慢性膵炎
監修医師吉岡 藍子消化器内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
慢性膵炎とは
膵臓の働きである、消化酵素を十二指腸に出して食べ物を消化する働きと、インスリンを出して血糖をコントロールする働きが、長期的に膵臓が壊れることによって衰える病気です。多くはアルコールが原因です。
「慢性膵炎」とはどのような病気ですか?
膵臓に長期間炎症が起こり、膵臓が萎縮して硬くなってしまう病気です。
慢性膵炎とは、膵臓に長い期間炎症が起こった結果、膵臓の機能が低下してしまう病気です。膵臓は消化を担う臓器のひとつで、脂肪の消化を助ける消化酵素を分泌するほか、血糖を調整するホルモンを分泌する機能を持っています。
この病気はアルコールの摂取が原因となることが多いですが、遺伝など他の要因による場合もあります。炎症が続くことで膵臓は徐々にかさぶたのように硬くなり、正常に消化酵素やインスリン(血糖値を調整するホルモン)を分泌できなくなります。これにより、食事の消化が難しくなったり、糖尿病を発症するリスクが高まります。
また、膵臓の中に石ができて腹痛の原因になることもあります。症状が急激に悪化することもあり、その場合には入院での治療が必要になります。
慢性膵炎の症状
慢性膵炎ではどのような症状がありますか?
腹痛や食欲不振といった症状が起こります。また、糖尿病の原因になることもあります。
慢性膵炎によって起こる症状はさまざまですが、特に多いのが腹痛や背部痛です。そのほか、
といった症状が現れることもあります。慢性膵炎によって膵臓の中に石ができると、その石が痛みの原因になります。
また、膵臓は脂肪を分解するための酵素を作っています。しかし、慢性膵炎によってこの酵素がうまく作られなくなると、脂肪の浮くような便が出ることがあります。
さらに、膵臓は血糖を調整するインスリンというホルモンも産生しています。慢性膵炎で膵臓の機能が低下すると、糖尿病になるリスクが高まります。血糖が上がる、のどの渇きを感じるなどの症状が見られることがあります。
慢性膵炎の原因
慢性膵炎の原因は何がありますか?
喫煙や飲酒が原因であることが多いです。また、遺伝性として起こることもあります。
慢性膵炎の主な原因には、アルコール摂取と喫煙があります。
特にアルコールは、日本の慢性膵炎の患者さんにおいて、男性の約8割、女性の約4割で原因とされています。
喫煙もアルコールと同様に膵炎を悪化させることが分かっており、飲めば飲むだけ、吸えば吸うだけ、慢性膵炎は悪くなります。そのため、治療はまず断酒、禁煙から始まります。慢性膵炎と分かった場合には断酒といって、以後お酒は一切止めてもらいます。断酒をすることで腹痛、死亡率ともに改善することが分かっています。
アルコールを全く飲まなくても慢性膵炎になってしまう方もおり、遺伝性の慢性膵炎も存在します。
慢性膵炎の治療・対処法
慢性膵炎への対処法は?
禁酒することが必要です。足りない消化酵素を薬で補充したり、糖尿病の薬で血糖のコントロールが必要になることがあるので医療機関で定期的な受診が必要です。
慢性膵炎の場合、主にどのような治療をしますか?
鎮痛薬や正常な膵臓から分泌される酵素を使用して、痛みを和らげます。
慢性膵炎の治療でまず大切なのは、断酒・禁煙です。お酒は飲めば飲むほど、タバコは吸えば吸うほど慢性膵炎を悪化させるため、お酒、タバコは完全に止めてもらいます。
治療については患者さんによって多岐にわたり、状態に応じた治療を行います。
無症状の方
全く症状が無い方は断酒・禁煙のみで、内服の薬や処置は必要ありません。
腹痛がある方
慢性膵炎の主な症状は腹痛です。痛みに対しては鎮痛薬を処方して症状を和らげます。
脂肪の吸収が難しい方
膵臓の機能低下によって脂肪の吸収が難しくなっている方は、脂肪の吸収を助ける消化酵素を内服してもらいます。
糖尿病の方
膵臓の機能低下によって血糖を下げるホルモンが出なくなり、糖尿病になってしまった方には、内服薬やインスリンの注射で治療を行います。
膵管・胆管が狭くなっている方
慢性膵炎の患者さんの中には膵臓の管や近くの胆管が狭くなってしまう方がいます。そのような場合には内視鏡を使った処置を行い、ステントと呼ばれる管を膵管、胆管に留置することもあります。これは、狭くなった管を広げて膵液や胆汁が正常に流れるようにするための処置です。
また、時に慢性膵炎が急激に悪化し、強い腹痛で入院される方もいます。その場合は、絶食・点滴で治療が必要になる場合もあります。
受診の目安・何科を受診するべきか
慢性膵炎が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
上腹部の痛みが続く場合は慢性膵炎の可能性があるので、消化器内科を受診しましょう。
慢性膵炎の疑いがある場合、最初に受診すべきは消化器科です。
特に、過去にアルコールやタバコを多く摂取していた人や現在も摂取している人が、上腹部に継続的な痛みを感じる場合には、慢性膵炎の可能性を考えるべきです。
また、遺伝性の慢性膵炎もあることから、ご家族に膵炎の既往がある方も同様に慢性膵炎のリスクが高まります。
慢性膵炎を正確に診断するには、血液検査だけでは不十分であり、
- 腹部造影CT
- MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)
- 超音波内視鏡検査
といった専門的な検査が必要になることが多いです。
慢性膵炎の専門医がいる近くの病院はありますか?
