槌指が治らないのはなぜ?槌指
監修医師濱畑 智弘山田記念病院 整形外科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
槌指(マレットフィンガー)とは
「槌指(マレットフィンガー)」とはどのような病気ですか?
怪我のあとに指の第一関節が曲がり、自分でまっすぐ伸ばせなくなる状態です。
槌指(つちゆび:マレットフィンガー)とは、指の最も先端にある関節(いわゆる第1関節)が、まるで木槌のように曲がったままになってしまう病気です。これは突き指など、指先に強い外力が加わることで起こります。この病気の本質的な問題は、指先を伸ばすための伸筋腱(しんきんけん)がうまく機能しなくなることです。このため、指を伸ばすことができなくなります。
この病気は損傷のタイプによって、主に2つに分けられます。
腱性マレット指
指を伸ばすスジ(伸筋腱)が切れてしまう、または伸びてしまうタイプです。
骨性マレット指
伸筋腱が付着している指先の骨(末節骨)が、骨折を生じてずれてしまうタイプです。関節に損傷が及ぶと、指の曲げ伸ばしの機能障害や痛みの持続にもつながるため、早めに適切な治療を受ける必要があります。
どちらのタイプも、自分で指先をまっすぐに伸ばすことができなくなる点や、第一関節に腫れや痛みを生じる点で共通しています。見た目での判断はできません。正確な診断と治療のためにも整形外科を受診しましょう。
槌指(マレットフィンガー)の症状
槌指(マレットフィンガー)には初期症状はありますか?
怪我の直後から、指の第1関節が曲がってしまい、自力ではまっすぐに伸ばせなくなります。
槌指の初期症状は、受傷した直後から現れる主な症状と同じです。指の第1関節(DIP関節)に怪我をした直後から、指先が曲がった状態となり、自分で指をまっすぐに伸ばそうとしても、関節を伸ばせなくなります。また、怪我をした直後は、その場所に痛みや腫れを伴うことが一般的です。
ただし、指を伸ばす伸筋腱だけが切れた場合(腱性マレット指)では、強い痛みがなく「ただ指が曲がったままになって伸ばせない」と感じるだけの場合もあります。この病気は早い段階から適切な治療を行わないと、治療にかなり時間がかかったり、指を伸ばす機能が完全に回復しない場合があります。痛みが軽くても、自分で指を伸ばせない場合は、早めに受診することが大切です。
槌指(マレットフィンガー)はどんな症状ですか?
指先が曲がったままになり、自分で伸ばせなくなります。痛みや腫れを伴うこともあります。
槌指の最も特徴的な症状は、指先の第1関節(医学的にはDIP関節と呼ばれます)が曲がったままになり、自力ではまっすぐに伸ばすことができなくなることです。しかし、他の指で補助したり、誰かに手伝ってもらったりすれば、あまり抵抗なく曲がった関節を伸ばすことができます。それ以外のこの病気の症状には、次のようなものがあります。
痛みと腫れ
怪我をしてから数日は関節の周りの痛みや腫れを伴うことが多いです。
痛みの程度の違い
指を伸ばす腱(伸筋腱)だけが切れた「腱性マレット指」の場合、強い痛みがないか、痛みがあってもわずかであることがあります。
スワンネック変形
もし治療せずに放置してしまうと、第2関節(PIP関節と呼ばれます)が過剰に反って、指全体がS字型に変形する「白鳥の首変形(スワンネック変形)」という別の変形を引き起こすことがあります。
槌指(マレットフィンガー)の原因
槌指(マレットフィンガー)の原因は何がありますか?
球技中の突き指や、指先に強い力が加わる怪我が主な原因です。
槌指の多くは、外部からの強い力によって引き起こされる外傷性(けがによる)のものです。主な原因としては次のようなものがあります。
突き指
ボールなど(野球、バレーボール、バスケットボールなどの球技)が指先に強く当たり、指の第1関節が急に強く曲げられることで損傷します。特に野球では「ベースボールフィンガー」とも呼ばれます。
その他の強い外力
重い物を持ち上げる、皿洗い中に力を入れすぎる、引き出しにぶつけるなど、指先に強く曲げる力が加わった場合にも発生します。
切創(切り傷)
ナイフや鋭利な物体で指を深く切り、伸筋腱(指を伸ばすスジ)が直接切断されてしまうケースもあります。
外傷以外のもの
まれですが、関節リウマチなどの病気が原因で発症することもあります。
槌指(マレットフィンガー)の検査・診断
槌指(マレットフィンガー)のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
この病気を自分で完全に診断することはできませんが、疑うべき症状があるかどうかをチェックすることは可能です。セルフチェックの方法には以下のようなものがあります。
- 怪我をした指の第2関節(PIP関節)を、反対の手でしっかりと抑えます。
- その状態から、指先の第1関節(DIP関節)を、自分の力だけでまっすぐに伸ばせるかどうか試します。もし、指の第1関節が曲がったままになり、自分の力ではまっすぐ伸ばせない場合は、この病気の可能性があります。
- この際、誰かに手伝ってもらったり、反対の手でつまんだりすれば関節を伸ばすことができます。
このチェックで槌指が疑われる場合は、自己判断せず、すぐに整形外科を受診してください。指を引っ張るなどの民間療法は、骨折や脱臼を見逃す可能性があり危険です。病気の状況によっては手術が必要な場合があり、診療に精通している整形外科医が手術の必要性を判断します。
また、症状検索エンジン「ユビー」で質問に沿って回答を進めるだけで、槌指かどうかのセルフチェックができます。ぜひご活用ください。
槌指(マレットフィンガー)の治療・対処法
槌指(マレットフィンガー)によるマレット変形は治りますか?
