小細胞肺がんの治療方法として、ステージごと(転移の有無別)にそれぞれどのようなものがありますか?
治療は限局型と進展型で分かれ、限局型は化学放射線療法、進展型は薬物療法が中心とされています。
小細胞肺がんの治療は、病期(ステージⅠ〜Ⅳ期)に加え、「限局型」か「進展型」かという区分や、全身状態などをもとに選びます。ここでは、初回治療を中心に、区分ごとの治療の考え方を紹介します。
小細胞肺がんの限局型・進展型とは?
限局型(LD)は、がんの広がりが、がんのある側の胸郭内と、反対側の縦隔(じゅうかく:左右の肺にはさまれた部分)や鎖骨の上のリンパ節までに限られ、がんによる胸水や心嚢水(しんのうすい:心臓を包む膜の内側にたまる水)がない状態です。この範囲を超えて広がった状態を、進展型(ED)と呼びます。
小細胞肺がんの限局型の治療(ステージ別)
限局型では、病期や手術が可能かどうか、全身状態などに応じて治療を選びます。
- 臨床病期Ⅰ〜ⅡA期で、リンパ節転移がない場合(N0):手術が可能であれば、手術が推奨されます。がんを完全に切除できた場合も、再発を防ぐために、術後にプラチナ製剤を含む抗がん薬治療を行います。
- それ以外の限局型や手術が難しい場合:抗がん薬と放射線治療を組み合わせる「化学放射線療法」が中心です。全身状態の指標であるPS(パフォーマンス・ステータス)が0〜2の場合は、抗がん薬治療の早い段階から放射線治療を同時に行うことが推奨されます(日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025年版)。
同時に行うことが難しい場合は、抗がん薬治療のあとに放射線治療を行う方法や、抗がん薬のみで治療する方法などを検討します。
また、同時化学放射線療法後にがんの進行が抑えられ、全身状態が良好(PS 0〜1)な場合は、免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブによる「地固め療法」が推奨されます。これは、治療効果を維持し、再発や進行を抑えるための追加治療です(日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025年版)。
小細胞肺がんの進展型の治療
進展型では、薬物療法が中心となります。全身状態が良好(PS 0〜1)な場合の初回治療には、プラチナ製剤とエトポシドに、免疫チェックポイント阻害薬(PD-L1阻害薬)を組み合わせる治療が強く推奨されています。
全身状態が低下している場合も、その程度や原因に応じて、抗がん薬の種類や組み合わせを検討します。治療による負担が大きいと判断される場合は、がんに対する薬物療法を行わず、症状を和らげる治療やケアを中心とすることもあります(日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025年版)。
小細胞肺がんの予防的全脳照射はどのような場合に行う?
予防的全脳照射(PCI)は、画像検査で脳転移が認められない段階で、将来の脳転移のリスクを下げるために、脳全体に放射線をあてる治療です。
日本肺癌学会の2025年版ガイドラインでは、次のように推奨されています。
- 限局型:初回治療によって、画像上がんが消失した「完全寛解」が得られた場合は、予防的全脳照射を行うことが強く推奨されています。
- 進展型:初回の薬物療法が効き、脳転移が認められない場合は、予防的全脳照射を行わないことが強く推奨されています。ただし、この推奨の根拠となった研究は、治療後に定期的な脳MRI検査を行うことを前提としています。
実施するかどうかは、期待される効果に加え、認知機能への影響などの副作用も踏まえて担当医と相談します(日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025年版)。
小細胞肺がんの治療方針を決めるときのポイント
治療方針は、がんの広がりだけでなく、全身状態や年齢、持病、ご本人の希望などを踏まえて検討します。治療の効果や副作用、生活への影響について、担当医と十分に話し合うことが大切です。
また、緩和ケアは、診断されたときから、がんの治療と並行して受けられます。痛みや息苦しさ、不安などを我慢せず、担当医や看護師に伝えてください。治療の選択に迷うときは、がん相談支援センターにも相談できます。
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(参考文献)
日本肺癌学会."Ⅲ.小細胞肺癌(SCLC)/限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)".肺癌診療ガイドライン―胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2025年版.日本肺癌学会.https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/1/3/250103010100.html.(参照 2026-09-15).
日本肺癌学会."Ⅲ.小細胞肺癌(SCLC)/進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)".肺癌診療ガイドライン―胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2025年版.日本肺癌学会.https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/1/3/250103020100.html.(参照 2026-09-15).
日本肺癌学会."Ⅲ.小細胞肺癌(SCLC)/予防的全脳照射(PCI)".肺癌診療ガイドライン―胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2025年版.日本肺癌学会.https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2025/1/3/250103030100.html.(参照 2026-09-15).
日本肺癌学会."小細胞肺癌の限局型および進展型の定義".肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2023年版.日本肺癌学会.https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2023/1/3/230103000000.html.(参照 2026-09-15).
国立がん研究センター がん情報サービス."肺がん 小細胞肺がん 治療".国立がん研究センター.https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_sclc.html.(参照 2026-09-15).
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京都大学iPS細胞研究所 呼吸器内科
山形 昂 監修
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