慢性膵炎の専門医がいる病院を見る慢性膵炎の経過・予後
慢性膵炎は、寿命にどのように影響しますか?
膵がんの原因にもなり得ることなどから、平均寿命が男性で約10歳、女性で約16歳、短いことが報告されています。
慢性膵炎は、患者さんの寿命に悪い影響を与える可能性があります。
慢性膵炎の患者さんは死亡時の平均年齢が、我が国の死亡時平均年齢と比べて男性で10歳、女性で16歳ほど短くなることが研究で示されています。
死亡の原因の約半数は、がんによるものです。膵臓がんだけでなく、肺がんや肝臓がん、食道がんも含まれます。これらのがんは慢性膵炎の患者さんにおいて、より高いリスクを持っています。
このような病気による若年での死亡を防ぐには、早めに慢性膵炎と診断、治療を行うことが大切です。
アルコール摂取と喫煙は膵臓に悪影響を及ぼし、慢性膵炎のリスクを高めるため、完全に避ける必要があります。
さらに、定期的な画像検査が重要で、特に、造影CTを用いた全身の検査が大切です。
慢性膵炎に関連するその他の質問
膵臓に良い食べ物は何ですか?
過剰な脂肪の摂取は避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
慢性膵炎の患者さんからよく聞かれる質問です。残念ながら、慢性膵炎によって起こった膵臓のダメージを修復する特定の食べ物は存在しません。しかし、膵臓に負担をかけない食生活を心がけることは、健康を維持するうえで非常に重要です。
まず、アルコールとタバコは膵炎を悪化させるため、完全に止める必要があります。
食事に関しては、脂肪の量に注意する必要があります。過剰な脂肪の摂取は膵炎を悪化させる危険がありますが、極端な脂肪制限を長く続けていると、必須脂肪酸やビタミンといった栄養素が欠乏するリスクがあります。特に、腹痛の症状が見られる場合はある程度の脂肪制限はした方が良いとされていますが、腹痛が無い場合には脂質を制限しない食事が望ましいとされています。
バランスの良い食事を心がけることが大切です。
膵炎になったときに食べてはいけないものはありますか?
アルコールは完全に止めましょう。また、油の多い食べ物には気をつけましょう。
まず、アルコールとタバコは慢性膵炎を悪化させるため、完全に避けるべきです。
また、慢性膵炎の患者さんでは脂肪の過剰な摂取には注意が必要です。脂肪の過剰な摂取は腹痛、背部痛につながり、膵炎をさらに悪化させる可能性があります。
膵炎の患者さんに推奨される脂肪摂取量は、1日30~35g、1回10g以下とされています。しかし、過度の脂肪制限を行うと必要なビタミンや栄養素が不足し、体にとっては不利益になってしまうこともあります。
ビタミンの中には脂肪に溶けて体に吸収されるものもあるため、過度な脂肪制限によってビタミン不足となってしまう危険性もあります。そのため、特に腹痛のあまりない患者さんでは、それほど厳格な脂肪制限は必ずしも必要ないとされています。
慢性膵炎について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「慢性膵炎」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- お腹の痛みがありますか?
- 手足などに力の入らない部分はありますか?
- これまでに【糖尿病・糖尿病境界型(予備群)】と診断されたことはありますか?
- お腹にガスがたまったり、張った感じがしていますか?
- 最近やせてきていますか?
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この記事の監修医師
吉岡 藍子
消化器内科・内科
消化器内科医の吉岡藍子と申します。 これまで大学病院や市中病院、健診センターでの内視鏡業務などを通して、消化器領域を幅広く経験してまいりました。 診療の現場では、専門的な用語や複雑な病状の説明に、患者様が戸惑いや不安を感じる場面に何度も出会いました。医療機関で提供される膨大な情報を前に、混乱されてしまう方も少なくありません。そこで、ご自身の病気や体、そして健康について、一人でも多くの方が正しく理解できる環境を作りたいという想いから、ユビーの活動に参加させていただいております。皆様が正しい医学知識に普段から触れ、安心してご自身の健康と向き合えるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。 【経歴】 新潟大学医学部卒。 新潟県内外の市中病院、大学病院で勤務。 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野にて博士取得。 2022年からユビーに入社し、横浜市で健診内視鏡診療を兼務。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03