MRSA感染症
監修医師五十嵐 健史内科
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2022/02/15
MRSA感染症とは
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌で起こる感染症で、入院中で抵抗力のない患者さんに見られます。抗菌薬の長期使用で耐性が生まれたほかの患者さんや、病院外からの持ち込みが経路として考えられます。日本では鼻の中に住み着いている(保菌している)ことが珍しくありません。
MRSEとはなんですか?
MRSEはメチシリン耐性表皮ブドウ球菌です。病原性は低いので、免疫力が下がった時に感染しやすいです。
MRSEは、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌と呼ばれ、MRSAを含む黄色ブドウ球菌同様、ブドウ球菌の一種です。
表皮ブドウ球菌は、 その名前の通り、人の表皮に常在する細菌ですが、黄色ブドウ球菌のように多彩な毒素を持たないことから、病原性は低いです。
しかしながら、さまざまな粘着性の物質を産生し、人工関節などの体内の人工物と関連した感染症を起こすことがあります。
この表皮ブドウ球菌のなかでも、 MRSAと同じようにメチシリンを含む多くの抗菌薬に耐性をもつものが「MRSE」と呼ばれ、特に免疫力の下がった患者さんの治療を難しくしています。
メチシリンとはなんですか?
抗菌薬の一種です。この薬に耐性を持つ黄色ブドウ球菌をMRSAと言います。
メチシリンはペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)になります。もともとはペニシリンに対する耐性を持った黄色ブドウ球菌に対する抗菌剤として開発されましたが、このメチシリンにも耐性を有するようになった黄色ブドウ球菌をMRSAと呼んでいます。
具体的には、メチシリンも結合可能なペニシリン結合タンパク(PBP2')を産生する能力を獲得した黄色ブドウ球菌は、メチシリンによる抗菌作用を無効化でき、MRSAと呼ばれています。
「MRSA感染症」とはどのような病気ですか?
さまざまな抗菌薬に対して耐性を持つ菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が原因となって起こる感染症です。
MRSAは、日本語では「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」という菌の名前で呼ばれています。
一般的な黄色ブドウ球菌は健康な人の常在菌であり、皮膚や鼻、のど、耳、腸管などに存在するありふれた細菌です。健康な人でも約40%の方は保菌しており、傷口に感染すると化膿したり、体内に入ると全身性の感染症を起こしたりします。
一方で、黄色ブドウ球菌の中でもMRSAは、メチシリンなどのペニシリン系をはじめ、多くの抗菌薬(抗生物質)に対し耐性を示します。つまり、MRSA感染症は、抗菌薬が効きにくい黄色ブドウ球菌が引き起こす感染症になります。
MRSA感染症の症状
MRSA感染症には初期症状はありますか?
発熱、咳、痰、倦怠感などの症状が現れます。傷の周囲が赤くなったり、腫れたり、膿が出ることもあります。
MRSA感染症の症状は、皮膚局所の炎症から始まります。これは、MRSAを含む黄色ブドウ球菌は皮膚表面や毛穴に常在しているため、初期には皮膚の感染が最も起こりやすいからです。
感染を起こすと、
- 発赤や腫れ
- 水疱(水ぶくれ)
- 膿瘍(局所に膿がたまった状態)
が見られます。
また、他にもMRSAによる肺炎や敗血症(菌が増殖し、臓器に炎症を起こしている状態)の初期では、
などといった症状が見られます。
MRSA感染症ではどのような症状がありますか?
発熱、咳などの肺炎症状、傷部分の炎症症状が見られます。重症の場合、意識障害、多臓器不全などの症状が現れる恐れがあります。
MRSAを含む黄色ブドウ球菌感染による症状は、
- 皮膚の傷などに伴う化膿
- 膿痂疹(のうかしん:いわゆる「とびひ」のこと)
- 毛包炎
- おでき
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
- けがの傷、やけど、手術後の傷からの感染
- 肺炎
などです。
更には、細菌が血流に入り(菌血症)、体内のあらゆる部位に広がることで、
- 発熱や低体温
- 頻脈
- 低血圧を伴う敗血症(菌が増殖し、臓器に炎症を起こしている状態)
などが見られます。重症の場合には、意識障害や多臓器不全などの強い全身症状を伴うこともあります。
MRSA感染症の原因
MRSA感染症の原因は何がありますか?
