男性不妊
監修医師秋元 隆宏東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/08/10
男性不妊とは
何らかの原因で精子を作る機能が弱っていたり、勃起や射精に障害があり不妊となる状態です。不妊症の約半分の割合で男性不妊が関与していると言われています。
「男性不妊」とはどのような病気ですか?
妊娠を望むカップルが1年以上避妊せずに性交渉しても妊娠しない原因が男性にある状態です。
男性不妊とは、妊娠を希望する夫婦が避妊せずに性交渉をしても、妊娠しない原因が男性にある場合を指します。
以下のような特徴があります。
- 不妊の原因の約半分は男性にも関係がある
- 日本では夫婦の18%が不妊症治療を経験
- 決して珍しい病気ではなく、身近な問題
- 治療可能な原因も多い
受診のタイミング、目安は以下の通りです。
- 通常:1年間避妊せずに性交渉しても妊娠しない場合
- パートナーが35歳以上:6カ月以内に妊娠しない場合
気になった場合は、泌尿器科や不妊治療を専門にしている医師による適切な検査・治療が推奨されています。
男性不妊の症状
男性不妊ではどのような症状がありますか?
多くは無症状ですが、精索静脈瘤で陰嚢の違和感や痛み、性機能障害でEDや射精障害がある場合もあります。
男性不妊は症状が出にくいですが、原因によっては症状がある場合もあります。
多くの場合
- 自覚症状はほとんどない
- 妊娠を希望して性交渉を続けても妊娠しないことで初めて気づく
- 精液検査を受けて初めて異常が判明することが多い
原因によって見られる症状
- 精索静脈瘤:陰嚢(いんのう)部の違和感や重だるさ、痛み、造精機能障害のリスク増加
- 性機能障害:勃起や勃起の維持ができない、射精ができない
- 停留精巣になったことがある場合:射精障害のリスク増加
- 糖尿病・脊髄損傷:射精障害のリスク増加
- がん治療経験:造精機能障害のリスク増加
- 精巣捻転になったことがある場合:造精機能障害のリスク増加
症状がなくても、なかなか妊娠につながらない場合は、検査を受けることが重要です。
男性不妊には初期症状はありますか?
明確な初期症状は通常ありません。1年間妊娠しないことで初めて気づかれることが多いです。
男性不妊症には、明確な初期症状は通常ありません。多くの場合、妊娠を希望して1年間、定期的に性交渉を続けても妊娠に至らないことで初めて問題に気づきます。
気づくきっかけとなる症状(一部の場合)
しかし、大部分の男性不妊症は無症状であるため、妊娠を希望する段階で、積極的に検査を受けることが早期発見につながります。
男性不妊の原因
睾丸が小さいと男性不妊の原因になりますか?
精巣が小さいと精子形成機能が低下している場合があります。
直接的な原因にはなりませんが、睾丸(精巣)が小さいことは、男性不妊と関連する可能性があります。
停留精巣や精巣捻転の経験がある方や、男性ホルモン(テストステロン)が少ない方、特殊な遺伝子の異常がある場合などは、精子が形成されにくく、精巣も小さいことがあります。
正常な精巣の大きさは、成人男性の場合15〜25ml程度と言われていますが、精巣の大きさだけで精子を作る機能を完全に判断することはできません。
なかなか妊娠に至らず、かつ精巣が小さいと感じることや、精巣の左右の大きさが明らかに違う場合などは、早めに泌尿器科や不妊治療を専門としている医療機関を受診しましょう。
早く原因を見つけて、適切な治療を始めることで、妊娠できる可能性が高まります。
男性不妊の原因は何がありますか?
