シュードアレシェリア症の症状は?シュードアレシェリア症/スケドスポリウム症
監修医師髙岡 真梨子平塚市民病院 皮膚科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
スケドスポリウム症とは
スケドスポリウムという真菌(カビ)が感染することで起こる病気です。皮膚に多いものの、全身に影響が及ぶ可能性もあります。ステロイドの長期内服などで免疫が低下している場合にリスクが高まります。
「スケドスポリウム症」とはどのような病気ですか?
スケドスポリウムという真菌(カビ)が引き起こす感染症です。皮膚に感染するほか、肺などの内臓にも感染します。
「スケドスポリウム症」とは、スケドスポリウム属に含まれる真菌(カビ)によって引き起こされる、比較的珍しい感染症です。怪我から感染し、皮膚の柔らかい所や目に感染します。また、菌を吸い込むことによって、肺を始めとする内臓に感染して、炎症を起こすこともあります。
スケドスポリウム属の真菌は、土壌や沼地など自然界に多く存在しています。傷から感染して、皮膚に結節や膿疱(膿のたまった水膨れ)を形成する場合には「皮膚スケドスポリウム症」と呼びます。
また、臓器移植後や血液の悪性疾患(白血病などの血液がん)などのために免疫機能が低下した患者さんでは、「侵襲性スケドスポリウム症」と言って、肺、皮膚、脳、心臓などの内臓に感染します。
菌が血液の流れに乗って多臓器に広がることがあり、この場合は「播種性スケドスポリウム症」と呼ばれます。
一般的に、スケドスポリウム症は、免疫機能が低下している人で起こりやすい病気です。しかし、免疫機能が正常な人でもまれに皮膚で発症したり、津波による溺水のあとに肺で発症した報告が複数あり、持病がなくとも注意が必要なことがあります。
参考文献
一般社団法人日本医真菌学会.“一般社団法人日本医真菌学会 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン”.一般社団法人日本医真菌学会.https://jsmm.org/pdf/draft_zenbun.pdf,(参照 2024-06-06).
一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会.“造血細胞移植ガイドライン 真菌感染症の予防と治療(第2版)”.一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会.https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/01_04_shinkin02.pdf,(参照 2024-06-06).
畠山裕司ら. Scedosporium属が分離された津波肺の3症例. 日本臨床微生物学雑誌. 2012, 22, 289-297.
スケドスポリウム症の症状
スケドスポリウム症には初期症状はありますか?
皮膚の深いところに硬いしこりができるなど、感染した部位によってさまざまな症状が出ます。
手足など怪我をした部位から菌が入り込み、皮膚の深いところで硬いしこりや膿疱(膿のたまった水ぶくれ)が発生します。症状は急に広がって、赤みや痛みを伴うことがあります。
深いケガをした場合などでは皮膚以外の感染も考えられ、関節などに炎症を起こして、関節の痛みや腫れを感じるかもしれません。菌を肺に吸い込んだ場合などでは、咳、痰、血痰、だるさなどの症状が現れます。
多くの場合は、上記のように菌が入り込んだ場所に限った症状ではじまりますが、菌が血液に乗って広がってしまうと他の臓器の症状も伴うようになります。
特に、免疫機能が低下している方は、スケドスポリウム症を起こしやすい状態です。スケドスポリウム属の真菌(カビ)が存在する自然が多い場所に出かけた後(特に怪我をしたとき)には、注意が必要です。
参考文献
一般社団法人日本医真菌学会.“一般社団法人日本医真菌学会 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン”.一般社団法人日本医真菌学会.https://jsmm.org/pdf/draft_zenbun.pdf,(参照 2024-06-06).
日本呼吸器学会.“呼吸器の病気 肺真菌症”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-09.html,(参照 2024-06-06).
畠山裕司ら. Scedosporium属が分離された津波肺の3症例. 日本臨床微生物学雑誌. 2012, 22, 289-297.
W. Liu, et al. Medicine (Baltimore). 2019, 98(41), e17535.
スケドスポリウム症ではどのような症状がありますか?
