甲状腺未分化癌の進行速度は他の甲状腺癌と違う?ステージ別の余命や治療は?
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甲状腺未分化癌の進行速度は、他の甲状腺がんと何が違いますか?
甲状腺未分化癌の進行速度は、他の甲状腺がんと何が違いますか?
甲状腺未分化癌は数週間で急速に増大し、周りの組織に拡がり転移する他の甲状腺がんより著しく進行が速いがんです。
甲状腺未分化癌は、数週間という極めて短い期間でがんが急速に大きくなり、周囲の臓器へ急激に浸潤する(がんが周りの組織にじわじわ食い込みながら拡がる)点で他の甲状腺がんと違います。
硬い首のしこりとして発症した未分化癌は、数週間で気管や食道などの周囲の臓器へ浸潤し、呼吸困難や嚥下障害を起こします。さらに、遠隔転移(甲状腺から遠く離れた臓器に拡がること)も高頻度かつ早期に起こり、未分化癌の臨床経過は「急速に致死的になる」と言われます。
一方、乳頭癌や濾胞癌などの分化癌(未分化癌と異なり甲状腺の正常な細胞の性質をある程度保っているがん)は一般的に進行がゆっくりで、数年単位で経過を見てもがんがあまり変化しないことが多いとされます 。
未分化癌は、がん細胞の増殖の速さ・周りの組織や臓器に浸潤する速さ・転移を起こす時期のすべてにおいて、他の甲状腺がんより著しく速いという特徴があります。
(参考文献)
Keith C Bible et al. 2021 American Thyroid Association Guidelines for Management of Patients with Anaplastic Thyroid Cancer. Thyroid. 2021, 31, 337-386.
Robert I Haddad et al. NCCN Guidelines® Insights: Thyroid Carcinoma, Version 1.2025. J Natl Compr Canc Netw. 2025, 23, e250033.
Efstathios T Pavlidis et al. Update on current diagnosis and management of anaplastic thyroid carcinoma. World J Clin Oncol. 2023, 14, 570-583.
Livia Lamartina et al. ENDOCAN TUTHYREF network consensus recommendations: Anaplastic thyroid cancer. Ann Endocrinol (Paris). 2025, 86, 101788.
甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会.“甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024”.日本内分泌外科学会.https://jaes.umin.jp/info/files/guideline2024.pdf,(参照 2026-03-23).
甲状腺未分化癌のステージ別(転移の有無別)での余命は、適切に治療した場合、どのくらいですか?
甲状腺未分化癌のステージ別(転移の有無別)での余命は、適切に治療した場合、どのくらいですか?
転移がない場合は数ヶ月〜1年程度の余命ですが、転移がある場合はより短く3ヶ月程度と報告されています。
甲状腺未分化癌の余命(予後)は、適切に治療した場合、がんの病期で大きく異なります。全体としての生存期間中央値(患者さんの半分がその期間まで生き残り、半分がそれより前に亡くなる期間)は約5ヶ月と言われています。
ⅣA期の予後は比較的良好で、生存期間中央値は約9ヶ月、1年生存率は53.3%、2年生存率は40.0%と報告されています。ⅣB期では生存期間中央値は約4.8ヶ月、1年生存率は36.5%、2年生存率は31.0%と報告されています。ⅣC期は遠隔転移を伴うため最も厳しく、生存期間中央値は約3ヶ月、1年生存率は13.1%でした。
ⅣA期およびⅣB期では、手術と放射線治療を組み合わせた治療で予後が改善し、2年生存率はそれぞれ50.0%、35.7%だったという報告があります。ただし、余命に関する報告は施設による差が大きいようです。
(参考文献)
Keith C Bible et al. 2021 American Thyroid Association Guidelines for Management of Patients with Anaplastic Thyroid Cancer. Thyroid. 2021, 31, 337-386.
Efstathios T Pavlidis et al. Update on current diagnosis and management of anaplastic thyroid carcinoma. World J Clin Oncol. 2023, 14, 570-583.
Tian-Run Liu et al. Treatment and Prognosis of Anaplastic Thyroid Carcinoma: A Clinical Study of 50 Cases. PLoS One. 2016, 11, e0164840.