精子を作る機能の障害や、性機能障害、精子の通り道の障害に分けられますが、原因不明なこともあります。
男性不妊の原因はメカニズムで分けると大きく3つあります。それは、精子を作る機能や性機能、精子の通り道に関する問題です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
①精子を作る機能の障害(造精機能障害):全体の82.4%
- 精巣の血管が異常に太くなること(精索静脈瘤):36.6%
- 原因不明(特発性):51.0%
- 染色体や遺伝子の異常:5.2%
- 薬の影響:2.2%
②性機能の障害:13.5%
- 勃起障害/勃起不全(ED)
- 射精障害
どちらにも心理的な影響が関係することがあります。
③精子の通り道の障害:3.9%
- 生まれつき精子の通り道がない
- 精管結紮術(パイプカット)後
- 性感染症で精管が詰まったり狭くなったりした場合
- 鼠径ヘルニア手術などの際に精管が傷ついた場合
男性不妊の検査・診断
男性不妊のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
以下が当てはまる場合、男性不妊の可能性があります。
原因に関しては、確定診断には医療機関での精液検査が必要ですが、ある程度のセルフチェックは可能です。
原因を推測するためのチェックポイント
①精巣の状態
- 極端に小さい
- 左右差が大きい
- 硬いしこりがある
②陰嚢(いんのう)の状態
- 違和感やだるさ、痛みがある
- 立位で静脈が浮き出るような腫れ
③性機能
- 勃起障害/勃起不全(ED)
- 射精困難
④リスク因子の有無
ただし、これらはあくまで目安です。気になる症状がある場合は、早めに泌尿器科を受診しましょう。
また、症状検索エンジン「ユビー」で質問に沿って回答を進めるだけでセルフチェックができます。ぜひご活用ください。
男性不妊の治療・対処法
男性不妊への対処法は?
通常の性行為をしていても1年以上パートナーが妊娠しない場合は病院で検査を受けてみましょう。
男性不妊の場合、主にどのような治療をしますか?
原因別に精索静脈瘤の手術や、EDの治療薬、ホルモン療法、改善がない場合は生殖補助医療があります。
男性不妊の治療は、原因に合わせて薬物療法、手術、生殖補助医療などを行います。
原因別の主な治療法
①精索静脈瘤(精巣の血管が拡張した状態)
- 手術療法(顕微鏡を用いた手術や腹腔鏡手術で血管を縛る手術):精索静脈瘤は基本的に手術で治療し、精液の状態が改善する可能性があります。
②性機能障害(EDなど)
- ED:血管を広げる薬(PDE5阻害薬)
- 射精障害:原因に応じた薬物療法
③ホルモンの異常
- ホルモンを補充する治療:必要な場合に、精子の形成に必要なホルモンのバランスを調整する方法です。
④原因不明の造精機能障害
- ビタミン剤(E、C、B12)
- 漢方薬(補中益気湯、八味地黄丸など)
①~④の治療による改善が乏しい場合は、生殖補助医療として、以下のような治療が検討されます。
- 人工授精:パートナーの精子を直接子宮内へ注入して妊娠を目指す治療法
- 体外受精:卵子を体外に取り出して、試験管内で精子と受精させたあとに、受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
- 精巣精子採取術(TESE)+顕微授精(ICSI):精巣から精子を取り出して、顕微鏡下で1個の精子を直接卵子の中に注入して受精させ、できた受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
受診の目安・何科を受診するべきか
男性不妊が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
泌尿器科や、不妊治療専門クリニック、生殖医療センターへの受診を検討しましょう。
男性不妊が疑われる場合、泌尿器科または不妊治療専門クリニック、生殖医療センターを受診しましょう。泌尿器科では以下のようなことを行います。
- 男性生殖器の専門的な診察
- 精液検査
- ホルモン検査(血液検査)
- 超音波検査
- さまざまな原因の診断と治療
不妊治療は泌尿器科だけでなく、産婦人科などとも連携する必要があるため、以下のような施設への受診も検討しましょう。
- 不妊治療専門クリニック
- 生殖医療センター
男性不妊が疑われる場合、病院を受診する目安はありますか?
避妊せずに1年間妊娠しない場合や、パートナーが35歳以上なら6カ月以内に妊娠しない場合が目安です。
以下のような場合は、受診を検討しましょう。
基本的な受診の目安
早めの受診が推奨される場合
- 明らかな性機能障害(勃起不全/勃起障害(ED)や射精障害)がある
- 精巣の大きさに左右差がある
- 陰嚢部に違和感や腫れがある(陰嚢に血管が浮き出て、熱がこもる状態)
- 停留精巣や精巣捻転などの経験がある
- がん治療(薬や放射線を使った治療)を受けた経験がある
男性不妊の専門医がいる近くの病院はありますか?
