アンチトロンビンⅢ欠乏
監修医師平松 由布季東日本橋内科クリニック 内科
- 更新日
- 2026/06/15
- 公開日
- 2020/09/03
アンチトロンビンⅢ欠乏とは
「アンチトロンビンⅢ欠乏」とはどのような病気ですか?
抗凝固因子アンチトロンビンの不足により、血液が固まる血栓症を引き起こし、致死的になりうる病気です。
「アンチトロンビンⅢ欠乏」とは、抗凝固因子アンチトロンビンが不足することで血液が固まって血栓症を引き起こし、致死的になりうる病気です。
アンチトロンビンは、活性型の凝固因子(例えばトロンビン)と結合して複合体を形成し、これらを中和して血液凝固の過剰な進行を抑えます。したがって、アンチトロンビンが不足すると血液凝固が過剰になり、血栓症と呼ばれる血液が血管の中で固まるリスクが高まります。
なお、アンチトロンビンIIIはアンチトロンビンの古い言い方で、両者は同じものです。
アンチトロンビンⅢ欠乏の症状
アンチトロンビンⅢ欠乏には初期症状はありますか?
足のむくみ・痛み・腫れといった下肢の深部静脈血栓症が初期症状となりえます。
先天性アンチトロンビン欠乏症では、多くの例で、下肢(足)の深部静脈血栓症として繰り返し起こります。そこでできた血栓が血流に運ばれ、肺の血管で詰まり、肺血栓塞栓症となることがあります。
したがって、初期症状としては、下肢の深部静脈血栓症に伴い、以下のような症状が起こることがあります。
など
深部静脈血栓症の初期症状について、詳しくは以下も併せてご参照ください。
アンチトロンビンⅢ欠乏ではどのような症状がありますか?
足のむくみ・痛み・腫れといった下肢の症状や、胸痛・呼吸困難といった肺の症状などがみられます。
先天性アンチトロンビン欠乏症では、抗凝固因子アンチトロンビンが不足することで血液が血管の中で固まってしまうため、血栓症が引き起こされやすくなります。
血栓症が生じると、それに伴う症状が若年期から繰り返されます。
具体的には以下のような、主に静脈における血栓症が繰り返し起こります。
など
アンチトロンビンⅢ欠乏の原因
アンチトロンビンⅢ欠乏の原因は何がありますか?
遺伝子の異常が主な原因です。
アンチトロンビンIII欠乏は、生まれつきである先天性と、後天的に大きく分けられます。
先天性のアンチトロンビン欠乏は常染色体優性遺伝病であり、1/2の確率で病気に関係する遺伝子が子供に伝わります。
大きく分けて2つのタイプがあり、ひとつはアンチトロンビンの量が低下し、それに伴って凝固制御活性も低下するⅠ型(古典型)です。
もうひとつのタイプは、アンチトロンビンの量は正常ですが、その活性が低下するⅡ型です。Ⅱ型は、特定のアンチトロンビン遺伝子部位の変異により、正常な機能が妨げられることで起こります。
どちらのタイプも血栓症のリスクを増加させますが、必ずしも血栓症が発生するわけではなく、生涯にわたって血栓症を発症しない方もおられます。
血栓症を発症する方は、通常、15歳以上になってから、男性では手術や怪我、女性では妊娠などが引き金となって血栓症を発症することが多いです。
一方で、後天性の欠乏は、播種性血管内凝固症候群(DIC)、肝疾患、もしくはネフローゼ症候群を有する患者さん、またはヘパリン療法中に生じます。
アンチトロンビンⅢ欠乏の検査・診断
アンチトロンビンⅢ欠乏のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
以下に該当する場合、先天性アンチトロンビン欠乏症が疑われます。
また、「アンチトロンビンⅢ欠乏」になりやすい人の特徴に、以下が挙げられます。
- 家族に同様の病気の方がいる
- 妊娠中
- 新生児
- 感染症
- 慢性肝疾患
- 外科手術後
- 外傷(怪我)受傷後
なお、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできますのでご活用ください。
アンチトロンビンⅢ欠乏の治療・対処法
アンチトロンビンⅢ欠乏の場合、主にどのような治療をしますか?
ヘパリン・ワルファリンといった抗凝固薬で治療されます。
先天性アンチトロンビン欠乏症の方が血栓症を発症した場合、最初にヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬(※)による治療が試みられます。
ただし、ヘパリンの抗凝固作用は血液中のアンチトロンビンに依存するため、アンチトロンビン欠乏の場合にはその効果が限定されます。
特に血栓症の急性期や妊娠、手術などで血栓症発生のリスクが高い場合、アンチトロンビンⅢ製剤の投与が選択されることがあります。
※抗凝固薬(こうぎょうこやく):いわゆる、血液をサラサラにするお薬のこと。
受診の目安・何科を受診するべきか
アンチトロンビンⅢ欠乏が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
専門である血液内科を受診してください。
先天性アンチトロンビン欠乏症と類似の症状を示すさまざまな血栓症がありますので、識別診断をし、適切な治療選択が必要になります。
また、血栓症のリスクの極めて高い遺伝性の病気ですので、家系の解析は血栓症予防の観点からも重要になります。遺伝性のあるこの病気の保因者を特定することで、血栓の発症を防ぐための指導など対策を講じることができます。
これらの意味から、専門である血液内科の受診が必要になります。
アンチトロンビンⅢ欠乏の専門医がいる近くの病院はありますか?