MRSAという菌に感染することで起こります。医療関連感染の代表的な原因菌のひとつです。
MRSAは、代表的な耐性菌のひとつです。
感染経路は接触感染や飛沫感染が一般的であり、感染した場所によって、主に院内感染型と市中感染型に分けられます。
以前は院内感染型が多く見られましたが、最近では減少傾向にあり、黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合は50%程度と報告されています。
院内感染型と市中感染型の主な特徴は、以下の通りです。
院内感染型MRSA
高齢者が多く、多剤耐性のため治療が難しい
市中感染型MRSA
若年者や小児に多く、抗菌薬に比較的反応しやすく治療しやすい
MRSA感染症の検査・診断
MRSA感染症のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
MRSA感染リスクには、以下が挙げられます。
- MRSAを保菌している
- MRSA保菌者と接触したことがある
- 抗菌薬を使用している
- 入院歴がある
- 集中治療室への入室歴がある
- MRSA感染症にかかったことがある
- 長期療養施設に入所している
- 繰り返しの通院歴がある
- 高齢者
- 糖尿病
- 長く治っていない傷口の存在
- ステロイド・免疫抑制剤の使用
- 中心静脈カテーテルの挿入
- 慢性腎不全
- 血液透析
- 人工関節などの異物がある
など
なお、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけで、セルフチェックもできますのでご活用ください。
MRSA感染症の治療・対処法
MRSA感染症への対処法は?
街中で新規に発生することは、まずありません。入院中の場合には隔離を行います。病院ごとに対応法が決まっていますので、手洗いやゴミ捨ての方法などの指示に従います。本当にMRSAによる感染症なのかどうかの見極めが必要であり、状況により対処方法は異なります。
MRSAが完治するまでにはどのくらいの期間の治療が必要ですか?
2~4週間の抗MRSA薬治療が必要です。症状によっては、さらに長期の治療が必要な場合があります。
治療期間は、一般的に血液の細菌培養検査の陰性化から4~6週間かかるとされています。
MRSAが血液に入った状態の菌血症の場合、48~72時間ごと血液の細菌培養検査を繰り返しながら、用いる抗MRSA薬の効果を判定を行います。第一選択薬であるバンコマイシンにも耐性をもつMRSAも存在することから、完治には抗MRSA薬を適切に選択することが重要です。
また、体内に人工物が埋め込まれていない、感染源から離れた部位へのさらなる感染が起こっていないなど、一定の条件を満たしていれば2週間程度の早期に治癒する可能性があります。
MRSA感染症の場合、主にどのような治療をしますか?
バンコマイシンなどの抗MRSA薬による薬物治療が行われます。使用される薬剤は症状によって異なります。
抗MRSA薬と呼ばれる抗菌薬を用いた薬物療法を行います。
わが国における抗MRSA薬には以下のようなものがあります。
- バンコマイシン
- テイコプラニン
- アルベカシン
- リネゾリド
- ダプトマイシン
- テジゾリドリン
これらの抗MRSA薬は、いずれも幅広い症状に対し、使われます。
しかし、テイコプラニンやアルベカシンは髄液への移行が乏しく、ダプトマイシンは肺で分解されるため呼吸器感染症に使えないなど、一部使用に制限があるほか、薬ごとに特徴的な副作用があり、注意が必要です。
受診の目安・何科を受診するべきか
MRSA感染症が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
MRSA感染症が疑われる場合は、皮膚科や整形外科、感染症科を受診しましょう。
皮膚などの局所に留まる症状であれば皮膚科や整形外科、発熱など全身症状があれば内科や感染症科を受診しましょう。
MRSAを含む黄色ブドウ球菌感染症かどうかは、血液や感染部位の体液のサンプルを検査室に送り、そこで細菌を増殖させて種類を特定し(培養検査)、メチシリン耐性があるかどうか(薬剤耐性菌判定)を行う必要があります。
つまり、その感染症がMRSAかどうかは医療機関における専門的な検査が必要です。
MRSA感染症の専門医がいる近くの病院はありますか?
