大動脈弁狭窄症
監修医師白石 達也東日本橋内科クリニック 内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
大動脈弁狭窄症とは
心臓には4つの弁があり、血液を一方向に流すための大事な部品です。弁の働きが悪くなった状態が心臓弁膜症です。放置することで心不全に至ります。大動脈弁は、心臓から血液が勢いよく出ていく部分の弁です。加齢変化が多くを占めます。
「大動脈弁狭窄症」とはどのような病気ですか?
大動脈の弁が硬くなり、心臓から血液を送り出しづらくなる病気です。
心臓は血液を送り出すポンプの働きをしており、大動脈には心臓から血液が送り出されています。心臓と大動脈の間には弁(送り出した血液の逆流を防ぐフタ)がついており、それが「大動脈弁」と呼ばれます。
大動脈弁狭窄症は、この大動脈弁が開きづらくなって血流を送り出しにくくなった状態です。加齢や生活習慣病に伴う動脈硬化、生まれながらの病気が原因となって発症します。
大動脈弁狭窄症の症状
大動脈弁狭窄症の症状として何が考えられますか?
動いた時の胸痛、息切れの増加などが多いですが、失神や突然死を起こすこともあります。
症状としては、息切れや呼吸の苦しさ、胸痛などが起こりやすいです。最初は動いた時に起こりやすいですが、病気が進行すると安静時にも起こるようになります。
さらに重症化すると、失神や突然死などを引き起こすこともあります。
大動脈弁狭窄症には初期症状はありますか?
初期にはほとんど症状はありません。病気が進行すると、胸痛や息切れなどが出現します。
初期の段階ではほとんど症状はありません。そのため、検診の心電図異常などで偶然発見されることも少なくありません。
ある程度病気が進行してくると、以下のような症状が出現することがあります。
ただし、高齢の方の場合、無意識のうちに活動を制限してしまうために傍目からは症状が分かりにくいといったケースも少なくありません。休み休みでないと坂道を登れなくなった、階段を2階まで上がるのが辛い、といった場合にも、大動脈弁狭窄症などの心臓の病気の可能性があるため注意が必要です。
大動脈弁狭窄症の原因
大動脈弁狭窄症の原因には何がありますか?
加齢による動脈硬化が最も多いですが、若い方では大動脈弁の生まれつきの異常が原因となることもあります。
大動脈弁狭窄症の原因としては、主に以下の2つがあります。
動脈硬化
最も多い原因であり、加齢や生活習慣病によって引き起こされます。
先天性の異常
若い方では、生まれつき(先天性)の弁の形の異常が原因となることが多いです。先天性の異常で最も多いのは、本来3枚のフタで構成される大動脈弁が2枚のフタしか持たない「2尖弁」というケースです。
大動脈弁狭窄症の治療・対処法
大動脈弁狭窄症への対処法は?
年齢や病気の進行具合で、方針が大きく変わります。まずは医療機関を受診してください。
大動脈弁狭窄症に対して行う大動脈弁置換術とはどのような手術ですか?
悪くなった弁を人工弁に置き換える手術です。手術で直接縫う方法と胸を切らずにカテーテルを使う方法があります。
大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術は、2種類あります。
①大動脈弁置換術
胸を切り開いて行う開胸手術であり、大動脈弁を人工弁に取り換える手術です。複数の弁に対する治療や、冠動脈バイパス術などと一緒に行われることもあります。開胸手術のため、体にかかる負担が大きいです。
②経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
胸を切らずに、足の付け根の太い血管からカテーテルと呼ばれる管を入れます。心臓に到達したら、狭くなっている弁を押し広げて、そこに折りたたまれていた人工弁を開いて、大動脈弁を入れ替えます。胸を大きく切らないため、体の負担が少ない治療であり、高齢者など通常手術に耐えられない方に対して行われます。なお、カテーテルを入れる場所は、足の付け根以外に、鎖骨の下や心臓に近い胸部のこともあります。
近年では、低リスクの方においても手術成績がよいことが報告されており、適応の拡大が議論されています。
大動脈弁狭窄症の手術成功率はどれくらいですか?
手術に伴う入院中の死亡率は約3%とされています。
大動脈弁狭窄症に対する手術は2種類あり、それぞれで若干治療の成績が異なります。施設によっても手術成績は違いますが、概ねどちらの手術でも90%以上の方で成功したとする報告があります。ただし、大動脈弁狭窄症の手術では高齢であったり、もともと心臓の動きが悪くなっている方も多いため、成功の確率・手術の難易度・リスクは個人差が大きいです。
①大動脈弁置換術
手術の成功率は90%以上、手術時の死亡率は3%前後(80歳以上の高齢者では5%程度)とされています。
②経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
高齢者など通常手術に耐えられない方に対して行われ、手術の成功率は90%以上、治療後の30日以内死亡率は2%以下とされています。
以前は外科治療が困難な超高齢者やリスクが高い方のみがTAVIの対象となっていましたが、近年では適応となる対象も広がっているため、治療成績もよくなってきています。
治療の詳細については以下のページをご確認ください。
参考文献
日本循環器学会ほか.“2020 年改訂版 弁膜症治療のガイドライン”..https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020IzumiEishi.pdf,(参照 2024-01-31).
