甲状腺機能亢進症
監修医師濵﨑 秀崇はまさき医院 内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
甲状腺機能亢進症とは
体の成長・発達や代謝に必要な甲状腺ホルモンがどんどん増える状態です。
甲状腺機能亢進症とはどのような病気ですか?
甲状腺が活発に活動し、血液中にホルモンが大量に分泌される病気です。
甲状腺の機能が活発になり、血液中に甲状腺ホルモンが大量に分泌されることで、さまざまな症状が引き起こされる病気です。
具体的な症状としては、
- 脈が速くなる
- 急に体重が減る
- 汗をかく
- 下痢になる
- イライラしやすくなる
- 食欲が増す
といったものが挙げられます。
また、甲状腺機能亢進症の原因は複数あり、ある種類の原因特有の症状が生じることもあります。
原因として、自分の免疫が甲状腺を刺激するバセドウ病、甲状腺の腫瘍、脳(下垂体)の腫瘍、妊娠初期に一時的に起きるものなどがあります。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
日本甲状腺学会. 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版. 医学書出版, 2018.
甲状腺機能亢進症の症状
どのような症状が見られますか?
脈が速くなる、手が震える、急にやせてしまう、汗の量が増えるなどが主な症状です。不眠や不安感が生じることもあります。
甲状腺ホルモンは全身の代謝(体内の古いものを壊し、新しいものを作る働き)を活発にします。
この甲状腺ホルモンの量が体内で増えすぎると、体のバランスを司る自律神経系の一つである交感神経が興奮して、カテコラミンというホルモンが多く作られるようになります。
その結果として、
- 脈が速くなる
- 急に体重が減る
- 汗をかく
- 下痢
- いらいらしやすい
- 食欲が増す
などの症状が起こります。
また、甲状腺機能亢進症の原因はいくつか考えられますが、原因によっては甲状腺そのものが腫れたり、眼球が前のほうに飛び出たりすることがあります。
甲状腺に腫瘍がある場合、首のあたりに違和感を感じることもあります。
子供が発症した場合、学力低下や落ち着きのなさが兆候となるケースもしばしばあります。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺機能亢進症の原因
甲状腺機能亢進症の原因は何ですか? どのような人がなりやすい病気ですか?
バセドウ病や甲状腺・脳の腫瘍など複数の原因が考えられます。バセドウ病が原因となるケースは、比較的若い女性に多く見られます。
甲状腺機能亢進症の原因はいくつか考えられます。
具体的には、
などが主な原因となります。
これらのうち、甲状腺機能亢進症の原因として最も多いバセドウ病は、20歳代から40歳代にかけて多く見られる病気です。
また、女性のほうがかかりやすい病気(男性より3~5倍多い)でもあります。
なお、バセドウ病の発症の原因は、残念ながらまだはっきりとはわかっていません。
ストレスなどの環境的な要因が関係しているほか、家族内にバセドウ病の患者さんがいる方は発症しやすいとは言われています。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺機能亢進症の検査・診断
どのような検査を行いますか?
血液中のホルモンの量を調べる血液検査と、甲状腺の大きさ・血流・しこりの有無を調べる超音波検査が主になります。
甲状腺が関係するホルモンの濃度や、バセドウ病に関わる抗体の有無を調べるために、血液検査を行います。
また、超音波検査を実施して、甲状腺の状態を視覚的に確認します。
バセドウ病が甲状腺機能亢進症の原因である場合、甲状腺の腫れや血流の増加が見られます。
また、機能性結節(甲状腺ホルモンを分泌する小さめの腫瘍)が原因である場合は、甲状腺の中にしこりが見られるとともに、しこりへの血流増加が確認できることが多いです。
機能性結節の確定診断には、放射線検査(甲状腺シンチグラム)を追加で行う必要があります。
甲状腺機能亢進症の原因が下垂体にあると考えられる場合には、脳のMRIを行います。
参考文献
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
どのようにして診断しますか?
甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの濃度、甲状腺の大きさやしこりの有無から診断します。
血液検査を行って、甲状腺ホルモンの値が高いかどうか、甲状腺を刺激するホルモンの値が低いかどうかを確認します。
加えて、首の痛みの有無や、超音波画像で見た甲状腺の状態などから判断して診断を確定させます。
また、甲状腺機能亢進症の原因が甲状腺の腫瘍によるものかどうかを確かめるために、甲状腺シンチグラムという放射線検査を行うことがあります。
原因が脳(下垂体)の腫瘍である疑いがある場合には、脳のMRIで腫瘍の有無を確認します。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺機能亢進症の治療・対処法
甲状腺機能亢進症への対処法は?