皮膚に硬いしこりができたり、膿が出てきたりします。その他、感染した臓器によってさまざまな症状が出ます。
皮膚に感染した場合
手足など傷が出来た場所で、硬いしこりや膿疱(膿のたまった水ぶくれ)が生じ、比較的急に広がって赤みや痛みを伴います。その後は膿瘍(膿のかたまり)になったり、自然と膿が流れ出てきたり、ただれたりします。菌がリンパの流れにのると、少し離れた皮膚にも症状が出てくることもあります(転移性病巣)。他の臓器にも感染が広がることがあります(播種)。
内臓に感染した場合
菌を吸い込んだり、怪我をきっかけに菌が体内に入り込むことで感染し、肺、脳・髄膜(脳・脊髄を覆う膜)、心臓などに感染を起こすことがあります。さらに、血液の流れにのって、肝臓や腎臓などさまざまな臓器に病気が広がることもあります(播種)。肺炎では咳、痰、血痰、発熱や息苦しさなど、感染した臓器による症状が現れます。
参考文献
一般社団法人日本医真菌学会.“一般社団法人日本医真菌学会 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン”.一般社団法人日本医真菌学会.https://jsmm.org/pdf/draft_zenbun.pdf,(参照 2024-06-06).
日本呼吸器学会.“呼吸器の病気 肺真菌症”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-09.html,(参照 2024-06-06).
畠山裕司ら. Scedosporium属が分離された津波肺の3症例. 日本臨床微生物学雑誌. 2012, 22, 289-297.
W. Liu, et al. Medicine (Baltimore). 2019, 98(41), e17535.
スケドスポリウム症の原因
スケドスポリウム症の原因は何がありますか?
自然界に存在するスケドスポリウム属の真菌に感染することが原因です。免疫力の低い人に多くみられます。
自然界に存在するスケドスポリウム属の真菌(カビ)に感染することが原因です。
スケドスポリウム属の真菌は、土壌・腐敗物・下水など、自然界に広く存在しています。小さな傷から菌が入り込むことや、菌を吸い込むことをきっかけに感染します。
持病として関節リウマチなどの膠原病、間質性肺炎、血液の病気、臓器移植後などの、免疫機能が低下した人は感染リスクが高いと考えられています。皮膚では持病のない人でも起こすことがあります。
また、地震・津波による被災や溺水などもスケドスポリウム症のリスク因子として知られており、このような状況では持病のない健康な人の発症も報告されています。
スケドスポリウム症の検査・診断
スケドスポリウム症のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
スケドスポリウム症に特徴的な症状はなく、自分でスケドスポリウム症を疑うのは難しいと考えられますが、感染を起こしやすい状況や主な症状としては以下が参考になります。
心当たりがある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
皮膚に感染を起こしやすい状況
以下のような場合には、皮膚に感染を起こしやすいです。
- 持病やその治療のために免疫機能が低下している
- 自然環境が多い場所に行った時に身体に傷を作った
皮膚に感染を起こした場合の症状
- 皮膚に硬いしこりや膿疱(膿のたまった水ぶくれ)ができる
- 赤くなって痛みがある
- 膿が出てきた
など
肺に感染を起こしやすい状況
以下のような場合には、肺に感染を起こしやすいです。
- 地震・津波で被災し、汚水を吸い込んだ
肺に感染を起こした場合の症状
など
なお、感染した部位によって症状はさまざまです。詳細は「スケドスポリウム症ではどのような症状がありますか?」をご参照ください。
症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでもセルフチェック可能ですので、ぜひご活用ください。
参考文献
一般社団法人日本医真菌学会.“一般社団法人日本医真菌学会 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン”.一般社団法人日本医真菌学会.https://jsmm.org/pdf/draft_zenbun.pdf,(参照 2024-06-06).
日本呼吸器学会.“呼吸器の病気 肺真菌症”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-09.html,(参照 2024-06-06).
畠山裕司ら. Scedosporium属が分離された津波肺の3症例. 日本臨床微生物学雑誌. 2012, 22, 289-297.