適切な治療を行えば、手術を行う・行わないにかかわらず、良い治療結果が期待できます。
はい、適切な診断と治療を早い段階から行うことで、マレット変形は良好な回復が期待できます。治療の目標は、指先の第1関節(DIP関節)を、自分の力でしっかりと伸ばせるように機能を回復させることです。過去の報告から、装具による治療(保存的治療)と手術による治療のどちらも優れた治療結果をもたらすことが示されています。
また、怪我をしてから時間が経過してしまった場合(慢性期)でも、指をしっかりと伸ばした状態で固定することで、日常生活に支障がない程度まで回復することが多いとされています。ただし、治療せずに放置し、指の形がS字に反ってしまう「白鳥の首変形(スワンネック変形)」に至ってしまった場合は、治療が難しくなり、再建手術が必要となる場合があります。
この病気は早期に専門医の診察を受け、必要な治療を開始することが治癒への鍵となります。
槌指(マレットフィンガー)の場合、主にどのような治療をしますか?
一般的には腱性では装具による保存治療が行われ、骨性では手術が必要となる場合があります。
槌指の治療は、なるべく早く、十分に指を伸ばす機能を取り戻すことを目的に行われます。この病気は、損傷のタイプや、怪我をしてからどれくらい時間が経ったかによって治療法が異なる場合があります。全体としては、手術と手術以外の治療(保存的治療)のどちらも遜色ない良い結果が報告されており、どちらを選ぶかは患者さんの状況ごとに検討されます。
腱性マレット指(伸筋腱の損傷)
装具(シーネやギプス)を使った保存的治療が一般的です。第1関節をまっすぐに伸ばした状態で、通常6週間から8週間、装具を用いて固定します。
骨性マレット指(骨折を伴う損傷)
骨折を伴う場合は、手術が必要になることがあります。よく行われる手術法としては、皮膚の上から細い鋼線(K-ワイヤー)を使って骨折部を固定する「石黒法」があります。損傷の程度によっては、骨折部を直接確認して整復する必要があり、その場合は少し傷が大きくなります。骨折部のずれが大きい場合や、骨が脱臼しかけている場合(亜脱臼)がある際には、手術が優先される場合が多いです。
ただし、実際の治療は患者さんの状況によって異なります。担当する医師にしっかりと確認しましょう。
受診の目安・何科を受診するべきか
槌指(マレットフィンガー)が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
この病気が疑われる場合、整形外科を受診してください。
この病気が疑われる場合、指や手の専門的な診断と治療を行う「整形外科」を受診してください。突き指の際に骨折を伴っているか(骨性マレット)、指を伸ばす伸筋腱だけが切れているか(腱性マレット指)を確認するために、X線(レントゲン)撮影が重要になります。
怪我の状況やどの程度時間が経っているかによって治療法が変わる場合があるため、専門医である整形外科医に詳しく相談して治療を受けることが重要です。骨性マレットでは手術が必要な場合があり、手術が可能な病院を紹介されることがあります。
槌指の専門医がいる近くの病院はありますか?
槌指の専門医がいる病院を見る槌指(マレットフィンガー)の薬
槌指(マレットフィンガー)は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
消炎鎮痛剤の飲み薬や塗り薬が使用されることがあります。
この病気により痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤の飲み薬や塗り薬を使用することで症状の改善が期待できます。この病気の治療の原則は、装具や手術によって腱や骨が回復するまでの期間、患部を固定し続けることです。薬だけで腱や骨がつながることはありません。このため、薬は受傷直後の炎症や痛みをコントロールするために使用されます。主にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれるロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどが用いられます。
【副作用について】
NSAIDsは強い鎮痛作用を持つ反面、以下のような副作用のリスクがあります。
- 消化器症状: 胃の粘膜を保護する成分の働きも抑制してしまうため、胃痛や吐き気、胃潰瘍などが起こりやすくなります。
- 腎機能障害: 長期間服用し続けると、腎臓の血流が悪くなり負担がかかることがあります。
- 皮膚症状: 湿布などの外用薬では、かぶれや光線過敏症(日光に当たった場所が赤く腫れる)が出ることがあります。
薬の使用の必要性や副作用については、医師や薬剤師に確認し、説明を受けて正しい量を使用しましょう。
対処法・セルフケア
槌指(マレットフィンガー)の手術後、気を付けることは何ですか?