アンチトロンビンⅢ欠乏の専門医がいる病院を見るアンチトロンビンⅢ欠乏の薬
アンチトロンビンⅢ欠乏は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬で治療されます。副作用として、出血しやすくなる可能性があります。
先天性アンチトロンビン欠乏症の治療は、急性期と慢性期で異なります。
急性期の治療方法
急性期では、血栓症に対する治療として、重症度に応じて抗凝固療法(ヘパリン、ワーファリン、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC))、線溶療法、血栓吸引療法などを実施します。必要に応じてアンチトロンビンの補充療法としてアンチトロンビンIII製剤を使用します。
慢性期の治療方法
慢性期では、血栓症の再発予防として抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)の長期投与を行います。投与期間は、引き起こす因子の存在、血栓症の既往歴、欠乏症のタイプなどを総合的に考慮して決定します。
抗凝固薬は、その作用が強ければ、血液が固まりにくくなり、出血が起こりやすくなります。他、まれに肝機能障害や間質性肺炎が起こることがあります。
対処法・セルフケア
アンチトロンビンⅢ欠乏の場合、日常生活で気を付けることはありますか?
必要に応じ、抗凝固薬を長期間内服し続け、血栓症を予防することが重要です。
先天性アンチトロンビン欠乏症の方の予後(病気や治療の経過・結末についての見通し)は、欠損症ではない方と比較して大きな差はないとされています。
しかし、アンチトロンビンⅢ欠乏の場合、高い確率で血栓症を繰り返し、ときに致死的な血栓症を発症します。
そのため、血栓症の既往のある方は、経口抗凝固薬(血液をサラサラにするお薬)を継続して服用することが必要とされます。血栓症は命に関わる病気のため、予防を行うことが非常に重要です。
アンチトロンビンⅢ欠乏で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
抗凝固薬に加え、アンチトロンビンⅢ製剤の投与が行われます。
先天性アンチトロンビン欠乏症の患者さんに血栓症が発生した場合、通常はヘパリンやワルファリンといった抗凝固薬(※)で治療されます。
しかし、血栓症発症の急性期、あるいは妊娠、手術というような血栓症のリスクがある場合、不足しているアンチトロンビンを補充する目的で、アンチトロンビンⅢ製剤の投与が行われます。
特に、ヘパリンの抗凝固作用は血中のアンチトロンビン量に依存しますので、欠損症においてはヘパリンの十分な抗凝固作用は期待できず、アンチトロンビンIII製剤による補充が必要とされます。
※抗凝固薬(こうぎょうこやく):いわゆる、血液をサラサラにするお薬のこと。
アンチトロンビンⅢ欠乏に関連するその他の質問
アンチトロンビンⅢ欠乏は遺伝しますか?
1/2の確率で子供に遺伝します。
先天性アンチトロンビン欠乏症は、常染色体優性遺伝病であり、1/2の確率で病気に関係する遺伝子が子供に伝わります。
アンチトロンビンⅢ欠乏には大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつはアンチトロンビンの量が低下し、それに伴って凝固制御活性も低下するⅠ型(古典型)です。
もうひとつのタイプは、アンチトロンビンの量は正常ですが、その活性が低下するⅡ型です。Ⅱ型は、特定のアンチトロンビン遺伝子部位の変異により、正常な機能が妨げられることで起こります。
アンチトロンビンⅢ欠乏にヘパリンは効きますか?
ヘパリンは効きますが、さらに効果を高めるため、アンチトロンビンⅢ製剤を併用することがあります。
先天性アンチトロンビン欠乏症は、抗凝固因子アンチトロンビンが不足することで血液が固まってしまう病気です。
ヘパリンはアンチトロンビンⅢ欠乏に効果はありますが、ヘパリンだけでは十分な抗凝固作用は期待できません。これは、ヘパリンの抗凝固作用は血中のアンチトロンビン量に依存するため、欠損症においてはヘパリンの十分な抗凝固作用が期待できないためです。
そのため、アンチトロンビンⅢ欠乏において、さらに高い効果を求める場合には、アンチトロンビンIII製剤を併用し、補充することが必要とされます。
アンチトロンビンⅢ欠乏について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「アンチトロンビンⅢ欠乏」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 抗がん剤による治療を受けていますか?
- これまでに【心房細動】と診断されたことはありますか?
- 体温は37.5℃以上ですか?
- 体の左右どちらか半分が動かせないですか?
- これまでに【狭心症・心筋梗塞】と診断されたことはありますか?
アンチトロンビンⅢ欠乏に関連する病気・症状
この記事の監修医師
平松 由布季 先生
東日本橋内科クリニック 内科
2015年愛媛大学医学部卒。 松山赤十字病院で初期研修後、東京ベイ・浦安市川医療センターで内科後期研修を修了。 引き続き同センター総合内科で、フェローシップ研修を行い、2024年1月まで医員、外来医長として勤務。 病棟専門の総合医であるホスピタリストとして、特に若手医師の教育、臨床倫理(アドバンス・ケア・プランニングや意思決定支援など)に注力してきた。 2022年6月からは日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師支援部門 病院総合医チーム副代表に就任。"病院総合医の価値を社会に発信し、これを志す若手の道標になる"をMISSION&VISONに掲げ、学術大会等での企画運営、商業誌執筆、若手医師のキャリア支援などを行なってきた。 2024年2月から東日本橋内科クリニックで勤務。
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- 2026/06/15
- 公開日
- 2020/09/03