前立腺肥大症

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前立腺肥大症の手術によるデメリットや、手術後の生活に生じるデメリットはありますか?

自治医科大学 泌尿器科

秋元 隆宏 監修

感染症や出血による合併症の他に、手術方法によっては術後に尿もれ(尿失禁)や射精障害、勃起障害が見られることがあります。

解説

前立腺肥大症の手術によるデメリットおよび手術後の生活に生じるデメリットとしては、以下のようなものがあります。手術方法に関しては「前立腺肥大を小さくする方法にはどのようなものがありますか?」をご参照ください。

手術のデメリット

感染症

基本的に内視鏡の手術は、尿道から膀胱側に水を流しながら行うため、細菌が入ることがあります。術後も発熱が続く場合は、感染症にかかっている可能性があります。この場合は抗菌薬による治療が必要になり、入院期間を延長して治療することがあります。

出血

前立腺は生殖器の1つであり、血流がかなり豊富です。手術方法が改良されて出血のリスクは減っていますが、出血量が多いと命に関わりうるため、輸血が必要になる可能性があります。

痛み

術中および術直後は麻酔の効果で痛みがあまりありませんが、体に傷が付くため、術後は痛みを生じることが多いです。特に術後、尿道内に入れた尿道バルーン(治療用の特殊な風船)が尿道と擦れることで、尿道の先端が痛むことがあります。また、前立腺がある陰嚢(いんのう:たまのふくろ)の裏の辺り(会陰部)が痛むこともあります。
痛み止めの種類はいくつもあり、痛みの種類によってはその他の合併症も考える必要があるため、我慢せずに担当医に報告しましょう。

尿道狭窄

尿道に内視鏡を挿入するなどしたことで尿道に炎症が生じると、その傷が縮こまって治ることがあります。術後しばらく(3ヶ月程度など)経ったところで、尿が出しにくくなるなどの変化が出ていたら、我慢せずに担当医に相談しましょう。

他の臓器の損傷

前立腺は膀胱と繋がっており、膀胱は水分が充満するとかなり薄くなります。また、前立腺の真裏には便を溜める「直腸」という臓器もあります。これらのことから、非常に稀ではありますが、手術によって前立腺以外の臓器を損傷するリスクがあります。このような場合には、開腹手術をしたり、入院期間を延長して治療を行ったりする必要があります。

麻酔や薬剤の使用によるデメリット

麻酔の副作用の他、初めて投与される薬に対してアレルギーを起こしてしまう、薬が体に合わないといったことが起こりえます。気になる症状があれば担当医に適宜相談しましょう。

腸閉塞、便秘

いくつかの薬の副作用や環境の変化の影響もありますが、特に術後ベッド上で長時間寝ていると、腸の動きが悪くなり、便秘になったり、食事がうまく流れずに吐き戻してしまったりすることがあります。それらを予防するために、術後の日中は痛み止めを使ってでも歩きましょう。また、食事をよく噛んで食べることや、ガムなどを摂取することも有用と言われています。

その他

入院期間やその前後の期間は治療に専念する必要があり、環境が普段と変わるため、いつも通りの生活ができなくなることに注意しましょう。また、経済的な負担もありますので、詳しくは担当医や会計に詳しい病院の事務の方に相談しましょう。

手術後の生活に生じるデメリット

尿漏れ(尿失禁)

前立腺が大きくなることで尿を止める筋肉の働きが弱っていた場合、前立腺による閉塞を取り除いた後、逆に尿を止めにくくなることがあります。この場合は、骨盤底筋体操などに取り組んで、尿道を絞める筋肉を地道に鍛えることが重要です。気になる場合は、やり方などを担当医に聞きましょう。

射精障害

前立腺は精液の一部を作っており、精巣から精子を運ぶ精管は、前立腺の中を通って尿道に繋がっています。また、射精する時は膀胱の出口が締まる必要がありますが、前立腺肥大の手術方法によっては術後この出口がうまく締まらなくなるため、射精ができなくなることが多いです。

勃起障害・勃起不全(ED)

前立腺の周りには、勃起に関わる神経が網のように張り付いています。そのため、前立腺の手術の影響でそれらの神経系にダメージが生じると、EDを生じることがあります。内服の治療薬で改善することもありますので、症状がある場合などは担当医に相談しましょう。

個人の見解

手術を受ける際は、しっかりと担当医と相談してデメリットも認識した上で、メリットと比較して受けましょう。施設によって手術方法や手法に違いがあるため、一概には言えませんが、手術は事前にしっかりと準備をした上で、手術当日は基本的に適切な麻酔を用いて、複数人での監視の下で、できるだけ安全に、体に負担の少ない方法で行います。しかしながら、期待通りの治療効果が得られない場合や、症状の軽重は異なりますが合併症が生じる可能性があります。合併症にあわせた対応策があるので、術後何か気になることがあったら、症状が悪化しきる前に、なるべく我慢や遠慮はせずに担当医に相談しましょう。

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