合、何科を受診したらよいですか? また、病院を受診する目安はありますか?
消化器外科を受診しましょう。特に、痛みを伴う場合は速やかに受診してください。夜間・休日に発症した場合や激しい痛みや嘔吐を伴う場合は、救急外来を受診しましょう。
鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。手術で治療するか、様子を見るかのいずれかです。鼠径ヘルニアが疑われる場合は、手術が必要かどうか消化器外科を受診して相談しましょう。痛みや不快感があるなど、日常生活に影響が及んでいる場合は手術が選択されることが多いです。
救急外来を受診すべき場合
激しい痛みや嘔吐が突然起こった場合、飛び出ている腸が締め付けられて血の巡りが悪くなったり、腸がねじれたりしている可能性があります。この場合、放っておくと腸が腐って命に関わる事態になってしまう危険性があるため、なるべく早く医療機関を受診しましょう。夜間・休日であれば、救急外来を受診してください。
鼠径ヘルニアの専門医がいる近くの病院はありますか?
鼠径ヘルニアの専門医がいる病院を見る鼠径ヘルニア(脱腸)の予防
鼠経ヘルニア(脱腸)を予防するためにできることはありますか?
確実なものはありませんが、禁煙と適度な運動が有効とされています。
鼠径ヘルニアを予防する確実な方法は今のところありません。
ただし、禁煙と適度な運動は一定有効とされています。
鼠径ヘルニア(脱腸)に関連するその他の質問
どのような人が鼠径ヘルニア(脱腸)になりやすいですか?
高齢、やせ、家族歴、腹圧のかかる仕事や運動、前立腺の手術既往、咳を慢性的にしている人、腹膜透析、喫煙者などがリスクになります。
以下に当てはまる人は、鼠径ヘルニアにかかるリスクが高いといえます。
- 高齢
- やせ
- 家族歴がある
- 腹圧のかかる仕事や運動をしている(便秘や排尿障害がある)
- 前立腺の手術既往
- 咳を慢性的にしている(喘息や肺気腫がある)
- 腹膜透析を行っている
- 喫煙している
鼠径ヘルニア(脱腸)について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「鼠径ヘルニア」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 足のつけねに軟らかい膨らみがありますか?
- 立った時に、足のつけねのふくらみが出現しますか?
- お腹にしこりを触れたり固く出っ張っている部分がありますか?
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この記事の監修医師
吉岡 藍子
消化器内科・内科
消化器内科医の吉岡藍子と申します。 これまで大学病院や市中病院、健診センターでの内視鏡業務などを通して、消化器領域を幅広く経験してまいりました。 診療の現場では、専門的な用語や複雑な病状の説明に、患者様が戸惑いや不安を感じる場面に何度も出会いました。医療機関で提供される膨大な情報を前に、混乱されてしまう方も少なくありません。そこで、ご自身の病気や体、そして健康について、一人でも多くの方が正しく理解できる環境を作りたいという想いから、ユビーの活動に参加させていただいております。皆様が正しい医学知識に普段から触れ、安心してご自身の健康と向き合えるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。 【経歴】 新潟大学医学部卒。 新潟県内外の市中病院、大学病院で勤務。 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野にて博士取得。 2022年からユビーに入社し、横浜市で健診内視鏡診療を兼務。
- 更新日
- 2026/07/10
- 公開日
- 2020/09/03