骨折部の安静保持が重要です。爪の変形や傷口の細菌感染などの合併症にも注意が必要です。
手術後の回復を確実にするためには、骨折部の安静保持と合併症への注意が必要です。具体的には以下のようにいくつかの注意点があります。
固定期間とリハビリ
骨折を固定するために使用した鋼線(K-ワイヤー)は、骨がくっついたことが確認された後(通常は術後4~6週間)に抜去されます。その後、指の動きを回復させるための積極的なリハビリが開始されます。このように安静が必要な期間と、リハビリが重要な期間を意識することが大切です。
夜間固定の継続
鋼線を抜いた後も、治療効果を維持して再発を防ぐために、夜間に装具やシーネで第1関節を伸ばした状態に固定し続ける場合があります。状況によって固定方法や期間が異なるため、医師の指導にしっかり従いましょう。
合併症の観察
手術では、保存的治療に比べていくつかの合併症が起こる可能性があります。特に注意すべき合併症には、ピン刺入部近くの爪の変形や細菌感染症があります。また、まれに固定した骨の位置が再びずれてしまうことや、腱の断裂などが起こる可能性があるため、異常を感じたらすぐに医師に報告することが重要です。
槌指(マレットフィンガー)で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
痛み止めの種類を変更したり、装具の種類を変更したりすることで症状が改善するかを確認します。
薬の効果が不十分で痛みが強い場合には、まずは痛み止めの種類を変更して鎮痛効果を高めたり、固定のために使用している装具を変更し、症状の改善が得られるかを確認します。そのうえで、これ以上装具による保存療法を続けても治癒が難しいと判断された場合は、手術の必要性を検討します。
【手術が必要になるケース】
骨折を伴う「骨性マレット指」で、骨折部が大きくずれている場合や、長期間の固定でも腱がつながらなかった場合です。
【主な手術方法】
経皮鋼線刺入法(石黒法など)
皮膚を切開せず、外から数本の鋼線(ワイヤー)を骨に刺して、関節と骨片を固定する方法です。身体への負担が比較的少なく、主流となっている術式です。
観血的整復固定術
皮膚を切開し、直接患部を見ながら小さなネジやアンカー(錨のような器具)を使って腱や骨を固定します。
槌指(マレットフィンガー)に関連するその他の質問
槌指(マレットフィンガー)が治らないのはなぜですか?
十分な装具固定を守っていない場合や、骨折を伴う重症例である場合などがあります。
この病気が治らない、または治りにくい主な原因には、患者さんが治療の指示を正しく守れない場合や、重度の骨折を伴う損傷であるため手術療法が必要な場合などがあります。具体的には以下のような場合です。
固定の不徹底
装具を使用する保存加療において、指先の第1関節をまっすぐに固定し続けることが非常に重要です。自己判断で装具を外したり、固定期間を守らなかったりすると、指を伸ばす伸筋腱が修復できずに治癒が難しくなります。
治療開始の遅れ
怪我をしてから時間が経つと、腱や骨折部位が元の位置に戻りにくくなり、治療に苦労することが多くなります。
重度の損傷
骨折を伴い、骨片が大きくずれている場合や、関節が脱臼しかけている場合(亜脱臼)など、重度の骨性マレットでは、手術による正確な整復と固定が必要になります。骨折の重症度によっては、手術を行った場合でもリハビリを含めた治療期間が長くなる場合があります。
合併症の発生
治療過程で「スワンネック変形」や細菌感染症、皮膚トラブルなどの合併症が発生すると、機能回復が困難になることがあります。
この病気は正常な経過でも治療期間が長くなることが一般的です。治療に難渋する原因は個々の状況によって異なるため、十分に医師の話を聞くようにしましょう。
槌指(マレットフィンガー)について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「槌指」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 手の指関節に痛みがありますか?
- 手の指が痛みますか?
槌指(マレットフィンガー)に関連する病気・症状
この記事の監修医師
濱畑 智弘 先生
山田記念病院 整形外科
慈恵医大を卒業。 浅ノ川総合病院、厚生中央病院を経て2021年4月より浅草病院 整形外科に勤務。 整形外科一般および人工関節置換術を専門とする。 より広い視点で医療を捉えなおすことが出来るように2020年4月より立教大学ビジネスデザイン研究科に入学、2022年3月に卒業しMBA取得。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03