低血圧症の人が食べた方がよいもの・避けた方がよいものを教えてください。

水分と栄養の揃った食事を心がけ、お酒や大食いは避けます。塩分は医師と相談し、低血圧が続くならまず原因を調べましょう。

低血圧の人の食事で食べた方がよいのは、水や麦茶などの水分と、主食に肉・魚・卵・豆腐などのおかずや野菜・果物を組み合わせた、栄養のそろった食事です。避けた方がよいのは、お酒と、一度に大量に食べること、ラーメンとチャーハンのような主食の重ね食べ、ジュースや菓子パンで糖分を一度に多くとることです。塩分は、高血圧や心臓・腎臓の病気がある人では病状を悪化させるおそれがあるため、自己判断で増やさず、主治医と相談して決めましょう。また、血圧が低い状態が続く場合は、食事を工夫する前に、まず原因を調べることが大切です。

低血圧が続くときは、まず原因を調べましょう

低血圧の人の食事では、水分不足を防ぎ、必要な栄養をとることが基本です。ただし、食事を工夫する前に、血圧が低くなる原因がないかを調べることが大切です。心臓病や不整脈、脱水、出血、貧血、甲状腺機能低下などのホルモンの異常、薬の影響が隠れていることがあります。血圧が低い状態が続く場合は、一度医療機関への受診をご検討ください。主に内科や循環器内科で診察を受けられます。診察では、症状や服薬内容を確認し、横になったときと立ったときの血圧、心電図、必要に応じた血液検査などで原因を調べます。原因となる病気があれば、その治療が必要であり、食事だけで対処することはできません。
明らかな原因がない「本態性低血圧」では、症状がなく、日常生活に支障がなければ、必ずしも血圧を上げる治療は必要ありません。一方、立つと血圧が下がる「起立性低血圧」や、食後に下がる「食後低血圧」で症状がある場合は、食事や飲み方の工夫が役立つ場合があります。以下、これらの患者さんを対象とした研究をもとにした対策を紹介します。
低血圧の人の食事・飲み物について、食べた方がよいもの・避けた方がよいもの・注意点をまとめた表です。食べた方がよいものは、水・麦茶などの水分(こまめに飲み、脱水を防ぐ。水分制限がある人は主治医の指示を守る)、肉・魚・卵・豆腐など(タンパク質を補う。主食や野菜と組み合わせ、偏りなく食べる)、野菜・果物など(ビタミンやミネラルを補う。多く食べるだけで低血圧が治るわけではない)です。避けた方がよいものはお酒(起立時や食後の血圧低下を悪化させることがある。ふらつく人は控える)、避けた方がよい食べ方は大食い・一度に大量に食べること(食後にふらつく人は1回の量を減らし、食事を分ける)です。主食の重ね食べ・ジュース・菓子パンなどはとりすぎに注意します(食後低血圧がある人は、炭水化物や糖分を一度に大量にとらない。主食を抜く必要はない)。塩分は医師と相談します(自己判断で増やさない。高血圧・心不全・腎臓病がある人は特に注意)。コーヒー・濃いお茶などは増やす必要はありません(カフェインの効果は十分に確立していない。動悸や不眠が出る人は控える)。低血圧が続く場合は、心疾患・貧血・甲状腺機能低下などの原因を調べ、原因疾患があれば治療が必要です。

食べた方がよいのは、水分と栄養のそろった食事

まず意識したいのは、水や麦茶などによる水分補給です。体の水分が不足すると、血管の中を流れる血液の量が減り、血圧が下がりやすくなります。起床後や食事の際など、こまめに飲む習慣をつけましょう。食後にふらつく人では、食事前の飲水が役立つこともあります。ただし、病気のため水分制限を受けている人は、指示された量を守りましょう。
食事は、主食に加え、肉・魚・卵・豆腐などのおかずと、野菜や果物を組み合わせましょう。極端な食事制限や、菓子パンだけで食事を済ませる習慣は、栄養不足につながります。ただし、タンパク質やビタミンを多くとれば低血圧が治る、というわけではありません。特定の食品に頼るのではなく、バランスよく食事をとり、必要なエネルギーと栄養を不足させないことが大切です。
貧血があっても、必ず鉄不足とは限りません。鉄不足と診断された場合は、赤身の肉や魚、豆類などが鉄の補給に役立ちますが、出血やビタミン不足、血液の病気など他の貧血の原因がないかを調べることが必要です。鉄欠乏性貧血が明らかであれば、必要に応じて鉄剤で治療します。「立ちくらみがあるから鉄をとればよい」と自己判断しないようにしましょう。

