肺がんのHER2検査で偽陽性になることはありますか?
肺がんのHER2検査で偽陽性が起こる可能性はあります。
頻度は高くありませんが、肺がんのHER2検査で「偽陽性(実際は陰性であるにもかかわらず、検査結果が陽性となること)」が起こる可能性はあります。その原因は、検査の種類(IHC法、FISH/DISH法、NGS検査)によって異なります。
肺がんのHER2の状態は、主に以下の3つの方法で調べられ、それぞれに偽陽性の可能性があります。
1. IHC法(免疫組織化学染色法):タンパク質の発現を調べる
がん細胞の表面にあるHER2タンパク質の量を、特殊な染色で可視化して評価する方法です。スコア(0, 1+, 2+, 3+)で判定します。
偽陽性の原因
- 検体の固定不良:組織をホルマリンで固定する時間や条件が不適切だと、非特異的な染色が起こり、過剰に陽性と判定されることがあります。
- 染色工程の問題:試薬の濃度や反応時間、温度などが不適切だと、背景が強く染まりすぎ、正確な評価が困難になります。
- 抗体の非特異的反応:使用する抗体が、HER2タンパク質以外のものにもわずかに反応してしまい、偽の陽性シグナルが出ることがあります。
- 細胞質の染色:本来は細胞の「膜」の染色を見るべきですが、細胞「質」が強く染まった場合に、それを陽性と誤って解釈してしまうことがあります。
- がん組織の不均一性:腫瘍内でもHER2の発現が不均一な(陽性細胞と陰性細胞が混在する)場合、一部の陽性部分だけを評価してしまい、全体として過大評価される可能性があります。
2. FISH法 / DISH法:遺伝子の数を調べる
細胞の核の中にあるHER2遺伝子の数が増えているか(遺伝子増幅)を、特殊な目印(プローブ)を使って直接数える検査です。IHC法でスコア2+(境界域)と判定された場合などに行われます。
偽陽性の原因
- プローブの非特異的結合:遺伝子に結合するはずの目印が、関係ない場所にくっついてしまい、シグナルが過剰に見えることがあります。
- 判定困難なシグナル:シグナルが小さすぎる、または重なっている場合、正確な数を数えるのが難しく、誤ったカウントにつながることがあります。
- 多染色体性(ポリソミー):HER2遺伝子だけが増えているのではなく、HER2遺伝子が存在する17番染色体そのものが3本以上に増えている場合があります。この場合、HER2遺伝子の数も増えますが、治療薬の効果が期待できる「遺伝子増幅」とは生物学的に意味合いが異なる可能性があり、解釈には注意が必要です。
3. NGS(次世代シーケンサー):遺伝子の変異を調べる
肺がんでは、HER2タンパク質の過剰発現や遺伝子増幅だけでなく、HER2遺伝子そのものの構造が変化する「遺伝子変異」も治療の標的となります。これを調べるのがNGS検査(がん遺伝子パネル検査)です。
偽陽性の原因
- 解析エラー:大量の遺伝子情報を読み取る過程で、ごくまれにエラーが生じ、実際にはない変異を検出したかのように報告されることがあります(アーチファクト)。
- DNAの質の低下:ホルマリン固定された組織から抽出したDNAは損傷していることがあり、それが解析エラーの原因となる場合があります。
- 検体中の腫瘍細胞の割合:採取した組織に含まれるがん細胞の割合が低いと、解析の精度が落ち、偽陽性のリスクが高まる可能性があります。
もし検査結果について、疑問や不安がある場合は、主治医に直接質問し、詳しい説明を受けることが重要です。


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京都大学医学部附属病院 呼吸器内科
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(参考文献)
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