腹圧性尿失禁
監修医師秋元 隆宏東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2020/09/03
腹圧性尿失禁とは
「腹圧性尿失禁」とはどのような病気ですか?
「腹圧性尿失禁」とは、お腹に力が入ったときに尿が漏れてしまう病気です。
重い荷物を持ち上げた時や咳・くしゃみをした時など、腹部に圧力がかかった際に意図せず尿が漏れてしまうことを「腹圧性尿失禁」といいます。
男性より女性に多く見られ、週に1回以上このような尿失禁を経験している女性は500万人以上とも言われています。
主な原因は、加齢や肥満、妊娠・出産、お腹の手術などによる膀胱・尿道の周りにある筋肉(骨盤底筋群など)の働きの低下です。体重の減量や骨盤底筋群のトレーニングで症状の改善が期待できます。症状が見られる場合は、早めに病院を受診しましょう。
腹圧性尿失禁の症状
腹圧性尿失禁には初期症状はありますか?
はじめはお腹に強く力を入れたときのみ尿漏れが見られますが、徐々に弱い力でも尿漏れするようになります。
腹圧性尿失禁は膀胱(尿をためる臓器)や尿道(尿の通り道)付近の筋肉が弱くなることで起こるため、初期には腹部に強く力を入れたときにのみ見られていた尿失禁が徐々に頻繁になり、弱い力を加えたときでも見られるようになることが考えられます。
排せつの問題はデリケートな話であり、受診をためらわれる方もいらっしゃいますが、腹圧性尿失禁は減量や骨盤底筋群のトレーニング、その他の治療によって改善が期待できるため、症状が見られる場合は早い段階での受診をおすすめします。
腹圧性尿失禁ではどのような症状がありますか?
咳やくしゃみをした時や、重いものを持った時などに尿漏れがみられます。
腹圧性尿失禁では尿漏れを防ぐ働きが弱くなっているため、腹部に力が加わり、膀胱に圧力がかかると尿漏れをきたします。
具体的には以下のような状況が代表的です。
- 咳・くしゃみをした時
- 笑った時
- 運動した時(特に走る、ジャンプをしたときなど)
- 重いものを持ち上げた時
腹圧性尿失禁の原因
腹圧性尿失禁の原因は何がありますか?
加齢や肥満、出産、お腹の手術などで、尿を溜め続けるために必要な筋肉が弱まることが原因です。
腹圧性尿失禁の原因は、尿道を締める筋肉(尿道括約筋)や骨盤を支える筋肉(骨盤底筋群)などの働きが弱くなることです。
代表的な原因
- 加齢
- 肥満
- 妊娠・出産
- お腹の手術、放射線治療
- 過度に腹圧がかかる運動(スポーツ)
- 骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)
具体的なメカニズム
具体的なメカニズムは、尿道括約筋不全と尿道過可動の2つに分けるとわかりやすいです。
尿道括約筋不全
尿道括約筋不全とは、尿道を締める筋肉が弱まることです。膀胱の出口や尿道には、排尿しない時(尿を溜めている時)に尿漏れを防ぐための筋肉(尿道括約筋)があります。この筋肉が傷ついて尿道を締める力が弱まると、お腹に力が入った時に尿が漏れやすくなります。
尿道過可動
尿道過可動とは、本来固定されている膀胱や尿道の位置がさまざまな理由で移動してしまい、尿道括約筋が機能しにくい状態になってしまうことです。膀胱や尿道の周りには複数の筋肉や靱帯(骨と骨をつなぐ構造)が存在し、臓器を正常な位置に保っています。これらの組織が緩み、膀胱や尿道の位置がずれてしまうことで、尿道括約筋がうまく働きにくくなります。
以前は腹圧性尿失禁の主な原因は尿道過可動であると言われていましたが、近年では上記の2つの原因がさまざまな割合で共存していると考えられています。
腹圧性尿失禁の検査・診断
腹圧性尿失禁のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
以下のような症状が見られる場合、腹圧性尿失禁が考えられます。
- 咳・くしゃみをした際の尿漏れ
- 運動時(特に走ったりジャンプをした際)の尿漏れ
- 重いものを持った際の尿漏れ
また、腹圧性尿失禁になりやすい人の特徴に、以下が挙げられます。
腹圧性尿失禁の治療・対処法
腹圧性尿失禁の場合、主にどのような治療をしますか?
重症度に応じて減量や骨盤底筋のトレーニング、薬物治療、手術などを行います。
腹圧性尿失禁の治療としては以下のようなものが挙げられます。
行動療法
減量
肥満や体重の急激な増加が腹圧性尿失禁の原因となっていることがあるため、そのような場合には減量を行います。
骨盤底筋群のトレーニング(骨盤底筋体操)
腹圧性尿失禁は骨盤にある筋肉が弱くなることによって起こるため、これらの筋肉をトレーニングすることで症状の改善が期待できます。
詳しくは以下をご参照ください。
薬物療法
喘息の治療などにも使われるクレンブテロール(スピロペントⓇ)という薬は、腹圧性尿失禁に対して保険適用があります。また、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの漢方薬が用いられることもあります。
手術療法
行動療法や薬物療法の効果が不十分な場合、手術が考慮されます。女性の場合、術式にはいくつかのバリエーションがありますが、メッシュ素材のテープなどを使って尿道を支えるようにするものが代表的です。男性で前立腺がん術後にしばらくしても治らない腹圧性尿失禁がある場合、膀胱の出口のあたりに尿道を締まりやすくする機械を埋め込む手術もあります。
その他
骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)があり、腹圧性尿失禁が続く場合は、手術の他にシリコン製のリング状の器具(ペッサリー)などを腟に入れて、膀胱や子宮を本来の位置に戻すこともあります。
参考文献
日本泌尿器科学会.“尿が漏れる・尿失禁がある”.日本泌尿器科学会.https://www.urol.or.jp/public/symptom/04.html,(参照 2024-03-21).
