去勢抵抗性前立腺がんのステージIIIでは、どのような治療を行いますか?
ホルモン療法を継続しつつ、進行リスクに合わせて新規抗アンドロゲン薬を使用します。
前立腺がんステージⅢ相当に広がる去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に分類され、基本的にホルモン療法を継続しつつ経過観察を行います。
PSAが2倍になるのにかかる時間(PSAダブリングタイム:PSADT)に合わせて、新規抗アンドロゲン薬であるアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤(ARSI)を使用します。
具体的には、以下のような治療を行います。
PSADTが10ヵ月以下で、かつPSAが2以上のとき
転移など進行するリスクが高いため、通常のホルモン療法(ADT)に加えて、下記のARSIの使用を検討します。
- エンザルタミド
- アパルタミド
- ダロルタミド
3つのお薬はどれも転移までの期間や生存期間を延長する効果を持っていますが、副作用や飲み方に若干の違いがあり、患者さんの状態や副作用の個人差に合わせて使い分けられることが多いです。
基本的にどれも男性ホルモンを抑えるため、ADTと同様に、ほてり(ホットフラッシュ)のような副作用があります。
また、ダロルタミドの副作用としては、疲労、肝機能障害、高血圧などがあり、ダロルタミドに比べてアパルタミドでは、皮疹、転倒、骨折の副作用が起きやすく、エンザルタミドでは、疲労、転倒、めまい、精神障害が起きやすいという特徴があります。
PSADTが10ヵ月より長い場合
通常のホルモン療法を引き続き継続したうえで、昔からあるホルモン剤(ビカルタミドやフルタミド)を追加、または中止して経過観察を行います。
nmCRPCは根治療法後にPSAが上昇して再発し、ホルモン療法などされていたが、さらにPSAが上昇してCRPCになった場合と、根治療法をせずに、ホルモン療法のみ行われていたもののPSAが上昇してCRPCになった場合があります。
いずれも、全身に微小な転移がある可能性が既存の検査(骨シンチや全身のCT、MRI検査)だけでは否定できないので、後者の場合でも手術や放射線などの局所治療の効果はあまり保証されず、一概には推奨されていません。
がんのステージ分類はがんの診断時に決定するため、通常は、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)のステージⅢとは言いません。
CRPCは転移の有無や進行リスク、CRPCになるまでの治療によって治療法が異なります。
前立腺がんステージⅢは、がんが前立腺の被膜を超えている、または被膜を超えて隣接する構造物にも浸潤している状態になります。
東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科
秋元 隆宏 監修
(参考文献)
日本泌尿器科学会. 前立腺癌診療ガイドライン 2023年版. メディカルレビュー社. 2023
日本泌尿器科学会, 日本病理学会, 日本医学放射線学会.泌尿器科・病理・放射線科 前立腺癌取扱い規約 第5版. メディカルレビュー社,2022.
Lin Wang et al. Comparison of Treatments for Nonmetastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: Matching-Adjusted Indirect Comparison and Network Meta-Analysis. J Natl Cancer Inst. 2022, 114, 191-202.
Silke Gillessen et al. Management of Patients with Advanced Prostate Cancer: Report of the Advanced Prostate Cancer Consensus Conference 2019. Eur Urol. 2020, 77, 508-547.
こちらは送信専用のフォームです。氏名やご自身の病気の詳細などの個人情報は入れないでください。
この記事をシェアする
治療が必要な患者様へのお願い
去勢抵抗性前立腺がん
の方は説明を必ずお読みください
こちらのQRコードを
スマーフォンのカメラで読み取ってください
QRコードを読み取るだけ 非接触で安心
一問一答なので 読むのが簡単
どんな治療をするべきか 納得して取り組める
ユビー病気のQ&Aとは?
現役の医師が、患者さんの気になることや治療方法について解説しています。ご自身だけでは対処することがむずかしい具体的な対応方法や知識などを知ることができます。
病気・症状から探す医師・医療機関の方はコチラ