「肥満症」は、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣だけが原因で発症するのですか?

いいえ、それだけではありません。遺伝的体質やホルモンの影響、ストレス、特定の薬の副作用など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。

いいえ、「肥満症」は、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣だけが原因で発症するわけではありません。

確かに、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る生活習慣が、肥満症の最も大きな引き金であることは事実です。しかし、同じような生活をしていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、肥満症の発症には生活習慣以外にもさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

肥満症は 「多因子疾患」と呼ばれ、主な要因として以下のようなものが挙げられます。

遺伝的要因

親から受け継いだ遺伝子によって、食欲の強さ、代謝の速さ、脂肪のつきやすさといった「太りやすい体質」が決まっている部分があります。研究では、肥満のリスクの約40〜70%は遺伝的要因が関わるとも言われています。

環境的・社会的要因

高カロリーな食品が安価で手に入りやすい環境、交通機関の発達による身体活動の減少、長時間労働やストレスの多い社会なども、肥満を助長する大きな要因です。

医学的な要因

  • 他の病気の影響:甲状腺機能低下症クッシング症候群など、特定のホルモンの病気が原因で太ることがあります。
  • 薬剤の副作用:一部の抗うつ薬やステロイド薬、糖尿病治療薬などには、副作用として体重増加をきたすものがあります。
  • 加齢:年齢とともに筋肉量が減少し、基礎代謝が低下するため、太りやすくなります。

このように、肥満症は個人の「意志の弱さ」や「自己管理不足」だけで片付けられる単純な問題ではなく、本人の努力だけではコントロールが難しいさまざまな要因のうえに成り立っている医学的な「病気」です。そのため、治療には専門家による多角的なアプローチが必要となります。

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福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長

井林 雄太 監修

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