過活動膀胱

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最終更新日

過活動膀胱の場合、主にどのような治療をしますか?

自治医科大学 泌尿器科

秋元 隆宏 監修

主に行動療法と内服薬による治療を行います。場合によっては、その他の治療も組み合わせます。

解説

膀胱結石や前立腺肥大症など治療可能な原因が分かっている場合は、それらの原因に対する治療を行いますが、症状が強い場合や、治療可能な原因が特定できなかった場合には、過活動膀胱に対する治療として下記のような治療を行います。

行動療法

過活動膀胱は生活習慣病などにも関連するため、薬を使用せずに習慣や行動を変えるだけでも、症状を軽減する効果があることが報告されています。

ダイエット

体重の増加や肥満は過活動膀胱や尿失禁に関わっており、減量は過活動膀胱の軽減に効果があります。

膀胱訓練

尿をなるべく我慢してから排尿してもらう方法です。有効性はいくらか報告されておりますが、膀胱炎になる可能性もあるので、残尿量などの状況を見て検討します。担当の先生に相談して行いましょう。

骨盤底筋体操

尿道の周りの筋肉を収縮させることで、尿漏れを軽減させる体操です。
報告によってその方法などがさまざまですが、長期間行うことで、総じて効果があることが示されています。
骨盤底筋だけではなく、お腹の筋肉等に力が入りすぎると体操中に逆に尿漏れを起こすことがあるので、体操が合っているかどうか、適宜担当の先生に相談してみましょう。

薬物療法

主に、2種類の薬(抗コリン薬、β3受容体作動薬)が一般的です。
場合によっては、両方使用することもあります。難治性の過活動膀胱の場合は、ボツリヌス毒素の膀胱内注入療法をすることもあります。
いずれも効果が強く出ると、逆に尿が出にくくなることや完全に出なくなること(尿閉)も生じることがあるため、適宜、排尿後の残尿量を調べることが必要です。

抗コリン薬

膀胱の平滑筋の過剰な活動を抑え、膀胱から脳への刺激を減らす効果があります。
過活動膀胱の薬として最初に研究開発され、現在はいくつも種類があります。副作用として、便秘や口の乾き(口渇)、視界のぼやけ(霧視)などがあり、他の薬との飲み合わせで副作用が強くなることもあります。
近年、高齢者の認知症のリスクを上げる可能性も報告されており、処方の見直しをすることもあります。

β3受容体作動薬

膀胱の平滑筋を緩ませて、尿意切迫感や頻尿の症状を軽減します。
薬の効き方が異なるため、抗コリン薬で問題となる副作用はβ3受容体作動薬では少ないですが、不整脈便秘、口の乾燥が出る方もいます。
また、認知機能への影響が見られない可能性等が報告されております。現在は2種類のみですが、副作用の面などから、抗コリン薬よりも継続して服用される方が多いようです。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

尿道から膀胱鏡という内視鏡を挿入し、神経の伝達をブロックするボツリヌス毒素の一種を膀胱に直接注入する治療法です。
膀胱から脳への過剰な信号を抑える効果等があり、神経因性膀胱や原因が特定できない過活動膀胱の方の中で、内服治療だけでは効果がない方に対して、使用が認められています。
個人差がありますが、効果の持続時間は8~9か月と言われ、複数回繰り返すこともできます。施行可能な医療機関が限られているため、担当の先生と相談しましょう。

神経変調療法

尿を溜める機能をコントロールする神経系を調節し、その機能を改善する治療法です。
手術を必要とする「仙骨神経刺激療法」や、非侵襲的な「電気刺激療法」「磁気刺激療法」などがあります。
また、尿を溜める機能をコントロールする神経系として「骨盤神経」「下腹神経」「陰部神経」という末梢神経が重要です。

骨盤神経は仙骨神経のひとつで、膀胱から脊髄に行く神経と脊髄から膀胱に行く神経が混ざって存在しています。
尿がある程度溜まると、骨盤神経を介して脊髄や脳に信号が送られます。これを受けて、下腹神経や陰部神経からはさらに尿を溜め続けるような司令を送ることができます。逆に、骨盤神経からは膀胱が収縮して尿を出すような司令を送る事もできます。
正確なメカニズムはまだ不明な点はありますが、仙骨神経の一部等を継続的に刺激することで、過活動膀胱の症状を軽減することが報告されています。

仙骨神経刺激療法(sacral neuromodulation:SNM)

仙骨神経の付近にペースメーカーと同じような電気信号が伝わるようなリード(電極)を設置し、持続的に電気刺激を加えることで、尿を溜める機能をコントロールする神経系を調整します。
リードの設置、刺激装置の植え込みのため2回の手術が必要で、電気信号は外部から調節できます。
尿意切迫感がある方のうち、6割程度の方が1日に尿意切迫感を感じる回数が半分以下になるほどの改善を自覚され、尿失禁がある方の4割弱が完全に改善したという報告もあります。
現在は、電源がセットされた刺激装置を植え込んでいるため、充電の交換のための手術が必要です。
リードの位置のずれや、術後の痛み、術後の感染症が主な副作用と言われています。その他の治療で改善ができない難治性過活動膀胱の方のみに行う治療で、施行できる施設が限られており、担当の先生と相談が必要です。

電気刺激療法

脊髄の下の方にある仙髄領域を生体を傷つけないように低周波の電気刺激を与えることで、骨盤神経や下腹神経への影響を介して、尿を出す筋肉の過剰な活動を抑制させようとする治療法です。
体に負担を与えないような治療法で、他の治療法と併用して行うことが多く、刺激装置がある施設で行うことができます。

磁気刺激療法

コイルに電流を流して作成した磁場を使って、体内に電流を作り、それで仙髄領域の神経を刺激する治療法です。
電気刺激療法よりも体に負担を与えずらく、刺激装置がある施設で行うことができます。

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(参考文献)

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