アトピー性皮膚炎でステロイドを塗ってもまだかゆい場合、他の治療法はありますか?

タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏などの抗炎症外用薬やスキンケア、生活習慣の改善も有効です。

解説

ステロイド外用薬以外の治療法としては、以下のような方法があります。

タクロリムス軟膏(抗炎症外用薬)

ステロイド外用薬では治療が困難であったアトピー性皮膚炎皮疹に対しても有効であるという研究報告があります。しかし、タクロリムス軟膏には、16歳以上に使用可能な 0.1%軟膏と2〜15歳の小児用の0.03%軟膏があり、2歳未満の小児には安全性が確立していないため使用できません。

デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害薬)

免疫細胞の活性化を抑制することで炎症を抑える軟膏です。しかし、デルコシチニブ軟膏は免疫抑制作用を有するため、皮膚の感染症部位には塗布してはいけません。

ジファミラスト軟膏

ホスホジエステラーゼ4という酵素の働きを抑えることで、炎症を抑える軟膏です。この薬は免疫細胞に作用するため、皮膚の感染症が起こるリスクがあります。薬を使う前に、皮膚に感染症がないかよく確認し、使用中も感染症に注意する必要があります。局所の副作用として、皮膚の感染症やかぶれ、かゆみ、色素沈着障害(色の変化)などの症状が出ることがあります。

JAK阻害内服薬

アトピー性皮膚炎の発症に関わる複数のサイトカインのシグナル伝達に関与するJAK-STATという経路を阻害することで、炎症を抑えます。現在、バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブの3種類があります。主な副作用には、感染症(風邪、単純ヘルペス帯状疱疹蜂窩織炎肺炎など)、深部静脈血栓症などがあります。効果が高いため、症状の寛解を目指す治療に適した薬です。

バリシチニブ

JAK1とJAK2を選んで一時的にブロックする薬です。2歳以上の患者さんに用います。

ウパダシチニブ

JAK1をブロックする薬です。12歳以上かつ体重30kg以上の小児、および成人に用います。

アブロシチニブ

JAK1をブロックする薬です。12歳以上の小児、および成人に用います。

生物学的製剤(注射製剤)

デュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブがあります。

デュピルマブ

IL-4とIL-13を介したシグナル伝達に関与する受容体に結合して、IL-4やIL-13が引き起こす信号をブロックする薬です。

トラロキヌマブ、レブリキズマブ

IL-13に結合し、IL-13が引き起こす信号をブロックする薬です。
これらの薬剤は、アトピー性皮膚炎の原因となる炎症反応を抑える働きをします。効果が高く、その効果が長く続きます。主な副作用には、結膜炎(目の炎症)と注射した場所の反応がありますが、重大な副作用が少なく、安全性が高いことから、症状の改善だけでなく、症状が再発しないようにするためにも適した薬です。

ネモリズマブ

IL-31という、かゆみに関与するサイトカインの受容体に結合し、IL-31が引き起こす信号をブロックします。アトピー性皮膚炎に伴うかゆみに対し有効です。主な副作用としては、皮膚症状の悪化があり、その際の対応については主治医と相談することが大切です。

紫外線療法

抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬、保湿剤などの治療が効かない場合や、副作用が出てしまう場合に考えられる治療法です。紫外線療法を行う場合には、まずその適応を十分に考慮し、紫外線の作用や照射量、急性の皮膚障害や感染症悪化、皮膚がんなどの長期的な副作用について十分に理解している、紫外線療法に熟練した医師によって慎重に行われる必要があります。

スキンケア

保湿外用薬(保湿剤・保護剤)の使用は、アトピー性皮膚炎で低下している角質層の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することで、アレルゲン(アレルギーの原因物質)の侵入予防と皮膚炎の再燃予防、かゆみの抑制につながると言われています。

生活習慣の改善

適切な入浴方法や衣類の選び方、ストレス管理が推奨されています。特にアトピー性皮膚炎では皮脂汚れに加え、(汗などの)体液の付着や黄色ブドウ球菌などの感染性病原体の定着がみられ、皮膚症状の悪化の原因となります。そのため、皮膚を清潔に保つことが重要です。

これらの治療法を組み合わせることが推奨されていますが、自己判断は危険ですので医師に相談することが重要です。

公開日

最終更新日

東日本橋内科クリニック 循環器内科 院長

白石 達也 監修

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(参考文献)

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