ゴーシェ病またはガングリオシドーシス(GM1)
監修医師阿部 吉倫内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
ゴーシェ病とは
体の中で働いている酵素の異常により、分解されるべき物質(糖脂質というものの一種)が溜まっていくことで起こる病気です。遺伝によるもので、大人になる前に見つかることが多いです。
ゴーシェ細胞とは何ですか?
グルコセレブロシドが蓄積した細胞を排除するために、これらを取り込んだ免疫細胞(マクロファージ)のことです。
グルコセレブロシドが蓄積した細胞を排除するために、これらを取り込んだ免疫細胞(マクロファージ)のことをゴーシェ細胞とよびます。
ゴーシェ病は、体の細胞の中にグルコセレブロシドという物質が蓄積されることで起こる病気です。
通常、グルコセレブロシドは、細胞の中にあるライソゾームと呼ばれる小さな器官で、グルコセレブロシダーゼ(GBA)という分解酵素の働きによってグルコースとセラミドに分解されますが、遺伝子の異常によりGBAがうまく機能しなくなると徐々に細胞内にたまってしまいます。
一方、マクロファージという免疫細胞には体内の異物を取り込んで排除する働きがあります。この働きによりグルコセレブロシドが蓄積した細胞を取り込んだマクロファージのことを「ゴーシェ細胞」とよびます。
ゴーシェ細胞の存在を確認することは、ゴーシェ病の診断や治療効果の判定に役立ちます。.jpg?w=640&h=460)
「ゴーシェ病」とはどのような病気ですか?
グルコセレブロシドという物質を分解する酵素が不足・欠如し、骨髄などの細胞内にたまってしまう遺伝性疾患です。
細胞はライソゾームと呼ばれる細胞内器官で不要な物質を分解しています。
ゴーシェ病は、ライソゾーム内ではたらく加水分解酵素のひとつであるβ-ガラクトシダーゼ(GBA)の活性が低下したり、欠損することで発症する先天代謝異常症です。
GBAは細胞膜の構成要素であるスフィンゴ脂質を分解する際にはたらき、グルコセレブロシドをグルコースとセラミドに分解します。
GBAが不足すると白血球の一種であるマクロファージなどの細胞にグルコセレブロシドが徐々に蓄積します。その結果、貧血、血小板減少、肝脾の腫大、骨症状、神経症状を起こします。神経症状のないものはⅠ型、神経症状があり周産期〜小児期に発症するものはⅡ型、神経症状があり乳児期〜小児期に発症するものはⅢ型と分類されます。
日本におけるゴーシェ病の有病率は1/33万人と推定されています。
ゴーシェ病の症状
ゴーシェ病には初期症状はありますか?
お腹のふくれ、出血すると血が止まりにくい、歩きにくい、骨の痛みといった症状が起こります。
肝脾腫によるお腹のふくれ、出血すると止まりにくい、歩きにくい、骨の痛みといった症状が起こることが多いです。ただし、下記のように病型や重症度、発症時期によっても主体となる症状が異なります。
Ⅰ型
Ⅰ型の患者さんは、疲れやすい、鼻血が出やすいといった比較的軽い症状のみで経過して成人まで至ることもあり、血液検査で偶然に貧血や血小板減少が発覚することがあります。
Ⅱ型
Ⅱ型の患者さんのうち、周産期に発症する方は生後まもなく筋緊張の異常や呼吸障害、けいれん、嚥下障害が出現し急速に進行します。乳児期に発症する方は、生後3〜6ヶ月頃から嚥下障害や呼吸障害、目の動きの異常が出現します。
Ⅲ型
Ⅲ型の患者さんの重症度や発症時期はさまざまです。生後4ヶ月で首が座る、5~6ヶ月で寝返り、1歳で独り歩き、といった正常の発達から遅れるため、乳児健診で引っかかり二次検診、病院での詳しい検査と進む方や、てんかんやピクつき、目の動きの異常で病院を受診する方もいます。
ゴーシェ病の赤ちゃんではどのような症状がみられますか?
お腹がふくれる、目の動きがおかしい、首が後ろに反り返る、けいれん発作などの症状がみられます。

ゴーシェ病では、お腹がふくれる、目の動きがおかしい、首が後ろに反り返る、けいれん発作などの症状がみられます。
ゴーシェ病は、遺伝子の異常によってグルコセレブロシダーゼ(GBA)とよばれる分解酵素の働きが悪くなり、体の中にグルコセレブロシドという物質が蓄積する病気です。
主に、肝臓や脾臓、骨髄のほか、脳の中枢神経系に蓄積して、さまざまな症状を引き起こします。
生後3~6ヶ月の赤ちゃんでは進行がはやい場合が多いので、以下のような症状がみられる場合には、小児科を受診しましょう。
ゴーシェ病ではどのような症状がありますか?