W. Liu, et al. Medicine (Baltimore). 2019, 98(41), e17535.
スケドスポリウム症の治療・対処法
シュードアレシェリア症/スケドスポリウム症への対処法は?
まずは皮膚科を受診します。病原体が同定できれば、適切な薬物治療で治る可能性が高いです。
スケドスポリウム症の場合、主にどのような治療をしますか?
抗真菌薬(カビに対する薬)を使用します。膿がたまっている場合には排出するための処置を行います。
スケドスポリウム症は、真菌(カビ)による感染症ですので、抗真菌薬が治療の中心となります。
どの臓器に感染しているかに関わらず、いずれもボリコナゾール(ブイフェンドⓇ)という抗真菌薬が推奨されています。ただし、飲み合わせの悪い薬が多く、副作用も多いため使用できない場合もあります。ボリコナゾール以外には「キャンディン系」や「アゾール系」に分類される抗真菌薬の使用が考慮されます。
皮膚スケドスポリウム症の治療においては、抗真菌薬と併行して、しこりを切除したり、膿がたまった部分を切開して膿を排出したりすることが重要です。もともと持病の治療で免疫機能が低下している患者さんでは、可能であれば薬の量を減らすなど調整することがあります。
また、皮膚以外に感染した場合で、肺結節(できもの)のように外科的切除で取り切れる範囲の感染であれば、手術が考慮されることがあります。
受診の目安・何科を受診するべきか
スケドスポリウム症が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
症状に合わせた診療科を受診しましょう。持病で通院中であれば、主治医に相談することもおすすめです。
皮膚に、硬いしこりや膿疱(膿のたまった水ぶくれ)などができて広がってくる場合は、皮膚科を受診しましょう。
他の臓器に感染している場合には、臓器ごとの症状が出ます。
- 咳、痰が出る場合は呼吸器内科
- 関節のまわりが腫れたり痛む場合は整形外科
など、症状に合わせて診療科を選択することも考えられますし、判断できない場合はまずは一般内科やかかりつけ医でも問題ありません。
持病・治療のために免疫機能が弱いと言われて通院している場合は、主治医にも必ず報告しましょう。まずは主治医に連絡して指示を仰いだり、主治医のもとを受診するのもおすすめです。
状況に応じて、感染した臓器に合わせた診療科や、感染症専門の病院に紹介されることがあります。
シュードアレシェリア症/スケドスポリウム症の専門医がいる近くの病院はありますか?
シュードアレシェリア症/スケドスポリウム症の専門医がいる病院を見るスケドスポリウム症の薬
スケドスポリウム症は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
抗真菌薬で治療を行います。中でも主に使用する薬では、副作用に肝臓の障害などがあります。
感染した部位を問わず、主にボリコナゾール(ブイフェンドⓇ)という抗真菌薬で治療します。これは真菌感染症(カビによる感染症)に効果がある薬で、注射または錠剤、ドライシロップがあります。
副作用として以下が報告されており、特に肝臓の障害や視覚障害などに注意する必要があります。
重大な副作用
など
その他の副作用
5%以上
など
1〜5%未満
- 白血球減少
- 血小板減少症
- 目の異常感
- お腹のはり
- 胸の圧迫感
- 背部痛
- 高血糖
など
1%未満
など
頻度不明
- 貧血
- 甲状腺機能亢進症/低下症(身体の代謝の異常を起こす)
- 副鼻腔炎
- 胆嚢炎
- 高コレステロール血症
- 血尿
など
対処法・セルフケア
スケドスポリウム症の場合、日常生活で気を付けることはありますか?
