小細胞肺がんのステージ3では、どのような治療を行いますか?
「限局型」か「進展型」かという区分や全身状態などを踏まえて決めます。
小細胞肺がんの治療方針は、臨床病期(ステージ)に加えて、「限局型」か「進展型」かという区分や全身状態などを踏まえて決めます。ステージ3(Ⅲ期)でも、がんの広がりによって治療方針が異なります。
小細胞肺がんのステージ3は限局型と進展型のどちらになる?
限局型は、がんの広がりが片側の肺や一定の範囲のリンパ節に限られ、がんによる胸水や心嚢水(しんのうすい:心臓の周りにたまる水)がない状態です。反対側の縦隔(じゅうかく:左右の肺にはさまれた部分)や鎖骨の上のリンパ節への転移も含まれます。
ステージ3でも、がんの広がりが大きく、胸部への放射線治療が難しい場合などには、進展型として治療方針を立てることがあります。
なお、悪性胸水や悪性心嚢水がある場合は、ステージ4(Ⅳ期)に分類されます。 胸水や心嚢水にはがん以外の原因もあるため、水がたまっているだけで病期が決まるわけではありません。
小細胞肺がんのステージ3で限局型と判断された場合の治療
ステージ3の限局型では、抗がん薬と胸部への放射線治療を組み合わせる「化学放射線療法」が中心です。全身状態の指標であるPS(パフォーマンス・ステータス)が0〜2の場合に推奨されています。
- 抗がん薬:シスプラチンとエトポシドの併用が基本です。シスプラチンの使用が難しい場合は、カルボプラチンへの変更などを検討します。
- 放射線治療の時期:治療に耐えられる状態であれば、抗がん薬治療の早い段階から同時に行うことが推奨されます。
- 照射方法:1日2回に分けて照射する「加速過分割照射」が標準です。実施が難しい場合は、1日1回の照射も選択肢となります(日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025年版)。
ステージ3だけに限定した数値ではありませんが、化学放射線療法を受けた限局型の患者さんの80〜90%でがんが小さくなり、そのうち約半数でがんが消失します。ただし、画像上がんが見えなくなっても、再発する可能性があります。
さらに、同時化学放射線療法後にがんの進行が抑えられ、全身状態が良好(PS 0〜1)な場合は、免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブによる地固め療法が推奨されます。これは、再発や進行を抑えるための追加治療です。
小細胞肺がんのステージ3で進展型として治療する場合
進展型として治療する場合は、薬物療法が中心です。全身状態が良好(PS 0〜1)な場合の初回治療では、プラチナ製剤とエトポシドに、免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる治療が推奨されます。代表的な組み合わせは次のとおりです。
- カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ
- シスプラチンまたはカルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ
これらは、抗がん薬のみの治療と比べて、生存期間の延長が示されています。
全身状態が低下している場合や免疫チェックポイント阻害薬の使用が難しい場合は、抗がん薬のみの治療などを検討します。薬の選択は、年齢だけでなく、全身状態や臓器の働き、持病などを踏まえて判断します。
小細胞肺がんのステージ3で行われる予防的全脳照射とは
予防的全脳照射(PCI)は、脳転移が認められない段階で、将来の脳転移のリスクを下げるために脳全体へ放射線をあてる治療です。
限局型で、初回治療によって画像上がんが消失した「完全寛解」が得られた場合に推奨されます。実施するかどうかは、期待される効果や認知機能への影響などを踏まえて検討します。
一方、進展型では、初回の薬物療法が効き、脳転移が認められない場合でも、予防的全脳照射を行わないことが推奨されています。この推奨の根拠となった研究は、定期的な脳MRI検査を行うことを前提としています。
小細胞肺がんのステージ3の治療で医師に確認したいこと
治療方針を理解するために、担当医に次の点を確認するとよいでしょう。
- 限局型か進展型か、その判断の理由
- 提案された治療の目的と期待できる効果
- 主な副作用や生活への影響
- 地固め療法や予防的全脳照射の対象になるか
治療について不安や疑問があるときは、担当医や看護師に相談してください。がん相談支援センターでも相談できます。
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(参考文献)
特定非営利活動法人日本肺癌学会『患者さんのための肺がんガイドブック2022年版 Q27 肺がんの治療はどのように決めていくのですか 〜臨床病期(ステージ)と治療選択〜』https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2022/2022/Q27.html.(参照 2026-09-15).
特定非営利活動法人日本肺癌学会『患者さんのための肺がんガイドブック2022年版 Q72 限局型小細胞肺がんにはどのような治療法がありますか』https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2022/2022/Q72.html.(参照 2026-09-15).
特定非営利活動法人日本肺癌学会『患者さんのための肺がんガイドブック2022年版 Q74 進展型小細胞肺がんといわれました。どのような状態なのでしょうか』https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2022/2022/Q74.html.(参照 2026-09-15).
特定非営利活動法人日本肺癌学会『患者さんのための肺がんガイドブック2022年版 Q75 進展型小細胞肺がんにはどのような治療法があり,私には何が最適なのでしょうか』https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2022/2022/Q75.html.(参照 2026-09-15).
国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス『肺がん 小細胞肺がん 治療』https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_sclc.html.(参照 2026-09-15).
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京都大学iPS細胞研究所 呼吸器内科
山形 昂 監修
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