ハンチントン病
監修医師原瀬 翔平亀田総合病院 脳神経内科
- 更新日
- 2026/06/15
- 公開日
- 2020/09/03
ハンチントン病とは
「ハンチントン病」とはどのような病気ですか?
遺伝子変異が原因で発症し、舞踏運動などの不随意運動や認知症の症状をきたす進行性の遺伝性疾患です。
ハンチントン病は、常染色体顕性遺伝形式をとる遺伝性の進行性神経変性疾患です。
舞踏運動(不規則に手足や顔面が繰り返し動いてしまう短くやや早い運動)を主体とする不随意運動と精神症状が特徴的な症状です。
主に成人に発症し、好発年齢は30歳代ですが、小児〜高齢者までさまざまな年代で発症がみられます。
約10%は20歳以下で発症し、若年型ハンチントン病と呼ばれます。
顕性遺伝形式をとるため、多くの場合、両親のどちらかがハンチントン病を発症しています。
ハンチントン病の症状
ハンチントン病で見られる不随意運動とはどのような症状ですか?
自分の意思とは無関係に体の一部あるいは全身が勝手に動いてしまう症状です。
不随意運動として、舞踏運動、ジストニア、ミオクローヌスなどがみられます。
それぞれの症状は以下の通りです。
舞踏運動
不規則に手足、顔面が繰り返し動いてしまう、短くやや早い運動です。手の動きが由来で、舞踏運動と名前がついています。
ジストニア
比較的長い筋肉の収縮により生じる運動です。多くの場合、ジストニアにより随意運動(自分の意思による運動)が妨げられてしまいます。代表的なものとして斜頸、顔面痙攣、書痙などがあります。
ミオクローヌス
突然ごく短時間に起こる筋収縮です。四肢・顔面・体幹に症状が現れます。
ハンチントン病には初期症状はありますか?
細かい運動がしにくくなります。また、周囲が気づかないほど軽微な不随意運動やうつ症状などが現れます。
以下のような症状で発症することが多いようです。
運動に関する症状
細かい動き(箸を使う、字を書く、ボタンを留めるなど)がやりづらくなります。
精神症状
落ち着きがなくなったり、うつ症状がみられたりします。周りからは、神経質やそそっかしくなったようにみえたりします。
ごく軽い不随意運動が見られることもあります。
ハンチントン病ではどのような症状がありますか?
舞踏運動と呼ばれる自分の意思とは無関係に起こる不随意運動や認知機能障害、うつ症状などが見られます。
ハンチントン病では以下のような症状がみられます。
不随意運動
病気の状態がやや進行すると明らかになってきます。手先が勝手に動く、首を動かす、顔をしかめる、舌打ちするなどの症状がみられ、これらは舞踏運動と呼ばれます。患者さんによっては、舞踏運動のほかにもさまざまな不随意運動がみられます。
運動症状
発症して早いうちは、細かい動作(箸を使う、字を書く、ボタンを留めるなど)をやりづらくなることが多いようです。
病気の状態が進行すると、すべての動作がやりづらくなり、歩行が不安定で転びやすくなったり、飲食の際にむせたり、しゃべりづらくなったりします。最終的には、自発的な動きはほぼ欠如してしまい、日常生活すべてに介助を要するようになります。
精神症状
目立つ症状としては、性格の変化(怒りっぽくなったり、異様に同じことを繰り返すなど)や行動変化がみられます。また、うつ症状が見られるようになります。
認知症状
認知機能障害として、計画を実行する能力や全体を把握する能力などが障害されやすいです。物忘れや記憶障害はあまり目立ちません。
ハンチントン病の原因
ハンチントン病の原因は何がありますか?
ある遺伝子に変異が起きて、異常な遺伝子配列が生じることが原因です。
ハンチントン病は、ポリグルタミン病という疾病のひとつです。ポリグルタミン病とは、ハンチントン病を含む9つの遺伝性疾患の総称です。
ポリグルタミン病は、遺伝子に存在するCAG(シトシン、アデニン、グアニン)の繰り返す配列回数が異常に多くなる遺伝子変異が原因になります。
病気の原因となる遺伝子は第4染色体短腕4p16.3という部位に位置するHTT遺伝子です。HTT遺伝子は、huntingtin(ハンチンチン)と呼ばれるタンパク質の設計図となる遺伝子です。
huntingtinは、体中のさまざまな組織で現れますが、その機能についてはよく分かっていません。
ハンチントン病の検査・診断
ハンチントン病のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
常染色体顕性遺伝形式をとる病気のため、まずは家族歴(家族の中にハンチントン病の方がいないかどうか)を確認してみてください。
ハンチントン病の治療・対処法
ハンチントン病の場合、主にどのような治療をしますか?
病気そのものを治す治療法は無いため、不随意運動や精神症状に対する対症療法を薬物を用いて行います。
残念ながら現時点では、根治的な治療法は存在しません。
舞踏運動(不規則に手足や顔面が繰り返し動いてしまう短くやや早い運動)などの不随意運動や精神症状に対しては対症療法を行います。
舞踏運動に対してはテトラベナジン、精神症状に対してはドパミン受容体遮断作用を示す抗精神病薬を使用します。
その他にも、さまざまな薬剤で治療が試みられていますが、有効性が確立されたものはありません。
受診の目安・何科を受診するべきか
ハンチントン病が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
脳神経内科を受診してください。
主に脳神経内科で治療を担当します。小児の場合は、神経系を専門とする小児科が対応することもあります。
ハンチントン病の専門医がいる近くの病院はありますか?