治療が必要です。病院を受診して原因を調べましょう。
治療を開始してから治るまでの流れが知りたいです。
まずは薬物治療を行っていきます。薬でうまく改善しない場合や副作用が見られる場合には、放射線治療や手術の実施も考えます。
まずは甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬や、脈をゆっくりにする薬を使った薬物治療を試みます。
薬の量は、甲状腺の働きを定期的にチェックしながら調整していきます。
薬の効果がうまく出なかったり、副作用が出てしまったりする場合、放射線治療や手術による治療も検討します。
特に、甲状腺ホルモンの異常の原因が甲状腺や脳の腫瘍であるケースでは、それらの腫瘍を取り除く手術を行う可能性を考えます。
参考文献
日本甲状腺学会. 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版. 医学書出版, 2018.
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
一般的にどのような治療を行いますか?
原因がバセドウ病か機能性結節か、もしくはそれ以外かによって治療法が変わります。薬物治療が主となる場合もあれば、放射線治療や手術を行う場合もあります。
脈が速くなるなどの不整脈がある場合には、脈をゆっくりにする薬を使って症状を和らげます。
その他どのような治療を行っていくかは、甲状腺機能亢進症を引き起こしている原因によって変わってきます。
バセドウ病が原因の場合
甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を使った薬物治療を行います。
必要に応じて、放射線治療や手術の実施も考えます。
バセドウ病についてはさら詳しくはこちらをみてください。
甲状腺の腫瘍が原因の場合
腫瘍をアルコールやレーザーなどで焼く治療の実施を検討します。
下垂体の腫瘍が原因の場合
手術による切除の実施を検討します。
参考文献
溝上 哲也. 機能性結節の治療. 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌. 2018, 35, p.167-172.
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
受診の目安・何科を受診するべきか
医療機関を受診する目安はありますか?
ドキドキする、手が震える、急に体重が落ちた、首が腫れた感じがする、異常に疲れやすいなどの症状があるときは受診しましょう。
甲状腺機能亢進症の症状は他の病気の症状としばしば似ています(詳細はこちら)。
正確な原因を自力で特定することは困難なため、疑わしい症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
最寄りの医療機関はこちらの医療機関検索ページから調べられます。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺機能亢進症を放置するとどうなりますか?
心不全や骨粗しょう症になる危険性が増します。出産時のリスクも高まります。
甲状腺機能亢進症の症状の一つに不整脈があり、放置してしまうと心不全に発展してしまうおそれがあります。
特に、不整脈の一種である心房細動は、甲状腺機能亢進症の合併症として最も多く見られる心臓の病気で、脳梗塞や心不全を引き起こす可能性があります。
また、甲状腺ホルモンの働きによって、古い骨がどんどん壊されてカルシウムが尿とともに排泄されてしまったり、カルシウムの吸収効率が悪くなったりする場合があります。
これによって、骨粗しょう症(骨がもろくなり、骨折しやすくなった状態)が進行してしまうことがあります。
また、妊娠中に甲状腺機能亢進症を発症したまま放置してしまうと、妊娠高血圧症候群や流産・早産・死産のリスクが高くなります。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺機能亢進症の専門医がいる近くの病院はありますか?
甲状腺機能亢進症の専門医がいる病院を見る甲状腺機能亢進症の薬
一般的にどのような薬を飲んで治療しますか? 副作用はありますか?
脈をゆっくりにする薬や甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬が一般的に使用されます。それぞれに副作用があります。
脈が速くなる症状や不整脈が見られる場合には、脈をゆっくりにする薬を使用します。
副作用として、脈がゆっくりになりすぎて体がフラフラすることなどがあります。
また、バセドウ病が甲状腺機能亢進症を引き起こしている場合には、甲状腺ホルモンの分泌を抑えるために、抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)を使用します。
副作用としては、
- 白血球の減少
- 肝機能障害
- 湿疹
などが起こる場合があります。
また、稀ではありますが、関節や肺、血管の炎症を起こすこともあります。
万が一副作用が出てしまってもすぐ対応できるように、薬を飲み始めて間もない時期には、短い間隔で外来診療を行います。
参考文献
日本甲状腺学会. 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版. 医学書出版, 2018.
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
甲状腺機能亢進症の経過・予後
薬はいつまで飲むのでしょうか? ずっと飲み続けなくてはいけないのでしょうか?
