フルニエ壊疽の初期症状は?フルニエ壊疽
監修医師秋元 隆宏東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
フルニエ壊疽とは
陰部の傷や尿路感染などが原因となって皮膚の下の組織に感染が広がる病気です。陰のうや会陰部(陰のうと肛門の間)に腫れや赤みが出て、急速に悪化します。
「フルニエ壊疽」とはどのような病気ですか?
陰部や会陰部(肛門と陰部の間)に細菌が感染して急激に広がる、命に関わる重篤で緊急性の高い病気です。
フルニエ壊疽とは、外陰部(陰茎・陰嚢)、会陰部(肛門と陰部の間)、肛門周囲に発生する壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)の一種です。1883年にフランスの皮膚科医のフルニエ先生が初めて報告したことから、この名前がつきました。
壊死性筋膜炎とは、複数の細菌が皮膚の下の筋膜(きんまく:筋肉を包む膜)に感染して急速に広がり、組織を死滅させてしまう重篤な感染症のことです。壊死性筋膜炎については、こちらもご覧ください。
この病気の最大の特徴は進行の速さです。感染が始まって数時間から数日のうちに、皮膚・皮下組織・筋膜が広範囲にわたって壊死(えし:組織が死んでしまうこと)が起きます。適切な治療が遅れると敗血症(はいけつしょう:細菌が血液中に広がって全身が危険な状態になること)から死亡に至ることがあるため、泌尿器科における緊急疾患のひとつとされています。
主に中高年の男性や糖尿病のある方などに多くみられますが、女性や若年者にも発症することがあります。早期に発見して緊急手術を行うことが、命を救うために非常に重要です。少しでも気になる症状があれば、まったくためらわずに受診してください。
フルニエ壊疽の症状
フルニエ壊疽には初期症状はありますか?
陰部や会陰部の痛み・腫れ・発赤が初期にみられ、急速に悪化します。発熱や倦怠感を伴うことが多いです。
フルニエ壊疽の初期症状は、一見すると他の比較的軽い感染症(陰嚢炎・蜂窩織炎など)と見分けがつきにくい場合があります。初期の段階では以下のような症状がみられます。
しかし、この初期の段階から数時間〜数日で急激に悪化するのがこの病気の特徴です。皮膚の色が紫〜黒色に変化し、皮膚の下にガスが溜まってくる感触(握雪感)が生じ、悪臭も出てきます。
初期症状だけでは診断が難しいことがありますが、陰部・会陰部・肛門周囲に急に強い痛みや腫れが出てきた場合、特に糖尿病や肥満などの発症の危険性が高い方は、フルニエ壊疽の可能性を念頭において早急に受診することが重要です。「様子をみよう」という判断が生死に関わることがあります。気になる場合は、泌尿器科や外科、救急外来への受診を検討しましょう。
フルニエ壊疽の患者さんにはどのような特徴がありますか?
中高年の男性に多く、糖尿病・肥満・免疫力の低下がある方で発症リスクが高まります。
フルニエ壊疽を発症しやすい患者さんには、いくつかの共通した特徴があります。
- 性別・年齢:圧倒的に男性に多く、患者さんの80〜90%程度を男性が占めます。
- 年齢:50〜70代の中高年に多くみられますが、若い方や高齢者にも発症することがあります。
- 基礎疾患・リスク因子:糖尿病が最も多くみられる基礎疾患です。特に血糖コントロールが不良な場合にリスクが高まります。次いで肥満(BMI25kg/m²以上)、慢性的な飲酒、HIV感染症などの免疫不全状態、ステロイドや免疫抑制剤の使用中なども関連します。
上記の特徴に当てはまる方で、陰部や肛門周囲に気になる症状がある場合は、早めに医療機関に相談してください。
フルニエ壊疽の原因
フルニエ壊疽の原因は何がありますか?