ハンチントン病の専門医がいる病院を見るハンチントン病の薬
ハンチントン病は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
うつ症状などの精神症状に対して抗精神病薬を、舞踏運動に対してテトラベナジンを用いて治療します。
舞踏運動(不規則に手足や顔面が繰り返し動いてしまう短くやや早い運動)などの不随意運動や精神症状に対しては対症療法を行います。
舞踏運動
テトラベナジン(コレアジンⓇ︎)を使用します。
主な副作用として、以下などがあります。
- 不眠症
- 傾眠(外部からの軽い刺激で意識を取り戻す状態)
- 便秘
- アカシジア(日本語では静座不能症。座ったままでじっとしていられず、そわそわ動き回ること)
- パーキンソニズム(パーキンソン病で見られる筋強剛、震え、動作緩慢などの症状のこと)
また、まれですが重大な副作用として、以下があります。
- うつ病・うつ状態(5%以上)
- 自殺念慮、自殺企図(いずれも頻度不明)
- 悪性症候群(急激な37.5℃以上の発熱、身体のこわばり、物が飲み込みにくいなど)(頻度不明)
精神症状
ドパミン受容体遮断作用を示す抗精神病薬を使用します。
主な副作用は錐体外路症状で、代表的なものとしてパーキンソニズムがあります。 身体が自分の意思と関係なく勝手に動いてしまうジストニア、ジスキネジアといった症状も錐体外路症状です。
参考文献
アルフレッサ ファーマ.“テトラベナジン錠”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/5302581190021F10251_07,(参照 2024-04-12).
ヤンセンファーマ株式会社.“リスパダールOD錠0.5mg”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/8001551179038F50291_24,(参照 2024-04-12).
ヤンセンファーマ株式会社.“ハロマンス注50mg/ハロマンス注100mg”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/8001551179406A10372_16,(参照 2024-04-12).
鶴原製薬株式会社.“クロルプロマジン塩酸塩錠25mg”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/4600281171001F21851_11,(参照 2024-04-12).
日本イーライリリー株式会社.“ジプレキサザイディス錠2.5mg/ジプレキサザイディス錠5mg/ジプレキサザイディス錠10mg”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_1179044F4028_1_33,(参照 2024-04-12).
対処法・セルフケア
ハンチントン病の場合、日常生活で気を付けることはありますか?
ハンチントン病では、徐々に症状が進行して日常生活を送ることが難しくなるため、周囲の方のサポートが必要になります。
さまざまな症状が徐々に進行することで、日常生活に支障をきたすようになってきます。
各症状に対する予防的措置や社会資源の活用、病状進行時の治療方針について家族と話し合うなど、まだ症状があまり進行していない時期から準備をしておく必要があります。
ハンチントン病で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
症状改善のためにリハビリテーションを行うことがあります。
一般の神経変性疾患に対するリハビリテーションとして、機能維持を中心としたリハビリテーションが行われます。
身体症状に対する運動リハビリだけでなく、精神症状に対するリハビリテーションが有用であったとの報告もあります。
また、舞踏運動(不規則に手足や顔面が繰り返し動いてしまう短くやや早い運動)に対しては、外科的治療として脳深部刺激療法を用いる場合があります。
ハンチントン病に関連するその他の質問
舞踏病とハンチントン病は同じ病気ですか?
ハンチントン病はかつて「ハンチントン舞踏病」と呼ばれていました。
厳密に言葉の定義をすると異なるものです。
ハンチントン病はハンチントン舞踏病と呼ばれることがあります。
その他にも「舞踏病」と名のつく病気には、以下などがあります。
- シデナム舞踏病
- 妊娠性舞踏病
- 薬剤性舞踏病
いくつか存在する舞踏病と呼ばれる病気のうちのひとつがハンチントン病です。
ハンチントン病について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「ハンチントン病」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 自分の意思に反して手足や顔が動いてしまいますか?
- 発音が正しくできないと感じますか?
- 最近これまでと比べて精神状態に異変があると感じていますか?
- 言葉が出て来ない、あるいは出てもおかしい状態ですか?
- 食べ物を飲み込みにくいと感じますか?
ハンチントン病に関連する病気・症状
この記事の監修医師
原瀬 翔平
亀田総合病院 脳神経内科・内科
University of Washington (理学部、分子細胞生物学) 卒業後、アップルジャパン株式会社勤務を経て、琉球大学医学部に入学。沖縄県立中部病院での初期臨床研修(2016, 2017年度最優秀研修医賞受賞)修了後、2018年4月に亀田総合病院に入職。同院脳神経内科ベスト指導医(2019, 2020)を受賞。2018年から亀田総合病院卒後研修センター長補佐も兼任しており、臨床だけでなく研修病院における医学教育にも力を入れている。2021年には国立循環器病研究センター脳血管内科で超急性期脳卒中診療を行う。 総合内科の視野を持ちながらの脳神経内科領域、特に脳卒中を専門とする。急性期だけでなく予防、慢性期脳卒中による症候性てんかん、高次脳機能評価、リハビリ、等にも精通。頭痛、しびれ、物忘れ等の主訴にも柔軟に対応できる。 日本語、英語(ネイティブ)、中国語(日常会話)での対応も可能。
- 更新日
- 2026/06/15
- 公開日
- 2020/09/03