男性不妊の専門医がいる病院を見る男性不妊の薬
男性不妊は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
ED治療薬やホルモン剤、ビタミン剤、漢方薬などがあり、副作用は比較的軽度ですが、薬によってさまざまです。
男性不妊の治療薬は、原因により異なり、ED治療薬、ホルモン剤、ビタミン剤、漢方薬などが用いられます。主な治療薬と副作用は以下の通りです。
①ED治療薬(PDE5阻害薬)
②ホルモン剤
- 使用例:ホルモンバランスの異常に対する薬剤(ゴナドトロピン製剤や選択的エストロゲン受容体阻害薬、テストステロン製剤など)
- 副作用:使用する薬によっては、多血症や女性化乳房、顔面紅潮など
③ビタミン剤
- 使用例:ビタミンE、C、B12
- 副作用:比較的少ない
④漢方薬
- 使用例:補中益気湯、八味地黄丸
- 副作用:比較的少ない
注意点
- 射精障害に有効だったアモキサピンは、2023年2月以降使用停止
- 効果や副作用には個人差がある
- 医師とよく相談しながら治療を進めることが重要
対処法・セルフケア
男性不妊の場合、日常生活で気をつけることはありますか?
肥満や生活習慣病の予防と、禁煙・節酒、精巣の温度管理などが挙げられます。
はい、男性不妊の場合、日常生活では以下のような点に気をつけましょう。
①体重管理
- 肥満は精子を作る機能に悪影響です。
- 適正体重の維持が重要です。
②生活習慣病の予防
- メタボリックシンドロームや糖尿病も男性不妊と関連しています。
- バランスのよい食事と適度な運動をしましょう。
③精巣の温度管理
- 精巣は熱に弱いです。
- 長時間の熱いお風呂、サウナ、膝上でのノートパソコン使用、きつい下着はなるべく避けましょう。
④禁煙・節酒
- 喫煙や過度の飲酒は精子の状態に悪影響があります。
⑤抗酸化作用のある食品
- ビタミンC、Eを含む野菜や果物を摂りましょう。
⑥ストレス管理
- タイミング法のプレッシャーは性機能障害の原因になることがあります。
- カップルでよく話し合うことが大切です。
男性不妊で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
生殖補助医療(ART)や手術療法などがあります。
薬での治療がうまくいかない場合は、妊娠を助けるための別の方法を考えます。
主な選択肢
①生殖補助医療(ART)
- 人工授精:パートナーの精子を、直接子宮内へ注入して妊娠を目指す治療法
- 体外受精:卵子を体外に取り出して、試験管内で精子と受精させたあとに、受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
- 精巣精子採取術(TESE)+顕微授精(ICSI):精巣から精子を取り出して、顕微鏡下で1個の精子を直接卵子の中に注入して受精させ、できた受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
②手術療法
- 精索静脈瘤で精巣の血管が太くなっている場合:低位結紮術などの手術を行います。
- 精子の通り道が詰まっている場合:手術で通り道を直す治療を行います。
治療法の選択に関しては、以下の内容などをしっかりと相談して検討します。
- ご本人とパートナーの年齢
- どれくらい子どもが欲しいか
- 治療への反応
担当の先生と、よく相談して治療を受けることが大切です。
男性不妊に関連するその他の質問
男性不妊の場合、見た目に何か特徴はありますか?