日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編. 女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版. リッチヒルメディカル. 2019
岡村菊夫ほか.“高齢者尿失禁ガイドライン”.国立長寿医療研究センター.https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/guidelines.pdf,(参照 2024-03-21).
原沢製薬工業株式会社.“クレンブテロール錠10μg「ハラサワ」”.医薬品医療機器情報提供ホームページ.https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2259006F1098203/,(参照 2024-03-21).
井上 雅ほか. 女性腹圧性尿失禁に対する補中益気湯の有用性に関する検討. 日本東洋医学雑誌 . 2010, 61, p.853-855.
受診の目安・何科を受診するべきか
腹圧性尿失禁が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
症状がある場合は、早めに泌尿器科か産婦人科を受診しましょう。
症状が見られる場合は、早めに泌尿器科を受診しましょう。女性の場合は産婦人科も考えられます。
腹圧性尿失禁の代表的な症状は以下の通りです。
- 咳・くしゃみをした際の尿漏れ
- 運動時(特に走ったりジャンプをした際)の尿漏れ
- 重いものを持った際の尿漏れ
排せつのトラブルはデリケートな問題のため、相談をためらう方も少なくありませんが、早めに治療を開始することで症状が悪化する前に対処することができます。心当たりがある場合は早めに受診しましょう。
腹圧性尿失禁の専門医がいる近くの病院はありますか?
腹圧性尿失禁の専門医がいる病院を見る腹圧性尿失禁に関連するその他の質問
咳やくしゃみをしたときに尿漏れをするのは腹圧性尿失禁ですか?
咳やくしゃみをしたときの尿漏れは腹圧性尿失禁の代表的な症状です。
咳・くしゃみをしたときに尿漏れが見られる場合、腹圧性尿失禁が最も考えられます。
ただし、腹圧性尿失禁を有する女性の30%に切迫性尿失禁(急に尿がしたくなり、我慢できずにもれてしまうこと)の合併が見られることが知られており、正確な診断のためには病院を受診することが大切です。
また、腹圧性尿失禁の場合でも原因は人によってさまざまであり、適切な治療のためにも病院の受診をおすすめします。
腹圧性尿失禁の原因については、詳しくは下記をご確認ください。
腹圧性尿失禁に骨盤底筋トレーニングは効果的ですか?
はい。腹圧性尿失禁に骨盤底筋トレーニングは効果があります。
腹圧性尿失禁は骨盤の筋肉などの働きが弱くなることによって起こるものです。
骨盤底筋トレーニング(骨盤底筋体操)は、減量と並んで腹圧性尿失禁に対してまず行われる治療です。
具体的な骨盤底筋のトレーニング方法として代表的なのは、お腹や太ももに力を入れないようにしながら、腟の周りや肛門の前、尿道の付け根あたりの筋肉のみを収縮させる運動です。
決まった方法がないため、他にもフィットネスと同時に行う方法や呼吸を意識する方法、器具・機械を使用する方法などさまざまなバリエーションがあります。
このトレーニングは半年以上など継続して行うことで効果が実証されているため、継続することが一番重要です。1日何回やってもいいので、テレビ・ネットを見ている時や、立ち上がるタイミング、お風呂に入っている時、寝る前など、生活に取り入れて少しずつでも毎日続けるようにしましょう。
腹圧性尿失禁の原因については、詳しくは下記をご確認ください。
参考文献
日本泌尿器科学会.“尿が漏れる・尿失禁がある”.日本泌尿器科学会.https://www.urol.or.jp/public/symptom/04.html,(参照 2024-03-21).
日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編. 女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版. リッチヒルメディカル. 2019
岡村菊夫ほか.“高齢者尿失禁ガイドライン”.国立長寿医療研究センター.https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/guidelines.pdf,(参照 2024-03-21).
Hunkyung Kim et al. The effects of multidimensional exercise treatment on community-dwelling elderly Japanese women with stress, urge, and mixed urinary incontinence: a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud
. 2011, 48, p.1165-1172.
腹圧性尿失禁について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「腹圧性尿失禁」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 咳・くしゃみ、重いものを持つ、走る、階段を上るなど、お腹に力がかかったときに尿意を伴わずに尿が漏れてしまうことがありますか?
- 尿を我慢できないと感じ、トイレに急ぐときがありますか?
腹圧性尿失禁に関連する病気・症状
この記事の監修医師
秋元 隆宏 先生
東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
【経歴】 東北大学医学部医学科 卒業 三井記念病院 臨床研修 三井記念病院 泌尿器科 東京大学医学部付属病院 泌尿器科・男性科 自治医科大学 腎泌尿器外科学講座 泌尿器科学部門 病院助教 琉球大学医学部システム生理学講座 東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2020/09/03