マラリア
監修医師五十嵐 健史内科
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2020/09/03
マラリアとは
マラリア原虫の感染症です。亜熱帯・熱帯地域に多い病気で、蚊が病原体を媒介します。高熱や筋肉痛などを起こします。
「マラリア」とはどのような病気ですか?
「マラリア」とは、ハマダラカという蚊の一種が媒介する病原体に感染することで起こる病気です。
マラリアは、蚊によって媒介される深刻な感染症です。発症すると、突然の高熱、悪寒、発汗、全身のだるさ (倦怠感)、頭痛などが現れます。
マラリアは、プラスモディウム属の原虫によって引き起こされます。主に5種類のマラリア原虫がヒトに感染し、そのうち最も一般的なのは熱帯熱マラリア原虫と三日熱マラリア原虫です。
マラリアの感染は、マラリア原虫を保有する雌のハマダラカ(蚊の一種)に刺されることで起こります。蚊が感染者を刺すと原虫を取り込み、その後、別の人を刺す際に原虫を伝播します。
マラリアの症状
マラリアには初期症状はありますか?
初期症状として全身の倦怠感や背中の痛み、食欲の低下などが見られます。
マラリアには初期症状があります。主な初期症状は以下の通りです。
主な初期症状
その他の初期症状
- 吐き気
- 疲労感
- 漠然とした不快感
これらの症状は、感染した蚊に刺されてから通常7〜30日後に現れます。ただし、マラリアの初期症状はインフルエンザや他のウイルス感染症と似ているため、誤診される可能性があります。
重要なのは、マラリア流行地域への渡航歴がある場合、これらの症状が現れたらただちに医療機関を受診することです。
マラリアではどのような症状がありますか?
症状として悪寒や発熱、倦怠感や貧血があります。また重症の場合、呼吸障害やけいれん、昏睡といった症状も見られます。
マラリアの主な症状には以下のようなものがあります。
①一般的な症状
②消化器症状
③その他の症状
- 貧血
- 脾臓の腫れ
- 呼吸困難
④重症化した場合の症状
- 錯乱
- けいれん発作
- 昏睡
- 重度の呼吸障害
- 腎不全
- 黄疸
マラリアの症状はインフルエンザや他のウイルス感染症と似ているため、誤診される可能性があります。特に発症から3〜5日で重症化する可能性があるため、マラリア流行地域への渡航歴がある場合は、これらの症状が現れたらただちに医療機関を受診することが重要です。
また、マラリアの種類によって発熱のパターンが異なることがあります。例えば、三日熱マラリアや卵形マラリアでは48時間ごとに、四日熱マラリアでは72時間ごとに発熱が繰り返されることがあります。
マラリアの原因
マラリアの原因は何がありますか?
ハマダラカという蚊が媒介する、マラリア原虫という病原体に感染することで起こります。
マラリアは、プラスモディウム属の原虫によって引き起こされます。
ヒトに感染する主なマラリア原虫には以下の種類があります。
- 熱帯熱マラリア原虫 (Plasmodium falciparum)
- 三日熱マラリア原虫 (Plasmodium vivax)
- 四日熱マラリア原虫 (Plasmodium malariae)
- 卵形マラリア原虫 (Plasmodium ovale)
近年、第5のヒトマラリアとして、サルマラリア原虫の一種であるPlasmodium knowlesiのヒトへの感染も確認されています。
マラリアの感染は、マラリア原虫を保有する雌のハマダラカ(Anopheles mosquitoes)に刺されることで起こります。ハマダラカ種には400以上の種類がありますが、そのうち約30種類がマラリアの重要な媒介蚊とされています。
マラリアの検査・診断
マラリアのセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
マラリアのセルフチェックは可能ですが、正確な診断には医療機関での専門的な検査が必要です。ただし、以下のような症状や状況に注意することで、マラリアの可能性を自己評価することはできます。
マラリアになりやすい人の特徴に、以下が挙げられます。
主な症状のチェック
- 発熱:マラリアの最も一般的な症状です。特に周期的な発熱パターンが特徴的です
- 悪寒と発汗:発熱に伴い、悪寒戦慄(激しい寒気とふるえ)が起こり、その後大量の発汗がみられます
- 全身のだるさ:強い疲労感や倦怠感を感じます
- 頭痛と筋肉痛:激しい頭痛や全身の痛みを伴うことがあります
- 消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢などが現れることがあります
リスク要因の確認
- 渡航歴:マラリア流行地域への渡航歴があるかどうかを確認します
- 潜伏期間:帰国後、数日から数週間(場合によっては数ヶ月以上)経過してから症状が現れる可能性があります
- 蚊に刺された記憶:マラリア流行地域で蚊に刺された記憶があるかどうかを確認します
また、症状検索エンジン「ユビー」で質問に沿って回答を進めるだけで、マラリアかどうかのセルフチェックができます。ぜひご活用ください。
マラリアの治療・対処法
マラリアへの対処法は?
適切な治療が行われないと命を落とすこともありますので、医療機関を受診してください。蔓延地域に渡航する場合には、職場や保健所などに予防投薬の必要性についてお問い合わせください。
マラリアの場合、主にどのような治療をしますか?
