腎性貧血は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
材料である鉄の補充と、不足しているエリスロポエチンを補充したり産生を促したりする薬で治療します。それぞれに注意すべき副作用はあります。
腎性貧血においては、主に薬物治療を行います。具体的な薬剤としては以下のようなものが挙げられます。
具体的には、材料である鉄の補充と、不足しているエリスロポエチンを補充したり産生を促したりする薬です。
鉄剤
どのような貧血であれ、材料である鉄が不足していれば赤血球は作ることができません。鉄分が不足している場合は鉄剤を投与する必要があります。鉄分の過不足に気がつくためには、定期的な血液検査が必要になります。
内服の鉄剤は嘔気や下痢などの消化管の症状がでてくることが多いです。点滴では比較的そのような症状は少ないですが、過敏症が起こることがあり血圧が低下したりといった副作用が出ることがあります。
赤血球生成促進剤(エリスロポエチン製剤)
腎性貧血は、腎臓の機能が低下し、赤血球を産生するために必要なエリスロポエチンという物質が十分に作られなくなることで起こる病気です。赤血球造血因子製剤は、エリスロポエチンの代わりとなる物質であり、これを投与することで赤血球の産生を促し、貧血を改善させます。
貧血改善による血圧上昇がみられることがあります。また、まれですが二次的に抗エリスロポエチン抗体が作られ赤血球が作られなくなる赤芽球ろうという病気が起こることがあります。
HIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害薬
血液中にはHIF(低酸素誘導因子)というエリスロポエチンの産生を促進する因子があります。HIFは正常酸素下ではプロリン水酸化酵素(PH)によって分解され、 過剰に発現しないように調節されています。HIF-PH阻害薬は、PHのはたらきを阻害することでHIFの分解を防ぎ、エリスロポエチンの産生を促進することで、貧血を改善させます。
臨床試験で鉄欠乏による血栓症が多く見られたことから、鉄欠乏に注意が必要です。深部静脈血栓症、脳梗塞や肺塞栓、心筋梗塞などの血栓の既往がある方への使用は注意が必要です。また、HIF-PH阻害薬の中でもロキサデュスタットについては中枢性甲状腺機能低下症が近年報告されました。定期的に甲状腺の機能を調べてもらうことが重要です。
薬物治療で十分な効果が得られない場合、または貧血の程度が強すぎて命に関わる場合には、輸血を行うこともあります。
赤血球輸血
輸血はヒト由来の赤血球を補充する治療です。ただし、腎不全患者さんにおいては、高K血症に注意が必要です。また頻回の輸血により鉄過剰となることもあります。その他、輸血による負荷による心不全、移植片対宿主病(GVHD)、アレルギー反応、感染症などの副作用が生じる可能性もあり、注意が必要です。ヘモグロビン濃度が7g/dL以上では原則行わないように言われています。
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最終更新日:
虎の門病院分院 腎臓内科
大庭 悠貴 監修
(参考文献)
PDF.js viewer.https://jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/viewer.html?file=001-294.pdf(参照 2024-10-08)
日本透析医学会.“2015年版日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン”.日本透析医学会.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/49/2/49_89/_pdf/-char/ja,(参照 2024-10-08).
日本腎臓学会.“日本腎臓学会 HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation”.日本腎臓学会.https://jsn.or.jp/data/HIF-PH_recommendation.pdf,(参照 2024-10-08).
厚生労働省.“厚生労働省「血液製剤の使用指針」”.厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000161115.pdf,(参照 2024-10-08).
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