主な原因は会陰部周囲の細菌感染で、糖尿病・肥満・免疫機能の低下などによって発症リスクが高まります。
フルニエ壊疽は、主に複数の細菌(好気性菌と嫌気性菌の混合感染)が皮膚の下に入り込むことで始まります。原因となる出来事や持病などには、以下のようなものが挙げられます。
原因の出来事
根本的な原因である細菌感染の入口として、以下のようなものがあります。
- 陰嚢・会陰部の小さな傷や擦り傷
- 肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう:肛門の周りにできる膿のたまり)
- 痔(いぼ痔や切れ痔など)
- 尿路の感染(尿道炎・膀胱炎など)
- 会陰部・陰嚢への手術や処置後の傷口
原因がはっきりしない場合もあります。
発症リスクが高まる持病や特徴
発症リスクを高める要因としては、以下のように免疫力が下がることに関連するものがあります。
- 糖尿病:最もよく見られます。血糖のコントロールが不良な場合、免疫機能が低下して感染が広がりやすくなります。
- 肥満
- 慢性的な飲酒
- HIV感染症などの免疫力を低下させる状態
- 臓器移植後の免疫抑制剤の使用
陰部や肛門周囲に普段と違う症状を感じたら、早めに泌尿器科や外科、救急外来を受診してください。
フルニエ壊疽の検査・診断
フルニエ壊疽のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
フルニエ壊疽は、自宅でのセルフチェックで確定することはできませんが、以下のような点を確認することで、疑うことが重要です。
また、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えることで、フルニエ壊疽の可能性があるかどうかを確認することもできます。
フルニエ壊疽の治療・対処法
フルニエ壊疽への対処法は?
急激に症状が悪化し命に関わる場合もあります。早急に泌尿器科を受診をしましょう。
受診の目安・何科を受診するべきか
フルニエ壊疽が疑われる場合、病院を受診する目安はありますか?
陰部や会陰部の急激な痛み・腫れ・皮膚の変色、発熱などがあれば、すぐに受診してください。
フルニエ壊疽は急速に進行する緊急疾患であるため、「疑わしければすぐに」受診しましょう。特に以下の症状がある場合は、時間を置かずに受診(夜間・休日は救急受診)してください。
- 陰嚢・外陰部・会陰部・肛門周囲に突然の強い痛みや腫れが生じた場合
- 皮膚が赤から紫・黒に変化してきた場合
- 38℃以上の発熱や強い全身のだるさを伴う場合
- 悪臭のある分泌物が出ている場合
- 皮膚をさわるとプチプチした感触がある場合
また、次のリスク因子をお持ちの場合は、通常より速やかに受診することを特におすすめします。
「陰部が少し腫れているだけだから大丈夫だろう」と自己判断せず、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
フルニエ壊疽の専門医がいる近くの病院はありますか?
フルニエ壊疽の専門医がいる病院を見る対処法・セルフケア
フルニエ壊疽で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
抗菌薬が効きにくい場合や病状が改善しない場合は、担当医に相談しましょう。
フルニエ壊疽の治療では、最初に開始した抗菌薬が十分に効いていない場合や、病状が改善しない場合には、いくつかの対応が検討されます。
- 細菌培養・薬剤感受性検査:傷口から採取した細菌を調べて、どの抗菌薬が効くかを確認したうえで、より適切な薬に切り替えます。細菌を培養させて検査するため、すぐに結果が出るわけではなく、検査に1~2週間かかることもあります。
- デブリドマン(壊死組織を切除する手術):こまめなケアをしても壊死した組織が広がることもあります。感染した組織、壊死した組織が残っていると薬が効きにくいため、改善が不十分な場合には、手術を繰り返して壊死組織を取り除きます。
- 抗真菌薬などの使用:細菌を倒す抗菌薬を長期間使用して、免疫力が下がっている場合などでは、真菌(カビ)に感染してしまうことがあります。真菌感染が疑われる場合は、抗真菌薬の追加が行われることがあります。真菌感染を合併した場合は、特に死亡率が高いことが知られており、迅速な対応が必要です。
いずれにせよ、フルニエ壊疽の治療は入院環境のもとで担当医が判断するものであり、患者さん自身が「薬が効いていない」と感じた際は、担当医やスタッフにためらわず伝えることが大切です。
フルニエ壊疽について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「フルニエ壊疽」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 体温は37.5℃以上ですか?
- 玉(陰のう)と肛門の間(会陰:えいん)に痛みがありますか?
- 患部は赤くなっていますか?
フルニエ壊疽に関連する病気・症状
この記事の監修医師
秋元 隆宏 先生
東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科 泌尿器科
【経歴】 東北大学医学部医学科 卒業 三井記念病院 臨床研修 三井記念病院 泌尿器科 東京大学医学部付属病院 泌尿器科・男性科 自治医科大学 腎泌尿器外科学講座 泌尿器科学部門 病院助教 琉球大学医学部システム生理学講座 東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03