Anastasios Maniakas et al. Evaluation of Overall Survival in Patients With Anaplastic Thyroid Carcinoma, 2000-2019. JAMA Oncol. 2020, 6, 1397-1404.
甲状腺未分化癌のステージIVまたは再発がんでは、どのような治療を行いますか?
甲状腺未分化癌のステージIVまたは再発がんでは、どのような治療を行いますか?
手術が可能な場合は、手術・放射線治療・化学療法を組み合わせた集学的治療を行います。手術ができない場合は、全身療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害剤)や緩和ケアを行います。
甲状腺未分化癌は、すべてステージⅣに分類され、治療方針はがんの広がりや手術で切除できるかどうか、全身状態、遺伝子異常に基づいて決定されます。
ⅣA期(T1〜T3a(がんが甲状腺の中にとどまっている)、M0(遠隔転移がない))は甲状腺未分化癌としては比較的初期の段階であり、根治的な切除が可能であれば手術を中心に治療を行います。がんの切除後は化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療を行います。
ⅣB期(T3b(前頸部の筋肉に広がる)またはT4(気管・食道・大きな血管などへ広がる)、M0(遠隔転移がない))は進行例であり、手術で切除できるかどうかの判断が重要となります。がんの切除ができずBRAF V600E変異が陽性の場合は、BRAF阻害薬(ダブラフェニブ)とMEK阻害薬(トラメチニブ)による治療を行います。BRAF遺伝子以外のがんを成長させる遺伝子異常がある場合は、RET阻害薬やTRK阻害薬などの分子標的薬の使用が検討されます。手術の適応がなく、これらの遺伝子異常が認められない場合は、化学療法や放射線治療などを組み合わせた集学的治療が行われます。
ⅣC期(M1(肺や脳など離れた臓器に転移がある))は遠隔転移を伴い、全身療法(薬物療法)が中心となります。BRAF V600E変異が陽性の場合は、BRAF阻害薬(ダブラフェニブ)とMEK阻害薬(トラメチニブ)による治療を行います。BRAF遺伝子以外のがんを成長させる遺伝子異常がある場合は、RET阻害薬やTRK阻害薬などの分子標的薬の使用が検討されます。適応となる遺伝子異常を認めず、治療が難しい場合、多標的分子標的薬(レンバチニブ)の使用が検討されます。緩和ケア(症状を和らげる治療)も早めに行います。
甲状腺未分化癌が再発した場合は、再発した場所や広がり方、全身状態に応じて治療を選びます。再発がんが首の周囲に限局し手術で切除できる場合は、手術や放射線治療が検討されます。一方、切除が難しい場合や転移を伴う場合は、全身に効く薬物療法が中心となります。遺伝子異常がある場合は、それに対応した分子標的薬(例:ダブラフェニブ、トラメチニブ、RET阻害薬、TRK阻害薬など)が用いられ、遺伝子異常がない場合はレンバチニブなどの使用が検討されます。
甲状腺未分化癌は進行が非常に速いため、早期に治療方針を決定し、症状を和らげる緩和ケアも並行して開始することが重要です。
(参考文献)
Keith C Bible et al. 2021 American Thyroid Association Guidelines for Management of Patients with Anaplastic Thyroid Cancer. Thyroid. 2021, 31, 337-386.
Robert I Haddad et al. NCCN Guidelines® Insights: Thyroid Carcinoma, Version 1.2025. J Natl Compr Canc Netw. 2025, 23, e250033.
Efstathios T Pavlidis et al. Update on current diagnosis and management of anaplastic thyroid carcinoma. World J Clin Oncol. 2023, 14, 570-583.
Livia Lamartina et al. ENDOCAN TUTHYREF network consensus recommendations: Anaplastic thyroid cancer. Ann Endocrinol (Paris). 2025, 86, 101788.
甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会.“甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024”.日本内分泌外科学会.https://jaes.umin.jp/info/files/guideline2024.pdf,(参照 2026-03-23).
国立がん研究センター.甲状腺がん 治療.国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト,https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html(参照 2026-03-23)
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はまさき医院 糖尿病・内分泌科
濵﨑 秀崇 監修
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