マラリアの治療では、クロロキンやピリメタミンといった抗寄生虫薬を服用します。
治療は抗マラリア薬により行われます。抗マラリア薬にはいくつか種類があり、通常は内服ですが、重症例では注射や座薬での治療が行われる場合があります。
抗マラリア薬による治療
アルテミシニン併用療法(ACT)
最も効果的で広く使用されている治療法です。特に熱帯熱マラリアに対して有効とされています。
その他の抗マラリア薬
マラリアの種類や薬剤耐性の状況に応じて、以下のような薬剤が選択されます。
- メフロキン
- キニーネ
- プリマキン
重症マラリアの治療
重症例では、非経口的な投与が必要となります。
- キニーネ注射薬
- アルテミシニンおよびその誘導体の注射や坐剤
支持療法
水分補給
発熱や嘔吐による脱水を防ぐため、積極的な水分摂取が推奨されます。重症の場合は点滴が必要となることもあります。
解熱剤
アセトアミノフェンなどが使用されることがあります。
合併症の管理
重症マラリアでは多臓器不全などの合併症に対する治療も行われます。
受診の目安・何科を受診するべきか
マラリアが疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
マラリアが疑われる場合は感染症科を受診しましょう。
マラリアが疑われる場合、主に以下の診療科を受診することが推奨されます。
①感染症科
感染症科は、マラリアのような感染症を専門に扱う診療科です。マラリアの診断と治療に関する専門的な知識と経験を持つ医師が在籍しているため、最適な診療を受けられる可能性が高くなります。
②渡航医学専門外来、トラベルクリニック
多くの大学病院や総合病院では、「ワクチン・渡航外来」や「トラベルクリニック」といった名称で、海外渡航に関連する感染症を専門に扱う外来を設けています。
これらの外来では、マラリアの診断や治療に加え、他の熱帯病や輸入感染症にも対応できる体制が整っています。
③総合診療科・内科
マラリアの初期症状は発熱や全身倦怠感など、一般的な感染症と似ている場合があります。そのため、総合診療科や内科を受診し、そこから適切な専門科へ紹介されるケースも多いです。
マラリアの専門医がいる近くの病院はありますか?
マラリアの専門医がいる病院を見るマラリアの薬
マラリアは主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
クロロキンやピリメタミンといった抗寄生虫薬を服用します。副作用として吐き気や下痢、発疹といった症状があります。
マラリアの治療には主に以下の薬剤が使用されます。
アルテミシニン併用療法(ACT)
最も効果的で広く使用されている治療法です。特に熱帯熱マラリアに対して有効とされています。頭痛、食欲不振、めまい、脱力などの副作用が起こることがあります。
メフロキン
副作用にはめまい、嘔気、うつ状態などがあります。
キニーネ
長期間または頻繁に使用すると、聴力や視力の低下などの重い副作用が出る可能性があります。
プリマキン
副作用には発疹、悪心、白血球減少などがあります。
対処法・セルフケア
マラリアの場合、日常生活で気を付けることはありますか?
マラリアは直接人から人へと移ることはないので、感染しても隔離等は必要ありません。
マラリアの予防において、日常生活で気をつけるべき重要なポイントがいくつかあります。
①蚊に刺されない対策
衣服の選択
長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を最小限に抑えましょう。明るい色(白っぽい色)の衣服を選ぶことも効果的です。また、素足でサンダルを履くのは避けましょう。
蚊帳、虫よけ剤の使用
就寝時は必ず蚊帳を利用しましょう。また、虫よけ剤を適切に塗ることも重要です。特に夏など汗をかきやすい時期は、こまめに塗り直すことを心がけましょう。
活動時間の調整
ハマダラ蚊の活動時間帯(夕方から明け方まで)は外出を避けるようにしましょう。
②住環境の整備
網戸の設置
蚊が屋内に侵入しないよう、窓や玄関に網戸を設置しましょう。隙間があれば、スポンジや段ボールなどで埋めます。
蚊取り対策
蚊取り線香や電気蚊取り、スプレーなどを使用して、屋内の蚊を駆除しましょう。
③個人衛生と生活習慣
清潔の保持
こまめにシャワーを浴びて身体を清潔に保ちましょう。特に飲酒後は蚊が集まりやすいので注意が必要です。
香りの強い製品を避ける
香水など香りの強いものの使用は控えましょう。
規則正しい生活
睡眠不足や暴飲暴食、過密なスケジュールによる疲労の蓄積を避け、規則正しい生活を心がけることが重要です。
④その他の注意点
予防薬の内服
マラリア流行地に滞在する場合は、医師の指示に従って予防薬を適切に内服することが重要です。
症状の早期発見
マラリアの症状(発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛など)に注意し、疑わしい症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
これらの対策を日常生活に取り入れることで、マラリア感染のリスクを大幅に減らすことができます。特に流行地域に滞在する場合は、これらの予防策を徹底することが重要です。
マラリアで薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
マラリアは一部の薬剤へ耐性のある病原体が存在するので、使用する薬剤を変更します。
マラリアの治療において薬が効かない場合、以下のような対応が必要です。
①専門医による診断と治療
感染症専門医の診察を受ける
薬剤耐性マラリアの可能性があるため、感染症の専門知識を持つ医師の診断を受けることが重要です。
正確な診断の実施
マラリアの種類や薬剤耐性の有無を正確に判断するため、血液検査などの詳細な検査が行われます。
②治療方針の見直し
抗マラリア薬の変更
効果がない薬から、別の種類の抗マラリア薬に変更される可能性があります。
併用療法の検討
複数の抗マラリア薬を組み合わせて使用する併用療法が選択されることがあります。
投与量や投与期間の調整
薬の効果が不十分な場合、投与量や治療期間が見直される可能性があります。
薬剤耐性マラリアは深刻な問題であり、適切な治療が重要です。医療機関での早期受診と、医師の指示に従った治療の継続が不可欠です。
マラリアに関連するその他の質問
マラリアの致死率はどのくらいですか?