MRSA感染症の専門医がいる病院を見るMRSA感染症の薬
MRSA感染症は主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
バンコマイシンなどの抗MRSA薬で治療します。腎・肝障害、めまい、耳鳴りといった副作用が見られることがあります。
MRSA感染症の治療には、抗MRSA薬という種類の抗菌薬を使用します。日本で認可されている抗MRSA薬は、以下の4系統6種類あります。
グリコペプチド系薬
- バンコマイシン
- テイコプラニン
アミノ配糖体系薬
- アルベカシン
オキサゾリジノン系薬
- リネゾリド
- テジゾリドリン
環状リポペプチド系薬
- ダプトマイシン
MRSAは多くの種類の抗菌薬が効かないため、感染症の重症度によっては治療に何週間も要することがあります。
いずれの薬も、腎障害、肝障害のほか、薬ごとに聴覚障害を含めて多くの副作用が報告されており、使用には注意が必要です。
MRSA感染症の経過・予後
MRSA感染症は自然治癒しますか?
自然治癒する可能性はありますが、免疫力が下がっている感染者の多くは抗MRSA薬による治療が必要です。
MRSAを含む黄色ブドウ球菌は、人や動物の皮膚、鼻腔内、消化管内などに常在する細菌です。毛包炎などは軽度な黄色ブドウ球菌による皮膚感染症であり、健康な人であれば自然治癒もあります。
しかしながら、高齢者や手術の後などで、免疫力が弱まっている人に感染した場合、感染症は重症化しやすく、症状が強くでます。
さらに、MRSAの場合は抗菌薬に強い耐性を持っているため、抗MRSA薬による適切な治療が必要となります。
対処法・セルフケア
MRSA感染症の場合、日常生活で気を付けることはありますか?
感染の拡大を防ぐため、手洗い、手指消毒に加え、咳・痰などがある場合はマスクの着用も推奨されます。
MRSA感染症の対策においてもっとも重要な点は、MRSAの伝播を防ぐことです。したがって、MRSA感染者に対して、他の方との接触感染を防ぐ対策が必要です。
特に手を介した接触感染が多いほか、飛沫感染もあることから、具体的には、
- 手洗い・手指消毒などの手指衛生の徹底の他
- マスク・手袋・ガウン・ゴーグルなどの個人防護具の使用による接触回避
- ドアノブやベッド棚など接触することが多い箇所の清掃を含む環境管理
などを行います。
MRSA感染症に関連するその他の質問
MRSAの保菌者と感染者の違いはなんですか?
保菌者は、感染しているものの症状が現れていない人のことを指します。感染者は、感染によって症状が現れている人のことを指します。
保菌者とは、何らかの病原菌が生体に常に存在しているものの、発熱や下痢、嘔吐など細菌の感染に伴う症状を示さない方のことを指します。
したがって、MRSAに限らず病原菌に関し、保菌者は無症状であり、感染者は症状がある方、ということになります。
感染者にならず保菌状態のまま無症状でいられるかは、病原菌に対し自身が持っている抵抗力・免疫力が上回っているかによります。
症状がなくても細菌を持っている保菌者の方は、まわりの人に細菌をうつす感染源となる可能性があり注意が必要です。
MRSAの感染経路はなんですか?人から人にうつりますか?
感染者との接触や、飛沫の吸入で感染します。
MRSAの感染経路は、一般的な黄色ブドウ球菌と同様、接触感染や飛沫感染であり、人から人にうつります。
また、高齢者や手術の後などで免疫力や体力が低下している方にとって、自身が保有するMRSAによる感染が主要なリスクとなります。
また、
- 手術
- 医療処置
- 医療従事者の手指
- 医療用具
- 血管内留置カテーテル
などによって、院内感染する場合もあります。
MRSA感染症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「MRSA感染症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 体温は37.5℃以上ですか?
- 体のだるさはありますか?
- せきが出ていますか?
MRSA感染症に関連する病気・症状
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この記事の監修医師
五十嵐 健史
内科・麻酔科
東京大学医学部卒。東京都健康長寿医療センターで初期研修を行い、2017年10月よりUbie株式会社に就職。Ubie株式会社では医学データの登録や修正のほか、製薬チームのサポートも行う。現在は内科医として勤務中。
- 更新日
- 2026/05/28
- 公開日
- 2022/02/15