塩分は、自己判断で増やさないことが大切

塩分には体内に水分を保つ働きがあり、起立性低血圧の治療で摂取量を増やす場合があります。欧州のガイドラインでは、高血圧のない患者さんに、水分1日2~3L、食塩1日10gを目標とする方法が示されています。しかし、これは診断を受けた患者さんへの治療上の目安で、低血圧の人全員にすすめる量ではなく、医師の指示のもとで行う方法であることに注意が必要です。
日本では普段の食事ですでに塩分を多くとっている人もいます。低血圧だからと、漬物や梅干し、ラーメンの汁を積極的にとる必要はありません。安易に自己判断で塩分摂取を増やしてしまうと、高血圧、心不全、腎臓病がある人では、塩分や水分を増やすと病状を悪化させるおそれがあります。また、立つと低血圧でも、横になると高血圧になる人がいるため、摂取量は主治医と相談して決めましょう。

避けた方がよいのは、お酒と「一度に大量に食べること」

お酒は血管を広げ、起立時や食後の血圧低下を悪化させることがあります。飲酒後にふらつく人や、起立性低血圧と診断されている人は、飲酒を控えることが大切です。
食後に血圧が下がる人は、食事の量と炭水化物のとり方にも注意しましょう。食後は消化のために胃腸へ血液が集まります。通常は体が血圧を保つよう調節しますが、この働きが弱いと、ふらつきや眠気が起こります。大量の食事、特に炭水化物の多い食事は、症状を強める場合があります。
例えば、ラーメンとチャーハン、うどんと丼ものなどの主食の重ね食べを控え、主食に魚や豆腐、野菜のおかずを組み合わせます。ジュースや菓子パンだけで一度に多くの糖分をとることも避けましょう。必要なら1回の量を減らし、食事を複数回に分けます。ただし、ごはんや果物を全面的に禁止する必要はなく、1日に必要な栄養を確保することが大切です。

コーヒーに頼りすぎず、症状があれば受診を

カフェインは一時的に血圧を上げ、食後低血圧に役立つ可能性があります。しかし、研究は小規模で、効果は十分に確立していません。コーヒーや濃いお茶を、低血圧の治療として積極的に増やすことはすすめられません。特に動悸や不眠が出る人は控えましょう。
血圧と、立ちくらみ・食後のふらつきが起きた時間を記録すると、診察に役立ちます。症状が続く、急に悪化した、薬を始めてからふらつく場合は、医療機関への受診をご検討ください。
失神した場合も、低血圧だけが原因とは限りません。胸痛や強い息切れ、冷や汗、意識が戻らない状態を伴う場合は、すぐに医療機関を受診することや、救急車を呼ぶことをご検討ください。

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関連する病気と症状

(参考文献)

日本神経治療学会.標準的神経治療:自律神経症候に対する治療.2016.https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/jiritsu.pdf.(参照 2026-10-07).
Brignole M, et al. 2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope. Eur Heart J. 2018;39:1883–1948.
Gibbons CH, et al. The recommendations of a consensus panel for the screening, diagnosis, and treatment of neurogenic orthostatic hypotension and associated supine hypertension. J Neurol. 2017;264:1567–1582.
Wieling W, et al. Diagnosis and treatment of orthostatic hypotension. Lancet Neurol. 2022;21:735–746.
Eschlböck S, Wenning G, Fanciulli A. Evidence-based treatment of neurogenic orthostatic hypotension and related symptoms. J Neural Transm. 2017;124:1567–1605.

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おだかクリニック 循環器内科 副院長

小鷹 悠二 監修

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