肝脾腫、骨折、貧血や血小板減少を起こします。また、神経症状として精神運動発達遅滞、けいれん、筋緊張の亢進などを起こします。
ゴーシェ病では主に肝臓や脾臓、骨髄に存在するマクロファージなどの細胞にグルコセレブロシドが蓄積します。その結果、肝臓や脾臓の腫大、病的骨折を起こします。
また、血液中の細胞を壊すという脾臓の機能が亢進し、貧血や血小板減少が起こるため、息切れや疲労感、出血しやすさといった症状を引き起こし、グルコセレブロシドの変異体が全身および中枢神経系に蓄積することで神経変性が起き、精神運動発達遅滞やけいれん、筋緊張の亢進(首が後ろに反り返るなど)、呼吸障害、眼球運動障害、嚥下障害といった症状につながります。
ゴーシェ病の原因
ゴーシェ病の原因は何がありますか?
グルコセレブロシドを分解するβ-ガラクトシダーゼ(GBA)の遺伝子変異で発症します。
ゴーシェ病はGBA遺伝子の変異により発症します。
これまでに400以上のGBA遺伝子変異の種類が報告されています。「常染色体潜在遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとり、2個1組あるGBA遺伝子の両方ともに変異がある場合のみ発症します。
2個の遺伝子は両親からそれぞれ1個ずつ受け継ぐため、両親ともがGBA遺伝子の変異を持っていてそれを1個ずつ子供に受け継ぐ場合と、一方の親からのみ変異を受け継いだとしてももう片方の親から受け継いだ正常遺伝子に新たに変異を起こして発症する場合があります。
発症に男女差はありません。近親婚では両親が同じ変異を持っている可能性が一般より高いため、次世代にゴーシェ病を発症する確率が上がります。
ゴーシェ病の検査・診断
ゴーシェ病のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
以下の症状がある場合はゴーシェ病の可能性があります。
- お腹がふくれている
- 目の動きがおかしい
- 斜視がある
- 鼻血が出やすい
- 疲れやすい
- 骨折しやすい
- 骨痛がある
- 身長の伸びが悪い
- 乳児健診で標準的な成長・発達から遅れている(首が座らない、お座りできないなど)
- 退行する(一度お座りできるようになったのに、できなくなったなど)

ゴーシェ病の診断にはどのような検査が必要ですか?
スクリーニング検査が陽性になった場合、確定診断のために酵素活性や遺伝子検査などが必要です。
ゴーシェ病の診断では、疑われる症状があればスクリーニング検査をしてから、酵素活性や遺伝子検査で確定します。
- 血液検査:ヘモグロビン低下、血小板減少、アンジオテンシン変換酵素(ACE)・酸性ホスファターゼ(ACP)上昇の有無を確認します。
- 骨髄検査:ゴーシェ細胞の有無を確認します。
- 画像検査:骨の症状が出ることがあるため、 X線検査やCT、MRIなどで骨の状態を確認します。
- 確定診断の検査:末梢血リンパ球や乾燥ろ紙血、グルコセレブロシダーゼ(GBA)活性低下の有無を確認します。
- 遺伝子検査:確定診断として、1番染色体(q21-q31)上 の GBA 遺伝の変異の有無を調べます。
- 神経検査:神経型では脳波、ABR(聴性脳幹反応)、SEP/VEPを調べて異常がないか確認します。
1型非神経型、2型急性神経型、3型亜急性神経に分かれており、病型によって症状が異なります。
ゴーシェ病の治療・対処法
ゴーシェ病またはガングリオシドーシス(GM1)への対処法は?
まずは医療機関を受診して、適切な検査を受けます。酵素の働きを助けるような薬を使って、治療をします。
ゴーシェ病の治療薬にはどのようなものがありますか?
主な治療法として、不足する酵素を補充する治療とグルコセレブロシドが蓄積するのを抑える治療があります。
ゴーシェ病の主な治療法として、不足する酵素を補充する治療(酵素補充療法)やグルコセレブロシドが蓄積するのを抑える治療(基質合成抑制療法)があります。
その他に、日本で保険適用となっている治療法として造血幹細胞移植があります。
①酵素補充療法
不足する酵素を定期的に点滴で補う治療です。肝臓や脾臓の腫れ、骨症状、貧血や血小板減少を改善する効果が認められています。一方、神経症状を改善する効果はないとされています。
②基質合成抑制療法
グルコセレブロシドがつくられるのを抑制する内服薬です。酵素補充療法と同様に、肝臓や脾臓の腫れ、骨症状、貧血や血小板減少を改善する効果が認められていますが、神経症状には効果がないとされています。また、小児には使用できません。
③骨髄移植(造血幹細胞移植)
造血幹細胞を移植し、不足する酵素を体の中で作ることができるようにする治療です。成人には効果が期待できないとされています。
ゴーシェ病の場合、主にどのような治療をしますか?
