結節性硬化症の場合、主にどのような治療をしますか？

遺伝子の変異を修復する根本的な治療はありませんが、症状に応じた治療を行います。
最近は、腫瘍を小さくする、あるいはできにくくするため、細胞増殖を抑えるための薬を使用します。遺伝子変異で働かなくなったタンパク質の代わりに、細胞増殖を促す酵素の働きを阻害します。ただし、副作用として感染症にかかりやすくなる、中止すると腫瘍が再度大きくなるなどの影響もあるので、使用に関しては慎重な検討が必要です。
それぞれの症状に対しては、以下のような治療を行います。

てんかん

抗てんかん薬を用います。特に結節性硬化症に伴う点頭てんかんは、一般的な抗てんかん薬が効きにくい場合があります。その際にはビガバトリンと呼ばれる薬を使うことがありますが、この薬は視野障害、視力障害などの副作用の有無を厳密に評価しながら治療する必要があります。さらに治療が困難な場合は、てんかんに対する手術を行うこともあります。

皮膚の変化

皮膚の変化は痛みやかゆみなどはないため、特別治療の必要はありません。美容上問題になるときにはレーザー治療、もしくは外科的に切除することもあります。

心臓の腫瘍

心臓の横紋筋腫に対しては、不整脈や心不全がある場合に治療が必要となることがあります。通常は成長に伴い小さくなることから、心不全などの悪化がみられない限り手術が必要となることはありません。

肺の腫瘍

肺リンパ脈管筋腫症はホルモン療法や卵巣摘出が効果を認めることがあります。また、気胸をきたした場合は胸腔ドレナージといって漏れた空気を逃す治療が必要な場合もあります。重症例では、肺移植が必要となることもあります。

腎や肝の腫瘍

血管筋脂肪腫は、腫瘍が大きくなると出血するリスクが高くなるため、カテーテル（体内に挿入して使う、検査や治療などを行うための細い管）を用いて腫瘍に栄養を送る血管をつめて血の流れを遮断する塞栓治療を行うこともあります。
なお、これらの状態は早めに治療を開始することで予後（病気や治療の経過・結末についての見通し）が良くなる可能性もあるため、脳、胸部（心臓、肺）や腹部、さらに眼球や歯の状態は、定期的に専門医による診療をうけて置くことが望ましいでしょう。