去勢抵抗性前立腺がんのステージIVまたは再発がんでは、どのような治療を行いますか?
ホルモン療法を継続しつつ、状態に合わせて、新規抗アンドロゲン薬や化学療法などを用いて治療します。
前立腺がんステージⅣ相当に、がんが広がる去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)と言います。
mCRPCは全身性にがんが広がっている可能性があるため、全身性に効果がある薬物療法で主に治療します。
ただし、CRPCは、現在の医療では完治することが極めて困難ながんです。
そのため、mCRPCの治療は個別化医療の考え方に基づき、患者さんの病態、いままで行った治療方法、遺伝子検査結果などを総合的に判断して最適な治療法を選択していきますが、治療の目標は完治ではなく、できる限り長期にわたってがんの進行を抑制し、生活の質を維持することです。
現在mCRPCに対して使用できる薬剤は、通常のホルモン療法(ADT)以外に、以下のようなものがあります。
基本的な薬剤
化学療法
- ドセタキセル
- カバジタキセル(ドセタキセルの後に使用して効果がある)
アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤(ARSI)
- アビラテロン
- エンザルタミド
- ダロルタミド
特殊な場合に使用できる薬剤
PARP阻害薬
- オラパリブ
- タラゾパリブ
骨転移治療薬
- ラジウム-223(放射線性医薬品)
免疫療法
- ぺムブロリズマブ
特殊な化学療法
- カルボプラチン/ シスプラチン+エトポシド(VP-16)/ イリノテカン
治療選択の流れ
mCRPCに対してまず使用する薬剤(第一選択薬)は、基本的な薬剤の中から、これまでの治療で使用していないものを以下の基準で選択します。基本的な薬剤はすべて生存期間の延長効果が確認されています。
- 副作用の程度
- 薬剤の投与基準への適合性
- 全身状態
第二選択薬以降の薬剤の選択
基本的な薬剤で使用していないものを選択しますが、下記のような場合は、特殊な場合に使用できる薬剤を使用することも検討できます。
- 前立腺がんの成分が神経内分泌腫瘍というタイプに変化した場合、特殊な化学療法への変更が有効とされています。
- 臓器転移なく、骨転移のみの場合は骨折を起こしにくくする骨修飾薬(BMA)を併用して、ラジウム-223を使用することもできます。
- ARSI使用後にがんが進行した場合、他剤への変更と同時にがんの遺伝子検査(コンパニオン検査)を実施できます。
- コンパニオン検査の結果に基づいて、BRCA遺伝子変異が陽性の場合は、PARP阻害薬が基本薬剤とともに有効です。
- 同様にMSI-high等の特定条件がコンパニオン検査で明らかになった場合は、免疫療法(ペムブロリズマブ)や治験薬が有効な可能性があります。
前立腺がんが再発して、CRPCになった場合は、転移の有無によって治療法を検討します。転移がある場合は上記治療法を実施し、転移がない場合は、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)として治療を行います。
詳しくは「去勢抵抗性前立腺がんのステージIIIでは、どのような治療を行いますか?」をご参照ください。
東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科
秋元 隆宏 監修
(参考文献)
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