不足・欠損した酵素の補充やグルコセレブロシドの合成を阻害する内服治療があります。骨髄移植も検討されます。

①酵素補充療法
活性が低下した酵素を定期的に点滴で補う治療です。肝脾腫や血液学的な異常(貧血、血小板減少)には速やかに効果を示します。骨の病変に対しても数年で効果があります。しかし、神経系の症状には効果はありません。
②蓄積基質の合成酵素阻害薬
異常に蓄積するグルコセレブロシドの合成を阻害する内服薬です。酵素補充療法と同等の効果が得られますが、小児には適応がありません。
③骨髄移植
移植された造血幹細胞がさまざまな組織に生着し分化することで、その細胞から正常な酵素を分泌させます。
④遺伝子治療
現在、欧米を中心にいくつか臨床試験が実施されています。
受診の目安・何科を受診するべきか
ゴーシェ病が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
お腹がふくれてきた、発達が遅い、目の動きがおかしいなどを感じた時には小児科を受診してください。
さらに詳しく:ゴーシェ病が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?監修医師白石 達也東日本橋内科クリニック 一般内科 循環器内科ゴーシェ病またはガングリオシドーシス(GM1)の専門医がいる近くの病院はありますか?
ゴーシェ病またはガングリオシドーシス(GM1)の専門医がいる病院を見るゴーシェ病の経過・予後
ゴーシェ病の患者さんの寿命はどのくらいですか?
病型や重症度により変わります。Ⅱ型・Ⅲ型の場合、周産期や2歳頃までに亡くなることが多いです。治療ができた場合には長期生存が期待できます。
病型や重症度、治療が適応となるかどうか等によって寿命はさまざまです。
Ⅰ型では、思春期から成人期になって血液検査などで偶然発見される軽症例もあり、酵素補充療法で問題なく社会生活を送る方もおります。Ⅱ型の周産期発症例は子宮内胎児死亡や新生児期死亡が多いです。
Ⅱ型の乳児期発症例やⅢ型では、何歳に確定診断されて治療が開始されたかや、気管切開や人工呼吸管理、胃瘻(お腹から直接胃に栄養を注入する穴)を導入するかどうかで、寿命は大きく変わります。
早めに治療開始できた症例のほうが予後(病気や治療の経過・結末についての見通し)はよくなり、人工呼吸管理や胃瘻による補助治療を要する症例ではこれらを導入したほうが寿命の延長が見込まれます。
ゴーシェ病に関連するその他の質問
ゴーシェ病では顔立ちに特徴はありますか?
角膜の混濁、斜視、眼球運動の制限、口の開けにくさ、頸部後屈があります。
顔立ち自体が変わってしまうわけではありませんが、神経症状として眼球の運動が障害されたり、口を開けにくくなったり、首が後ろにそり返ったりする(=頸部後屈)ことがあります。また、角膜が混濁するタイプもあります。水頭症と呼ばれる脳脊髄液が頭蓋内に過剰に留まる病態を合併する場合は、頭が大きくなります。
ゴーシェ病は遺伝しますか?
遺伝しますが、父親と母親から受け継ぐ2つの遺伝子の組合せにより、発症する場合としない場合があります。
ゴーシェ病は遺伝しますが、父親と母親から受け継ぐ2つの遺伝子の組合せにより、発症する場合としない場合があります。なお、発症する確率に男女差はありません。
ゴーシェ病は、グルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子の変異によりおこる病気で、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝します。この遺伝形式の場合、父親と母親から受け継ぐ2つのGBA遺伝子の組み合わせによって、ゴーシェ病を発症するかどうかが決まります。
つまり、ゴーシェ病になるのは2つあるGBA遺伝子の両方ともに変異がある場合のみで、逆に、両方の遺伝子に変異がない場合はゴーシェ病にはなりません。
また、2つのうち1つだけに変異がある場合を保因者とよびます。保因者では症状は現れませんが、ごくまれに、正常な遺伝子に新たに変異を起こして発症する場合があります。
ゴーシェ病は代謝異常と関係がありますか?
関係があります。生まれつきグルコセレブロシドを分解する酵素の働きに異常がみられる先天代謝異常症です。
ゴーシェ病は、生まれつきグルコセレブロシドを分解する酵素の働きに異常がみられる先天代謝異常症のひとつです。
遺伝子の異常によってグルコセレブロシダーゼ(GBA)とよばれる分解酵素の働きが悪くなると、白血球の一種であるマクロファージなどの細胞にグルコセレブロシドが徐々に蓄積します。
その結果、貧血、血小板減少、肝臓や脾臓のはれ、骨症状、神経症状などを起こします。
神経症状のないものはⅠ型、神経症状があり周産期〜小児期に発症するものはⅡ型、神経症状があり乳児期〜小児期に発症するものはⅢ型と分類されます。
ゴーシェ病について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「ゴーシェ病またはガングリオシドーシス(GM1)」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 1週間以内にけいれんを起こしていますか?
- お腹にガスがたまったり、張った感じがしていますか?
- けいれんを起こしたのは生まれて初めてですか?
- けいれん発作がありましたか?
- けいれんの後、意識はしばらくもうろうとしていましたか?
ゴーシェ病に関連する病気・症状
この記事の監修医師
阿部 吉倫
内科
2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。2017年5月にUbie株式会社を共同創業。2019年12月より日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science部門選出。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03