見た目ではほとんどわかりませんが、精索静脈瘤の血管拡張や精巣の大きさの異常等でわかることもあります。
ほとんどの場合、見た目ではわかりませんが、一部の場合には、特徴が見られることがあります。
精索静脈瘤
立位(立った状態)または立位で息をこらえることで、陰嚢内の静脈が拡張してわかることがあります。その際に「みみずが這っているような」状態になることや、こぶ状の腫れが見えることがあります。
停留精巣
陰嚢内に精巣が触れないことや、停留精巣の治療後でも精巣が小さいなどのことがあります。
精巣の大きさの異常
左右差が顕著なことがあります。
肥満
内臓脂肪が多い場合など、精子形成に悪影響を与えることがあります。
ホルモンバランスの異常
男性ホルモンが少ない場合などに、以下のような外見上の特徴が現れることがあります。
- 筋肉量の減少
- ひげや体毛の減少
- 精巣の萎縮
染色体異常
クラインフェルター症候群など特殊な場合は、以下のような特徴が現れることがあります。
- 精巣が小さい
- 体毛が薄い
- 女性化乳房
外見だけで判断できないことのほうが多いです。
男性不妊でも妊娠できたケースはありますか?
数多くあります。適切な治療で妊娠・出産に至るケースは多いです。
はい、男性不妊症でも妊娠できるケースはたくさんあり、以下のような治療で実際に妊娠に至ることがあります。ただし、最終的に妊娠、出産に至る可能性は、ご本人とパートナーの状況や治療法によりさまざまなので、しっかりと担当の医師や医療者と相談しましょう。
手術による治療
- 精索静脈瘤の手術:精子の状態がよくなり自然妊娠の可能性があります。
薬物療法
- ED治療薬:性交渉が可能となり自然妊娠することがあります。
- ホルモン治療:精子を作る機能の改善が期待できます。
- ビタミン剤、漢方薬:原因不明の場合に効果的なこともあります。
生殖補助医療(ART)
- 人工授精:パートナーの精子を直接子宮内へ注入して妊娠を目指す治療法
- 体外受精:卵子を体外に取り出して、試験管内で精子と受精させたあとに、受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
- 精巣精子採取術(TESE)+顕微授精(ICSI):精巣から精子を取り出して、顕微鏡下で1個の精子を直接卵子の中に注入して受精させ、できた受精卵を子宮に戻して妊娠を目指す治療法
その他
がん治療前に凍結保存した精子を使ったARTなど、あらかじめ精子を保存しておく方法などもあります。
男性不妊になりやすい人の特徴を教えてください。
年齢が高い方や、精索静脈瘤や肥満、性感染症歴、停留精巣や精巣捻転の経験がある方などが挙げられます。
男性不妊になりやすい人には、以下のようないくつかのリスク因子があります。
年齢が高い方
一部の報告では35歳以上から、精液所見に変化が出始めるといわれています。ただし、その他のリスクにより変化するため、年齢だけでは明確に低下するわけではないという報告もあります。
精索静脈瘤
精巣の静脈にこぶができて、陰嚢(いんのう)の違和感や重だるさ、痛みが生じることがあります。男性不妊症の原因の約30%ですが、治療可能な病気です。
生活習慣
肥満や生活習慣病、メタボリックシンドロームなどがあると、不妊症になりやすくなることが知られています。
性感染症の経験
クラミジアへの感染などは、精子の通り道の障害のリスクになります。
停留精巣や精巣捻転の経験
精子を作る機能の障害のリスクが増加します。
染色体異常
クラインフェルター症候群や、Y染色体微小欠失など、遺伝子の異常が原因で精子が作られにくくなることがあります。
がん治療の経験
化学療法や放射線療法によって、精子が作られにくくなることがあります。
手術の経験
鼠径ヘルニア手術時に、精管が損傷することがあります。
他の疾患
- 糖尿病や脊髄損傷:神経の働きに異常が生じるので、勃起不全/勃起障害(ED)や射精障害のリスクがあります。
- 骨盤内や後腹膜の手術経験も同様に、勃起や射精機能に問題が生じる可能性があります。
これらのリスク因子がある方は、妊娠を希望する際に、早めに検査を受けることが大切です。
この記事の監修医師
秋元 隆宏 先生
東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
【経歴】 東北大学医学部医学科 卒業 三井記念病院 臨床研修 三井記念病院 泌尿器科 東京大学医学部付属病院 泌尿器科・男性科 自治医科大学 腎泌尿器外科学講座 泌尿器科学部門 病院助教 琉球大学医学部システム生理学講座 東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/08/10