マラリアの死亡率はおよそ0.25%です。
マラリアの致死率は、感染の種類や地域によって大きく異なります。以下にマラリアの致死率に関する重要な情報をまとめます。
全体的な致死率
2022年の世界的なデータによると、マラリアの全体的な致死率は約0.24%と推定されます。この年、世界85カ国で約2億4,900万人がマラリアにかかり、そのうち60万8,000人が死亡したと報告されています。
アフリカ地域
アフリカ地域は、マラリアによる死亡者数が最も多い地域です。2022年には、世界のマラリア患者さんの94%(2億3,300万人)がアフリカ地域で発生しました。同年、マラリアによる死亡者の95%(58万人)もこの地域で報告されています。
アフリカ地域では、マラリアによる死亡者の約80%が5歳未満の小児です。
特定のリスク群
妊産婦やHIV感染者は、免疫力の低下からマラリアに感染すると重症化しやすく、致死率が高くなる傾向があります。
マラリアは予防と適切な治療が可能な病気ですが、早期診断と迅速な治療が致死率を大きく左右します。特に熱帯熱マラリアの場合、診断や治療の遅れが致命的な結果をもたらす可能性があるため、注意が必要です。
マラリアの感染経路は何ですか?
マラリア原虫をもったハマダラカに刺されることで感染します。人から人へ直接感染することはありません。
マラリアの主な感染経路は以下の通りです。
蚊を介した感染
マラリアの感染は主に、マラリア原虫に感染した雌のハマダラカ(Anopheles mosquitoes)に刺されることで起こります。感染のプロセスは以下のようになります。
- 感染した人の血液を吸血した蚊の体内でマラリア原虫が増殖します
- その蚊が別の人を刺すと、唾液と共にマラリア原虫が体内に送り込まれます
- 体内に入った原虫は肝臓で増殖し、その後、赤血球に侵入して感染が広がります
その他のまれな感染経路
非常にまれですが、以下のような経路でもマラリアに感染する可能性があります。これらの経路はまれですが、医療現場では注意が必要です。
- 感染した母体から胎児への垂直感染
- マラリア原虫に汚染された血液の輸血
- 感染した臓器の移植
- マラリアにかかっている患者さんが使用した注射針の再使用
マラリアの予防には、蚊の制御が重要な役割を果たします。個人レベルでの防蚊対策や、地域社会全体での蚊の制御活動が感染リスクの低減に効果的です。
マラリアは日本でも感染しますか?
基本的に日本でマラリアに感染することはなく、国内でみられる感染者は海外からの帰国者です。
マラリアは現在、日本国内では感染のリスクが低い病気ですが、将来的には気候変動の影響で状況が変わる可能性があります。
現在の日本におけるマラリアの状況
日本では現在、マラリアは過去の感染症として扱われており、国内での感染例は1959年を最後に報告されていません。現在日本で報告されるマラリア患者さんは、海外の流行地域で感染して帰国したケース(輸入マラリア)がほとんどです。
将来的なリスク
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、地球温暖化の進行に伴い、日本の西日本一帯がマラリアの潜在感染危険地域に含まれる可能性があります。温暖化が進めば、マラリアを媒介するコガタハマダラカの生息域が沖縄本島から九州南部、四国の太平洋地域まで拡大する可能性があります。
現在の日本では、マラリアに感染するリスクは非常に低いですが、気候変動の影響により将来的にはリスクが高まる可能性があります。そのため、感染症への知識と警戒を持ち続けることが重要です。
マラリアについて、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「マラリア」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 体温は37.5℃以上ですか?
- 体のだるさはありますか?
- 寝汗がひどく着替えることがありますか?
- 頭痛がありますか?あるいは頭が重いですか?
- 安静にしていても関節が痛みますか?
マラリアに関連する病気・症状
この記事の監修医師
五十嵐 健史
内科・麻酔科
東京大学医学部卒。東京都健康長寿医療センターで初期研修を行い、2017年10月よりUbie株式会社に就職。Ubie株式会社では医学データの登録や修正のほか、製薬チームのサポートも行う。現在は内科医として勤務中。
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2020/09/03