治療薬を自分の判断で中断しないでください。気になることがあれば医師に相談しましょう。
治療中の注意点
症状がよくなったと思っても、医師に指示された期間は薬を続ける必要があります。自己判断で薬を中断せず、飲み忘れがないよう注意してください。
副作用も多く知られているので、気になる症状が現れたら、医師・薬剤師に相談しましょう。また、飲み合わせの悪い薬(一部サプリ・健康食品)も多いですので、治療中にかかりつけ医で定期薬を変更する場合などは、スケドスポリウム症の治療中であることを医師に伝え、相談しましょう。
予防における注意点
スケドスポリウム症は、特に免疫機能が低下している人(※)が発症しやすいことが知られています。スケドスポリウム症の原因菌は、汚水、腐った植物、土壌など自然界に広く分布しており、小さな傷から皮膚に感染します。自然が多い場所に出かける際などは特に、気付かないうちに傷が出来ないように心がけましょう。
※免疫機能が低下している人:臓器移植後や、白血病や悪性リンパ腫などの血液がん、関節リウマチなどの膠原病、間質性肺炎などの持病のために、ステロイド剤や免疫抑制剤、抗がん剤を使用している方など
参考文献
一般社団法人日本医真菌学会.“一般社団法人日本医真菌学会 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン”.一般社団法人日本医真菌学会.https://jsmm.org/pdf/draft_zenbun.pdf,(参照 2024-06-06).
Helena Nevalainen et al. Biological, biochemical and molecular aspects of Scedosporium aurantiacum, a primary and opportunistic fungal pathogen. Fungal Biology Reviews. 2018, 32, 156-165.
スケドスポリウム症で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
薬の追加・変更や処置を行う可能性があります。医師に相談してください。
最初に使う薬として推奨されるのは、ボリコナゾール(ブイフェンドⓇ)という抗真菌薬です。しかし、期待された効果が発揮されない場合は、治療を強化したり変更を考慮したりします。
通常、効果がない場合は、ボリコナゾールにミカファンギン(ファンガードⓇ)※またはカスポファンギン(カンサイダスⓇ)※という抗真菌薬を組み合わせます。微生物検査の結果で、薬の効きやすさが判明した場合には、結果によっては別の抗真菌薬に変更することがあるかもしれません。
さらに、肺結節(できもの)のように感染部位を手術で取り切ることができる場合、外科的切除が行われることがあります。
※現時点(2024年6月)では、ミカファンギン、カスポファンギンにはスケドスポリウム症に対する効能・効果は承認されていません。ただし、「希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン(ドラフト版)」p343において、ボリコナゾールとの併用療法を考慮することが、推奨度III-A(エビデンスレベル低、強い推奨)として記載されています。
スケドスポリウム症に関連するその他の質問
スケドスポリウムと津波肺とは関係ありますか?
関係があります。津波で肺に泥水を吸い込んだ場合、スケドスポリウムによる感染が起こることがあります。
スケドスポリウム症と津波には関係があります。
「津波肺」とは、津波に遭って溺水した際に、汚染された水が肺に入ることで起こる肺炎のことです。
2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東日本大震災で津波に遭った生存者では、肺にスケドスポリウム属の真菌(カビ)が感染を起こした患者さんや、中には菌が血液の流れに乗って脳に膿瘍(膿のかたまり)を発症した患者さんが複数報告されています。
また、スケドスポリウム症は、一般的に免疫機能が低下した人で起こりやすいですが、津波肺の場合は免疫機能に問題がない人でもスケドスポリウムが感染する例が報告されています。
溺水や津波肺に伴う感染症は複数ありますが、スケドスポリウム症も念頭に置いて診断・治療にあたることが大切だと考えられます。
スケドスポリウム症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「シュードアレシェリア症/スケドスポリウム症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 皮ふのどこかに厚くザラザラしている部分がありますか?
- 体温は37.5℃以上ですか?
- これまでに糖尿病(女性の場合は妊娠糖尿病も含みます)を治療したことがありますか?
- 皮ふにコブ状のものがある、または触れますか?
- 皮ふに何らかの異常がありますか?
スケドスポリウム症に関連する病気・症状
この記事の監修医師
髙岡 真梨子 先生
平塚市民病院 皮膚科
【経歴】 東京大学医学部医学科 卒業 平塚市民病院 臨床研修 東京大学医学部附属病院 国際医療福祉大学三田病院 東京大学医学部附属病院 国立病院機構相模原病院
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03