肺がんのHER2遺伝子変異の原因を教えてください。
直接的な原因は、まだ完全には解明されていません。
肺がんにおいてHER2遺伝子変異が「なぜ」「どのようにして」起こるのか、その直接的な原因は、まだ完全には解明されていません。これは、HER2だけでなく、EGFRやALKなど他の多くのドライバー遺伝子変異にも共通して言えることです。
しかし、現在までにわかっていることから、以下のように説明できます。
1. 遺伝ではなく「後天的な変化」
まず重要な点として、肺がんで見つかるHER2遺伝子変異は、親から子へ受け継がれる遺伝性(先天性)のものではありません。生まれてから、なんらかの要因によって肺の細胞にだけ起こる後天的な遺伝子の変化(体細胞変異)です。したがって、血縁者に同じ変異が見られることはなく、子どもに遺伝する心配もありません。
2. 偶発的な「コピーミス」の蓄積
私たちの体の細胞は、日々分裂して新しい細胞に入れ替わっています。その際、設計図である遺伝子(DNA)も複製されますが、この過程でごくまれに偶発的なコピーミスが生じることがあります。
通常、こうしたミスは修復されたり、ミスを持った細胞が排除されたりする仕組みが備わっています。しかし、加齢やさまざまな環境要因によってこの修復機能が追いつかなくなると、遺伝子のミスが細胞内に蓄積していきます。
そのミスの蓄積が、たまたま細胞の増殖や生存に関わる重要な遺伝子(HER2など)で起こった場合に、細胞ががん化すると考えられています。
3. 環境要因の影響
タバコの煙に含まれる発がん性物質や、大気汚染、アスベストなどの化学物質への曝露は、細胞の遺伝子にダメージを与え、コピーミスを誘発する大きな要因となります。
ただし、HER2遺伝子変異に関しては、他の特定の遺伝子変異(例:KRAS遺伝子変異と喫煙)ほど強い関連性は示されておらず、非喫煙者にも多く見られることが特徴です。
HER2遺伝子変異が見られやすい方の傾向
直接的な原因は不明ですが、どのような人にHER2遺伝子変異が見つかりやすいか、いくつかの臨床的な特徴が報告されています。
- 性別:遺伝子の「変異」は、女性に多い傾向があると報告されています。
- 喫煙歴:EGFR遺伝子変異と同様に、喫煙歴のない(または喫煙歴の短い)方に見られることが多いとされています。
- 組織型:肺腺がんで見つかることがほとんどです。
肺がんのHER2遺伝子変異は、特定の原因物質によって引き起こされるというよりは、加齢などによる細胞分裂時の偶発的なエラーや、さまざまな環境要因が複雑に絡み合って後天的に発生するものと理解されています。現在も、なぜ特定の遺伝子に変異が起こりやすいのか、その詳細なメカニズムについて、世界中で研究が進められています。


肺がんについて、特に知りたいことは何ですか?
利用規約とプライバシーポリシーに同意のうえ、もっとも当てはまる項目を選択してください。
肺がんについて、気になる症状はありますか?
もっとも当てはまる項目を選択してください。

病気の不安や悩みについて
AIがあなたの質問にお答えします

インタビューに参加すると、
5,000円分のAmazonギフト券プレゼント!
肺がんの疑いがある方や治療中の方を対象に、「オンラインインタビュー」を行なっています。
京都大学医学部附属病院 呼吸器内科
山形 昂 監修
(参考文献)
こちらは送信専用のフォームです。氏名やご自身の病気の詳細などの個人情報は入れないでください。
この記事をシェアする
治療が必要な患者様へのお願い
肺がん
の方は説明を必ずお読みください
こちらのQRコードを
スマーフォンのカメラで読み取ってください
QRコードを読み取るだけ 非接触で安心
一問一答なので 読むのが簡単
どんな治療をするべきか 納得して取り組める
ユビー病気のQ&Aとは?
現役の医師が、患者さんの気になることや治療方法について解説しています。ご自身だけでは対処することがむずかしい具体的な対応方法や知識などを知ることができます。
病気・症状から探す医師・医療機関の方はコチラ医療AIパートナー ユビー
24時間いつでも健康の悩みを気軽にチャットで相談できるあなただけの医療AIパートナー。なんとなく不調な時や人に相談しづらい悩みがあるときも、どんな相談もOKです