内臓脂肪が蓄積していると、なぜ「肥満症」として治療が必要になるのですか?

内臓脂肪は生活習慣病を引き起こす悪玉の生理活性物質を分泌し、動脈硬化を進行させます。将来の心筋梗塞や脳卒中を防ぐために治療が必要です。

内臓脂肪が蓄積すると「肥満症」として治療が必要になるのは、それが単なる「見た目の問題」ではなく、さまざまな生活習慣病を引き起こす“悪の司令塔”として働き、将来の深刻な病気のリスクを著しく高めるからです。

お腹の皮膚のすぐ下につく皮下脂肪とは異なり、内臓の周りにつく内臓脂肪は非常に活発で、血液中にさまざまな「悪玉の生理活性物質(アディポサイトカイン)」を分泌します。これらの物質は、以下のような悪影響を及ぼします。

  • 血糖値を下げるホルモン(インスリン)の効きを悪くする(→ 糖尿病の原因)
  • 血圧を上げる(→ 高血圧の原因)
  • 血液中の中性脂肪を増やし、善玉コレステロールを減らす(→ 脂質異常症の原因)

これらの状態が重なることで血管が傷つき、動脈硬化が急速に進行します。その結果、血管が詰まりやすくなり、最終的に心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる病気を引き起こす危険性が飛躍的に高まります。

「肥満症」とは、このように内臓脂肪の蓄積によって、すでに高血圧や糖尿病などの健康障害が起きている状態を指す医学的な病名です。将来の深刻な病気を未然に防ぐために、内臓脂肪を減らすことを目的とした医学的な治療(食事・運動療法など)が必要になるのです。

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福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長

井林 雄太 監修

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