前立腺がんが見つかっても経過観察をすることがあるのですか?

はい。進行リスクが低い場合、定期的に採血や前立腺生検等の検査だけを行い経過観察することがあります。

解説

前立腺がん腫瘍マーカーであるPSAの採血検査が普及したことで、前立腺がんは早めに発見されることが多くなり、現在は男性で最も多いがんです。

早期発見と早期治療によって前立腺がんによる死亡率はかなり改善しましたが、前立腺がんの治療に伴う合併症(尿漏れ勃起障害・勃起不全(ED))や経済的な負担などが問題となっています。

そのため、特に進行リスクが低い前立腺がんに対しては、すぐに治療を行わず定期的に採血や前立腺生検などの検査を行い、進行リスクが高まった際に迅速に治療を開始できるように経過観察する方法として「監視療法」という治療方針が広まってきています。

監視療法は、治療によっておこりやすい尿漏れや性機能障害などによる生活の質(QOL)の低下を避けることができ、手術や放射線療法と比べて経済的な負担も軽いというメリットがあります。

転移が生じるまで悪化してしまうリスクはありますが、進行しても早めに治療できるため、寿命には影響しないという報告があります。

ただ、監視療法の基準は国や施設によってさまざまであり、最も良い基準はまだわかっていません。また、現時点ではMRIなどの非侵襲的な検査では針生検の代用ができないため、監視療法では、定期的に採血検査や前立腺生検のような侵襲的な検査をする必要があります。

定期的な検査や、わずかですが進行してしまう可能性などによる心理的な負担はあるため、早めに治療を望まれる方も多くいらっしゃいます。

他に経過観察する方針として、標準的ではありませんが「待機療法」というものもあります。これは「監視療法」とは異なり、超高齢など根治的治療を用いるのがむずかしい場合に、尿閉や骨転移などの症状が現れるまで治療を待つような方法です。

監視療法なども含めて納得して治療方針を決める必要がありますので、気になる場合は担当の医師とよく相談しましょう。

公開日

最終更新日

東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科

秋元 隆宏 監修

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