NEJM. 2019 May 2;380(18):1695-1705.
大動脈弁狭窄症の場合、主にどのような治療をしますか?
大動脈弁狭窄症の治療は主に手術で行います。狭まった大動脈弁を人工弁に交換する手術が一般的です。
大動脈弁狭窄症に対する治療としては、以下のようなものが挙げられます。
大動脈弁置換術
大動脈弁狭窄症の根本的な治療の中で一般的なのは、手術によって硬くなった大動脈弁を人工弁に取り換える「大動脈弁置換術」です。最近では、高齢で外科的な手術が困難であるといった場合には、カテーテルを使用した大動脈弁置換術(TAVI)が行われることも多くなっています。
薬物治療
受診の目安・何科を受診するべきか
大動脈弁狭窄症が疑われる場合、何科を受診したらよいですか? また、病院を受診する目安はありますか?
循環器科の受診が必要となります。症状からは気づきにくい病気ですが、胸が苦しい、よく息切れするといった場合には早めに受診しましょう。
胸が苦しい、息切れが増える等の症状がある場合には、早めに循環器内科を受診しましょう。
ただし、大動脈弁狭窄症は初期には症状が乏しい病気のため、ご自身で疑うのは困難です。健診での心雑音などがきっかけとなって発見されることもあるため、なるべく定期的に健診を受けるようにすることが望ましいです。
大動脈弁狭窄症の専門医がいる近くの病院はありますか?
大動脈弁狭窄症の専門医がいる病院を見る大動脈弁狭窄症の経過・予後
大動脈弁狭窄症にかかった場合、余命はどのくらいですか?
重症化してからの生存期間は一般的には2~5年ほどとされています。
胸痛や失神、心不全症状などが出現してからの余命は2〜3年程度とされています。また、無症状であったとしても、手術をしなかった場合の5年生存率は50%程度とされており、非常に回復しづらい疾患です(2020年10月報告)。
なお、高齢者に大動脈弁置換術を施した場合、5年生存率は約47%と報告されていますが、合併症や体の状態によって個人差が大きいです。
また、近年多く実施されるようになったカテーテル治療については、外科治療と同程度の治療効果が期待できるとする報告もあり、外科治療が困難な高齢者の方などに対し広く行われるようになってきています。
大動脈弁狭窄症に関連するその他の質問
大動脈弁狭窄症に突然死のリスクはありますか?
大動脈弁狭窄症の進行によって突然死が引き起こされることはあります。
大動脈弁狭窄症が進行すると、心臓にかかる負担が増加することで、危険な不整脈等による突然死が引き起こされることがあります。特に高齢の方の場合、症状の自覚が乏しいまま知らず知らず病気が進行してしまい、突然死につながることは少なくありません。
日常生活での息切れ、失神、胸の痛みなどの症状がある場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
大動脈弁狭窄症と併発しやすい病気にはどのようなものがありますか?
心不全や狭心症などを併発することがあります。
大動脈弁狭窄症は動脈硬化により引き起こされる病気のため、以下のようないわゆる生活習慣病がある方が発症しやすいとされています。
また、病気が進行して心臓に負担がかかってしまうことで、以下のような心臓の病気を引き起こす頻度が高くなります。
心不全
心臓に負担がかかることで、心臓の機能が低下してしまった状態です。
狭心症
心臓に栄養を送る血管(冠動脈)の血流量が低下することで、胸痛などの症状を引き起こします。
不整脈
心臓に負担がかかることで、様々な不整脈が出現しやすくなります。突然死につながるような危険な不整脈を引き起こしてしまうこともあります。
大動脈弁狭窄症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「大動脈弁狭窄症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 意識を一時失いましたか?
- これまでに【心臓に雑音がある】と医師に言われたことがありますか?
- 息苦しさを感じますか?
大動脈弁狭窄症に関連する病気・症状
この記事の監修医師
白石 達也 先生
東日本橋内科クリニック 内科・循環器内科
京都大学医学部卒。田附興風会医学研究所北野病院で臨床研修、仁生社江戸川病院で循環器内科医として勤務。Ubie社での勤務を経て、東日本橋内科クリニック院長。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03