バセドウ病が原因となっている場合は約2年間飲み続けます。薬を一旦やめた後も再発する可能性があるため要注意です。
不整脈の症状に対して飲む薬は、甲状腺ホルモンの分泌量が正常になって、脈の打ち方にも問題がなくなれば、飲むのを中止してかまいません。
ただし、服薬の中止については自分だけで判断せず、必ず担当医師と相談するようにしましょう。
バセドウ病が甲状腺機能亢進症の原因となっている場合、バセドウ病の薬は、基本的に約2年間にわたって継続的に服用していきます。
ただし、服薬をやめた後でバセドウ病が再発する確率は30%以上と報告されており、完全に服薬を終了できる確率は60〜80%程度です。
服薬終了後の再発を2回以上繰り返す場合や、甲状腺の腫れがひどい場合は、薬を終了できる確率が低いため、治療法の変更も検討します。
また、服薬をやめた後も、年1回は甲状腺機能に異常がないかチェックする必要があります。
妊娠など一時的な原因がきっかけになっている場合には、原因がなくなれば治まっていき、薬を飲む必要はなくなります。
甲状腺や脳の腫瘍が原因の場合、手術で原因箇所を取り除くことができれば、薬を飲む必要はなくなります。
ただし、原因箇所を一部取り除ききれなかった場合など、薬を飲み続けなくてはならないこともあります。
参考文献
Birte Nygaard. Hyperthyroidism (primary). BMJ Clin Evid. 2010, 611.
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
対処法・セルフケア
薬が効かない場合はどうしたらいいですか?
放射線治療や手術など他の治療法を検討します。担当医師と相談しましょう。
放射線治療や手術など、薬物治療以外の治療法を検討します。
施設によっては内視鏡手術の実施も可能です。
それぞれメリット・デメリットがありますので、担当の先生と相談して方針を決めていきましょう。
参考文献
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
治療中に、日常生活で気をつけることは何でしょうか?
規則正しい生活を心がけ、疲れやストレスがたまらないようにしましょう。禁煙も大切です。
身体ストレスはバセドウ病を悪化させるため、なるべくストレスのかからない生活を意識しましょう。
また、高温環境下での運動は交感神経を興奮させて甲状腺機能異常を促進してしまうため、できる限り避けるようにしましょう。
煙草を吸う習慣のある方は、禁煙することが望ましいです。
その他、疲労やストレスの蓄積につながる生活習慣は改め、規則正しい生活を送れるようにしましょう。
なお、海藻類に多く含まれるヨードの摂取量には注意が必要と言われることがありますが、海藻類は普通に食べて問題ありません。
参考文献
日本甲状腺学会. 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版. 医学書出版, 2018.
日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
甲状腺機能亢進症に関連するその他の質問
甲状腺機能亢進症とバセドウ病の違いは何ですか?
バセドウ病は、いくつかある甲状腺機能亢進症の原因の一つです。
甲状腺機能亢進症が起こる原因はいくつかあります。
バセドウ病はそれらの原因の代表的な一つであり、バセドウ病=甲状腺機能亢進症というわけではありません。
甲状腺機能亢進症の他の原因についてはこちらのページをご覧ください。
参考文献
中島康代,山田正信. 内分泌疾患・糖尿病・代謝疾患ー診療のエッセンス 甲状腺中毒症. 日本医師会雑誌. 2021, 150, p.96-99.
甲状腺は体のどこにありますか?
喉仏の下あたりにあります。
甲状腺とは、喉仏の下あたりにある、蝶々が羽を広げたような形をした小さな臓器で、身体全体の代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しています。
一般的に男性に比べて女性のほうが喉仏が小さいため、甲状腺の位置は男性よりも女性のほうが高くなる傾向にあります。
参考文献
日本甲状腺学会. 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版. 医学書出版, 2018.
甲状腺機能亢進症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「甲状腺機能亢進症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 皮膚が湿っていて、あたたかいですか?
- 汗をかいていますか?
- 前と比べて、自分の目玉が飛び出していると感じますか?
- 最近やせてきていますか?
- 胸がどきどきしていますか?
甲状腺機能亢進症に関連する病気・症状
この記事の監修医師
濵﨑 秀崇 先生
はまさき医院 内科・糖尿病内科・内分泌・代謝内科
【経歴】 2002年 東京大学理学部 生物学科 卒業 2008年 広島大学医学部 医学科 卒業 2008年 国立病院機構横浜医療センター 研修医 2010年 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 レジデント 2012年 国立国際医療研究センター国府台病院 内科 医師 2016年 自治医科大学大学院 医学系研究科 卒業 2017年 医療法人泰水会 濵﨑クリニック 医師 2022年 University of Derby MBA Global 修了 2024年 University of Manchester MRes Public Health 修了
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03